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第十一話「復讐の始まりですの、おほほほほ」

クラウディア連邦、首都・ヴイエムブルク。

その街中にある建物、スフィアタワー。

そこがオン・ザ・クラウド・テクノロジーズの本社ビルである。

当然自社ビルなのだが、先進的な魔道具で一財を築いた会社にしては控えめに12階建で、官公庁の庁舎に埋もれていた。

これはハルカの性格が現れていた。

当然、「出る杭は打たれる」とか「贅沢と思われたくない」とか、そういう他者との調和のために質素倹約を装う意図もあったが、一番の理由は他にあった。


「ベニー社長、この予算ならもっと高いビルを設計できますよ?」

そう進言する建築士に対し、こう言った。

「高い建物を建てて、有事の際に確実に避難できまして?

たとえば火災で途中の階が炎に包まれたら、孤立した人たちは0%の皆無の望みをかけて、強硬手段に出て、地上に無惨な姿で避難しますわ。」

「……。」

まるで世界一高い建物が災難に襲われた様を見てきたかのような言い回しに建築士は絶句した。

「…その具体的すぎる状況、なぜ思いつくのですか…?」

「おほほほほ、秘密ですわ!」

「あと、『高いは十二階』という言葉がありますのよ」

「……はぁ…???」


その11階の社長室でハルカ嬢は次の行動の準備をしていた。

因みに社長室が11階なのは、12階を展望社員食堂にしたためである。


「復讐の始まりですわね、おほほほほ」

プロジェクターで壁面に投影された表データには『FarOSライセンス違反一覧表』というキャプションがあった。

その中で、絞り込みが行われていた。

今壁面に投影されている者たちに、アクションを仕掛けようとしている。その絞り込み条件が「ハルカの私怨」であった。


かつて、アプリシア王国内でのハルカの評価は真っ二つに割れていた。

「便利なものを作って国を豊かにするすごい令嬢」というイメージの反面、「気味の悪い魔道具を作る変人」…いやこれは事実だったが…。

「王太子に反抗的な悪女」という噂が流れていた。

これを流していたのが一部の悪徳貴族である。

彼らはいい加減な審査のヨシチェックを担ぎ上げ、国王に即位させた暁には不正を堂々とできると踏んでいたのである。

しかしその傍にいるハルカが優秀すぎて邪魔だ。

そこで風説を流布し、ヨシチェックにも直接色々と吹き込んだ。


ハルカが趣味で魔道具を次々と導入して生産性が飛躍的に向上して国が豊かになった。

しかし、その恩恵が民に回らない地域があった。

悪徳貴族の所領だった。

「所得が上がったなら税率も上げてもいいよな?」

という強欲かつ短絡的な発想で私腹を肥やし始めたのである。

王権が強ければ、このような政を行う貴族は粛清できる。

しかしそんな力は国王になかった。

詰まるところ、『封建制の限界』であった。

「初代国王が『タヌキ親父』だったら、もっとガツンと言える王権になったかもしれませんわ…。」

そんな「タラレバ」を言っても始まらない。

しばらくは様子を見る以外になかった。


しかし、事件は起きた。

一部の悪徳貴族が「自領の税を9割にする」という申請を出した。

「ヨシ!」

王太子が流し読みして秒で認可した。

数日後にそれを知ったハルカがブチ切れた。

アカリが国王陛下と申請を出した悪徳貴族の間で根回しして、結果的に税率は7割になった。

ギリギリ近代化の恩恵を受けられるであろう数字と判断された。

件の婚約破棄はその三日後だったのである。


壁面に投影されたライセンス違反の表の、所在地はその悪徳貴族の領主邸や城ばかりだった。

「おほほほほ、はじめますわよ!」

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