第七十七話「アジャイリアの本気ですわ、おほほほほ」
ハルカがアジャイリアの空港に降り立つと、すでにターミナルは出来上がっているようだった。
しかし、「でかい寺」のようにしか見えない。
「木造建築ですの…?」
格納庫らしきものもいくつかあった。
「…こっちは土蔵ですの……?」
そして、滑走路の木製のフローリングは、よく見ると5ミリくらいの穴が等間隔で空いている。
「水捌けは良さそうですわね…」
その表面の編んだ竹は、飛行魔道具の重量を分散してフローリングに伝えたり、フローリングが摩耗するのを防ぎつつ、僅かに車輪に食い込ませることで摩擦を上げる効果もありそうだ。
「うーん…大型飛行魔道具が頻繁に離発着するには厳しいけど、仮設の滑走路としてはアリですわね。
荷重の分散と粘着が、公式すら教えていないのに考え抜かれていますわ!
きっとひたすらトライアンドエラーを繰り返したのですわね…」
ハルカは唸った。
マリアが密着して歩きにくいが、マリアも成長していた。
それぞれがどういう役割なのかを理解して説明できるようになっていた。
………それがハルカに認めてもらいたいからという動機でなければ完璧だったのだが。
「ハルカさん、このフローリング滑走路、水に強くて硬い木材なんですよ。
表面の竹は傷んだらその部分だけ張り替えられるんですよ」
だいたい想像通りだ。
「ハルカさん、探知犬はちゃんと育ってますよ」
これで危険な薬品の密輸送の水際対策ができる。
「ハルカさん、これが手荷物検査の仕組みですよ」
X線とか使わずに、中身を全部見せつついかに早く確実に確認するかを追求したアナログな手荷物検査の仕掛けだった。
「ハルカさん、これは立ち食い蕎麦です。
保安検査のあと飛行魔道具の出発までの僅かな時間で食事を取れるんですよ。
一緒に食べて行きませんか?」
…開発発表会の後の夕食会で立って食事するの拒んでいなかったっけ…。
「もうすぐ魔道馬車(人力)が来ますよ、それに乗って迎賓館まで行きましょう」
「…迎賓館?
わたくしは国賓ではありませんのよ?」
「いいえ、この私が国賓だと言ったら誰も意を唱えませんでしたので国賓ですぅ!
黙ってもてなされてくださいっ!」
「なんで拗ねるんですの……?
というか待ってくださいまし、『魔道馬車(人力)』って仰いましたの?」
やってきた。
六人相乗り、人間が押して走るタイプ…いわゆる人車鉄道だった。




