第七十五話「ロストテクノロジーですの、おほほほほ」
アプリシア王都の大学では、教員も学生もレベルが上がっていた。
教員は、ハルカが色々設計図を描いては幼少期から魔道具を作らされていた職人たちで、大学が設立された頃には「魔力発電」の仕組みは理解していた。
「あの『光合成魔道具』を除けは、基本的にこの『魔力のみなもと』を回転させることが必要で、そのための方法はなんでもよい」
助教は黒板に図を描いて説明する。
今は「発電概論Ⅰ」の講義である。
「アジャイリアでは、交易開始直後に風車に『魔力のみなもと』を取り付けた『風の魔力発電』が設置され、風が絶え間なく海辺などで、こんにちも発電が続けられており…」
その講義を聞いた学生たちの発案で一大プロジェクトが始まった。
顧問になってほしいと頼まれた助教は悩んだ。
「これは…やるべきか、やらざるべきか………」
悩んだ果て、助教は鉛筆を転がした。
「『やる』が出た…」
学生たちが湧き立った。
そのプロジェクトが、今日完遂される。
成果物である大きな『風の魔力発電』の『魔力のみなもと』が細かいパーツに分かれて運搬される。
風車が組み上がっていく。
その風車がどこに設置されるのかと言えば…………。
王宮だった。
アプリシアは基本的に山がない平坦な国土である。
ゆえにクラウディアのようなダムによる『水の魔力発電』はできない。
その中でも王都はものすごく平らだったが、王宮だけはやや起伏があり少し高い土地に建っている。
そして王宮の四隅にある塔が、王都で最も高い位置にあり、風を有利に使える。
ここに風車を取り付ければ効率が良いのではという学生のアイディアだった。
助教は王宮に打診しにいく時に、「もうどうにでもなれ!」と自暴自棄だったが、門番の兵士に相談したら取り次いでもらえて…………。
待たされていた応接室に国王陛下が直々に面会に来た。
助教は腰を抜かした。
国王陛下は一緒についてきた学生のリーダーの顔を見て、
「流石ハルカ嬢の大学の学生だな、実に合理的でふざけている」
と褒めているのか貶しているのかわからないコメントをしつつ、塔への風車の取り付けを許可した。
それどころか「王宮で工費を負担する」とさえ言われて、助教の抜けてる腰がさらに抜けた。
王宮からの帰り道、助教は学生に介抱されて帰宅したという。
…かくして、王宮はアプリシア建国以来最高に不格好になった。
「ハルカ嬢、自分がいなくてもモノづくりが進むのが少し寂しかったりするかい?」
素朴なヨシチェックの問いにハルカが答える。
「わたくしが死んだ後、全部がロストテクノロジーになってしまう方が、よほど寂しいですわ、おほほほほ」




