第七十三話「長距離飛行ですの、おほほほほ」
数ヶ月がすぎ、『はこぶぞ』試作機のテスト飛行が順調に進む。
ヨシチェックが教官を務めた操縦士が順調にデータを集めている。
セグメンティアから連れて来た墜落パイロットにも操縦させた。
空港もだいたい完成、全てが順調に進んでいた。
クラウディア側も空港が完成して、相互テスト飛行がおつかい定期便になっていた。
ヤムからメールが届いた。
「アジャイリアでも空港が完成した」
「アジャイリアにアスファルト輸出してましたっけ?」
ハルカはオン・ザ・クラウド・オイルターミナルの輸送履歴を見て疑問に思ってた。
「やはり見当たりませんわね……。
もしかして不整地ですの…?」
しばらくして、試作機が長距離飛行のテストとしてアジャイリアに向かうこととなり、別件で「かなたの大陸」に用事があったので同乗することとなった。
因みに、この時既に仮名ではなく、お互いの大陸に正式名称が付けられていた。
アプリシアとクラウディア、おまけでセグメンティアがある「おほほほほ大陸」が、『オンプレー大陸』と呼ばれるようになった。
対してアジャイリアとウォーターフォーリア、そしてナールハヤがある「かなたの大陸」が『デベロッパ大陸』と呼ばれている。
「テスト飛行にハルカ嬢が乗って、試作機に万が一のことがあったらまずいのでは?」
ヨシチェックが心配する。
「おほほほほ、むしろ、管制の整備が不完全の中、不測の事態に備えるならわたくしが隣にいた方が操縦士も安心ですわよね?」
(あ、これ、誰も止められないモードだ…)
「大丈夫ですわ。
『新鮮な空気の入れ物』も『浮き胴衣』もバッチリでしてよ?」
「ハルカ嬢、もう回りくどく言うのやめて、『酸素ボンベ』と『ライフジャケット』で良いのではなくて?」
アカリはヨシチェックと別ベクトルで会話に疲れていた。
そうしてハルカはキャビンに乗り込んでいった。
「シートベルトは腰の低い位置でしっかりと締めますわ、おほほほほ」
「外す時は金具のレバーを持ち上げますわ、おほほほほ」
「新鮮な空気が必要になった時はマスクが降りて来ますの。
鼻と口を覆って紐を締めるのですわ。
ご自身の着用が済んだら周りの方の着用を手伝っていただけますかしら、おほほほほ」
「浮き胴衣は座席の下にありますわ。
頭からかぶりベルトを締めて出口で紐を引いて膨らませますの。
ただし膨らませるのは出口でですわよ、いいですこと?
機内で膨らませては脱出の妨げとなりますもの、おほほほほ」
データ取得や無線助手として乗り込んだ研究員が困惑していた。
無線で聞いていたアカリは笑い転げていた。
時期的に2つの大陸間の航路の気候が安定していたこともあり、順調に飛行を続けてアジャイリアに着陸した。
「不整地滑走路にしては揺れませんわね?」
窓の外を見てハルカは驚いた。
滑走路はアスファルトではなく、フローリングのような木の板の上に、背負い籠のような編んだ竹が被さっていた。
「障子のように定期的に張り替えるつもりかしら…?」
駐機場に止まって、地面に降りると更に驚いた。
マリアが重装備な民族衣装で出迎えに来たのである。
その数時間前、アカリとヤムがメールでやり取りをしていた。
『マリアのやつ、「外交上重要な案件が優先だ」と言って前日の予定から全部キャンセルして、3時間前から空港で待つつもりらしい。
しかも我が国の民族衣装の正装をしてた』
『気合い入りすぎですのね…。
対してハルカ嬢はマリアさん個人にはあまり興味がないようなので、気の毒ですわ』
「マリアさん…初詣にでも行くのかしら、おほほほほ?」




