第七十二話「優先順位ですの、おほほほほ」
クラウディアからボーキ魔石の精錬の試算が届いた。
年間で結構なペースで飛行魔道具が作れそうな数値ではあったが、ハルカは一蹴した。
「却下ですわ!」
「…なぜだ?」
ヨシチェックが目を丸くする。
「あの国のダムは冬場は水位が下がりますの。
それと、日照が足りず暗いので、照明などで電力需要が上がりますわ。
本当はあの国はとてつもなく寒いので、各家庭に熱交換式暖房魔道具を置けるようにしたいのですけれど、電力供給が追いつかなくなるからからまだ作っておりませんの。
…とにかく国民の生活が優先ですの。
確かに国力や国の威信も重要ですのよ。
国あっての民ですわ。
ですが、国民あってこその国家でもありますのよ。
それを履き違えてはいけませんわ、おほほほほ」
「…また電力か……」
「むしろ、アプリシアで電力が足りない分をアウトソーシングしているのでしてよ?
文句を言ってはいけませんわ、おほほほほ」
数ヶ月後、クラウディア国内の企業、オン・ザ・クラウド・エレクトロニクスから熱交換式暖房魔道具が発表され、極寒地域の家庭に無償配布された。
「…ハルカ嬢、君の懐はどうなっている?」
「あの地域、人口密度が低いので大した数ではありませんでしたわ、おほほほほ」
「ならば暖かい地域に移住させた方が手っ取り早かろう?」
「いえ、国家は国民の居住の自由を妨げてはなりませんのよ」
………。
しばらくして、ジュラルミン・オリハルコン化合魔石が完成した…。
「ハルカ嬢、もう魔石と言う名前で誤魔化すのやめませんこと?
これ、『石』ではなくて金属ですのよ?」
「わたくしが持ち込んだモノ、この世界を『魔改造』するモノで『魔道具』、『魔石』ですわ。
区別しておく必要があるかと思っておりますの、おほほほほ」
各地のメーカーに発注していた部品が揃った。
「いよいよ『やらかし』と『しくじり』が本来の用途で運用できるんだな…」
「え?
何を言っているんですの、殿下…。
輸送用飛行魔道具も哨戒用飛行魔道具も、空母では発着艦はしませんわよ?」
「…え?
じゃぁ何のために作ったんだ?」
「…深夜2時のテンションで作ってしまったのを、便利だったから貨物船用途で使っているだけでしてよ、おほほほほ」




