第七十一話「宇宙人ですわ、おほほほほ」
「今日は忘年会なので定時で上がれるよう努力してください。
障害は起きないように祈ってください」
上司が朝礼で言う。
(それで障害が起きなくなるくらいならみんな毎日祈祷してるわ!)
「あー、喜多さん、紅さんを連れてくる重要ミッション忘れないでね。
連れて来られなかったら罰ゲームだから」
「え…?」
「あの人、『どんな時でもエスカレを受けたら即障害対応できるように』とか言って、毎年参加してくれないんだよ…」
「あ、あー……確かにそう言うこと言いそう…。
というか待ってください、罰ゲームって…?」
「部長が『セクハラギリギリの際どいやつ』って言ってた」
「……むしろ障害起きるように祈っていいですか?」
「…と言うわけで、忘年会参加してください」
「連帯責任にしたのですね…ハラスメントですわ!
喜多さんのために参加して差し上げますわ、もぅ!」
紅はるかは怒りに任せて練りようかんを自分の口に詰め込んで怒りを鎮めていた。
「…連れて来ました…」
それから宴会騒ぎが始まる。
だんだん会話の音量が上がっていく。
……頭が痛い。
ほとんど会話に混ざらなかったのだが…。
「紅さん結婚とかしないの?」
その一言で宴会騒ぎがぴたりと静まり返った。
その場にいた誰もが気になっていたのである。
「ああ、女性は男性に守ってもらいたいとか思って結婚するとかであれば、その予定はないですわ。
これは現代社会においては経済的に守られる、と言う趣旨になりますわね。
つまり経済的に守られる必要のないキャリアウーマンほど結婚しない傾向が指摘されていますのよ、おほほほほ」
「いや、そういう一般論じゃなくて、紅さん個人の話を…」
(あー、この人、こういう空気苦手で毎回逃げていたんだろうな…)
連れて来たことに罪悪感を覚えた。
「え、わたくし個人ですの?
そもそも皆さん、わたくしを女性だと思ってらっしゃる?」
「…………」
一同沈黙。
しばらくして
「性別:変人」
「う、否定はしませんわ…」
「性別:アンドロイド」
「それをいうならガイノイドですわ…」
「性別:ぷにぷに」
「………お腹つままないでいただけます?」
各々が好き勝手言い始めた。
「というか、小学校の卒業アルバムに『近寄りがたい人ランキング』とか作られて、堂々の一位でしたのよ。
そのわたくしと結婚したがる人なんていませんわ、おほほほほ」
「種族:宇宙人」
ぼそっと言ってしまった。
全員が「「「それだ!!」」」と膝を打った。
………。
回線速度が遅い。
野生の外務大臣兼経済産業大臣兼文部科学大臣のハルカは定期的に各国と外交でホットラインを繋いでいた。
以前と比べて音声は途切れがち、映像もカクカクになっている。
「ハルカさんの顔がよく見えないです」
「こちらもマリアさんの顔がブロックノイズだらけですわ…。
海底ケーブルに民間の通信も乗るようになった影響ですわね」
(顔が見えないことくらい、大した問題ではありませんのよ…。
マリアさん以外は…)
その回線帯域を食い潰しているのが、アジャイリア日日新聞の、マリアと「種族:宇宙人」の恋路のゴシップであった。
対ゴシップ金盾が必要なのでは…と考えるアカリであった……。




