第七十話「かつての敵は今日のステークホルダーですの、おほほほほ」
四日目(最終日)。
建設中のアプリシア海軍バッチシティ飛行場兼、バッチシティ国際空港の視察である。
最初から官民共用にする前提で軍事費で建設させていた。
海軍省からの予算申請を見て国王もヨシチェックも「うわ、汚い、しかしハルカ嬢らしいやり方だ」と口を揃えていったという。
もっともハルカは「民間運用が始まったらその出費は他の部分で回収できますわ、おほほほほ」と、10年くらい先の収益バランスで計算していたので「汚い」自覚は皆無だった。
建設中の空港までは、先に整備されていたクラウディアとの国際魔道馬車(馬はいない)の途中の停留所で降りる。
「ここから、鉄轍を分岐させて、あちらに見えている建設現場まで向かえるようにする予定ですわ。
時速160キロで走らせる予定ですの、おほほほほ」
一行は貨物用の鉄轍を臨時で走る魔道荷馬車(馬はいない)で空港に向かう。
ハルカとアカリにとっては見慣れた重機が蠢いている。
「アスファルトフィニッシャーにロードローラーですの?
いつの間にそんな物を…」
「なんだかよくわからんが、すごい魔道具ということだけは余にもわかるぞ?」
「…だから『やることが多すぎる』と再三申し上げているのですわ、おほほほほ」
空港建設地は、かつてハルカがポインター子爵からぶん取ってベニー公爵領に強引に編入した工業都市である。
建設中の格納庫や空港の旅客用施設の中に、既に完成している建物があった。
「あれは……?」
「空港専門の火消し部隊の建物ですわ。
飛行魔道具は燃えやすい魔道油を使いますの。
万が一の時に備えて待機しているのですわ」
「あの変わった魔道荷馬車(馬はいない)は…?」
「魔道火消し荷馬車(馬はいない)ですのよ」
「…化学消防車ですの?
ハルカ嬢、本当にいつの間に作っていたんですの?」
「だから『やることが多過ぎる』と言ったのですわよ?」
「でも誰が使うんですの?」
「それは心配ありませんわ、おほほほほ」
一行が到着すると同時に、火消し部隊の公開訓練が始まった。
その様子を、一行とは離れた位置で腕を組み仁王立ちしている人物がいた。
そしてその隣で、ハルカに深々と頭を下げる人物。
ポインター親子だった。
「空港の経営に少し噛んでもらうことにしましたのよ。
ポインター子爵も、お金は自分で溜め込むより回す方が正しいと、ようやくわかってくださったようですわ、おほほほほ」
「…ハルカ嬢…あなたやはり悪役令嬢ですわね。
何でも資本主義にしてしまいますもの…」
「…資本主義も立派なインフラですのよ、おほほほほ?」




