第六十九話「裾野が広いのですわ、おほほほほ」
三日目。
広い展示スペースにパネルがたくさん並んでいる。
実際にまだ見せられる物は作れていないが、現在開発中の物の説明である。
アプリシア語、クラウディア語、アジャイリア語の多言語表記になっている。
そのテクニカルロゼッタストーンを、各国の要人が自由に見て回っているので、解説役にアカリとヨシチェック、そしてフサも駆り出されていた。
…あるパネルにて。
解説担当:ハルカ。
「こちらは遠くの雲を調べる魔道具ですわ、おほほほほ」
「どうやって調べるのですか?」
「それは、この魔道具のここの部品から念波を発射して、跳ね返ってきた念波を調べるのですわ。
雲が多いほどたくさん念波が跳ね返って来ますのよ、おほほほほ」
「なるほど、これがあると、何ができるのですか?」
「船でもそうですが、嵐の中に突っ込むことを避けられるようになりますわ、おほほほほ」
…とあるパネルにて。
解説担当:ヨシチェック。
「犬という動物は、とても嗅覚が優れている。
犯罪に使われそうな物品や危険な薬が国境を越えて流通しないよう、荷物の中の匂いを確認してくれるよう、訓練する。」
「密封していたらわからないのでは?」
「密封する前に触った手で鞄を閉めたら、人間にはわからないが犬にはわかるわずかな匂いが残る」
「本当に犬が嗅ぎ分けられるのか?」
「君たちも狐狩りとかで、獲物の追跡に犬を使っているだろう?」
…とあるパネルにて。
解説担当:フサ。
「これは、旅券と言って、国を行き来する際に入出国を管理するためのものです」
「いや、パスポートやビザは一応すでにあるぞ?」
「…そうですね。
ですがこれは、特殊な超小型魔道具が埋め込まれていて、本人かどうかを眼球を使って確認するらしいです」
「え、目玉を?」
「正確には、瞳の形を映し絵を比較して本人かどうか調べますが、全部魔道具がやるので確認が一瞬でできるようになりますし、入出国は自動で記録される…らしいです…?」
…とあるパネルにて。
解説担当:アカリ。
「こちらは、鞄の中身を透視する魔道ですわ」
「え、透視!?」
「長時間孤立する乗り物ですから、刃物とか持ち込まれたら困りますから」
「…そこまで考えているのか!?」
「ええ、最悪のパターンだと飛行魔道具を乗っ取って王城に突っ込ませることさえできてしまいますわ。
透視の仕組みは、人体にも応用できて医療にも役立ちますわ」
「それって、考えていることを覗くのですか?」
どうして今の説明でそういう質問になるのか…。
「いえ、医療用途の場合、見るのは骨とか臓器ですわね…。
場合によっては脳も見ますが、考えていることまではわかりませんわ」
(というかマリアさん、あなたが考えていること、透視する必要皆無ですわよ?)
一方で、自ら携わることによって、空を飛ぶために必要なモノがどれだけ多いのかを知り、最初積極的に作ろうとはしなかったハルカの思考を透視したような気分のヨシチェックであった。




