第七話「国際仮想私的通信ですわ、おほほほほ」
王国内の同時多発システム障害の対応で数日間走り回り、対策本部に戻ってきたアカリ嬢は、「ダウンしたシステムを買い取りますわ、おほほほほ」と打診してきた企業との交渉の席にいた。
「DNSはゾーンファイルを置いていたストレージが壊れていましたの。SMARTエラーもSyslog検知してほしいですわね」
「NTPはオリハルコン魔石原子時計の故障でしたわ」
「病院のシステムは患者DBのディスクの容量と断片化が問題でしてよ?」
「おほほほほ、全部解決できますわよ?」
「…そりゃ、元はと言えばお前さんが作ったモノだしな」
退院して復帰した国王陛下が言う。
そこに便乗して王太子が噛み付く。
「これで金取るとかマッチポンプだろ」
「いいえ、ライフサイクルですのよ、おほほほほ」
「いやいや、ゾーンファイルとかメモとか、深夜二時テンションでメンテナンスできないのは若干マッチポンプな気がしましたわ…」
現場を見た人間が言うと言葉の重みが違う。
「わかりましたわ、『雲の上』化費用と、最初の一年は弊社で負担しますわ、おほほほほ」
「クラウディア連邦国内のデータセンターにVPN接続して、BGPで経路交換しますの」
妥協的提案と見えて、一度依存すると乗り換えが困難であることを、これが縛りの始まりだと言うことを、まだ誰も考えてもいなかった。
国際仮想私的通信
英訳すればPrivate Virtual Network。つまり国際VPNのこと。
SMART
ハードディスクが壊れかけの際にエラーメッセージを出してくれる。
Syslog
色々なサーバや機器のエラーメッセージを1箇所に集約する仕組み。その習作した場所で特定の文字列があったらアラートを出すようにすることが一応できる。
BGP
Border Gateway Protocol。
組織間でのネットワーク構造情報を交換し合うための仕組み。




