第六十七話「必ずあなたを照らしますわ、おほほほほ」
明日は機体のモックアップの視察が予定されている。
今日の主役はヨシチェックであったが、明日はハルカが立ち回る番だ…いや、基本的にそうか。
モックアップの各所について、なぜこのデザインなのか、空力やエネルギー効率などを、噛み砕いて説明する。
そのための資料の最終チェックをして、印刷した。
コンピュータをシャットダウンして、寝床に入る。
貴族の令嬢のベッドよろしく非常に豪華な天蓋付きで、これがまたハルカにとっては寝心地が悪かった。
貴族学院時代は寮だったし、クラウディアでは2DKのアパートを借りていたし、そもそもあまりアパートに帰らず社長室のソファで寝ていたりした。
王都邸は一応第二の自宅のはずだが、ハルカにとってはあまり馴染みがなかった。
ナールハヤとの講和条約締結後にアプリシアに帰国してから、王都邸を拠点に活動しているが、異様に金がかかった建物にまだ慣れない。
ハルカは寝付けなかった。
(…まったく、明日も朝早いというのに……)
と心の中で文句を言っていたら、小さく控えめなノックが聞こえた。
「…ハルカさん…起きてますか?」
マリアの声だった。
(そう言えば、うちに泊まっていたんでしたわね)
アプリシア来訪中の宿泊施設について相談されたので、それならうちに泊まるようにと言った。
政府要人と警護の滞在中の宿泊費など、国家予算からすれば微々たるものかもしれないが、少しでも浮かせて他に回して欲しいし、そういう姿勢をメディアが宣伝すれば国民も税を納めることに協力的になるはずだ、と思ってのことだった。
しかし、その4時間後、ヤムから「マリアがお前の家に泊まれると言って鼻血を流して狂喜乱舞しているんだが」とメールが送られてきた。
因みにそのせいで国会の予算審議が30分中断したとか。
「…起きていますわ。
どうされましたの?」
「…お手洗いに行きたいんですけれど…その…暗くて怖いので着いてきてもらえませんか?」
……子供か!
ハルカは仕方なく廊下に出て、マリアの手を握って歩き始める。
暗いはずの廊下だが、歩く先の照明が次々と勝手に点灯していき、全く歩くことに支障がなかった。
これで暗くて怖いということはまずあり得ない。
ベニー家王都邸は廊下に一定間隔で王国最先端の人感センサー式LEDライトが設置されていた。
「必ずあなたを照らしますわ、おほほほほ」




