第六十五話「自由とはいえ限度がありますわ、おほほほほ」
公開演習の後、例によって王宮で夕食会が行われた。
今回はセッティングにヨシチェックが積極的に携わった。
ここでもヨシチェックが成長したとアカリは感心する。
興味があることに関連することなら真剣になれる、誰でも当てはまることだが、ヨシチェックは特にその傾向が強いようだ。
夕食会の団欒の中心はヨシチェックであった。
本来外交上元からそうあるべきであるが、今回に限っては完全に注目の人物だった。
「頼れる教官」として話題になっていた。
一方、管制官役の声のみの出演の上、正体がハルカのメイドであるフサは、食事会に参加はしているが当然目立つことはなかった。
そして、その席でもマリアはずっとハルカの腕から離れなかった。
「あの、マリアさん、歩きにくいですわ…」
その様子を少し離れた場所から見ているフサがアカリに疑問をぶつけた。
「あの、アカリお嬢様…」
「フサさん、どうしました?」
「あの…ハルカお嬢様とマリアさん…女性同士なのにマリアさんがそういう雰囲気でないように見えるのですが…。
何でマリアさんあんなにハルカお嬢様にくっついて…?」
アカリは言われて改めてハルカとマリアを見る。
マリアは民選国王を三期務め上げ、任期満了後の現在は外務大臣として入閣している。
なのでそこそこの年齢のはずだが……………。
どう見ても恋する乙女だった。
アカリは深いため息をひとつついた後に…。
「…………頭が痛いですわね………。
フサさん…、恋愛の形は自由ですの………。
…ですが…。」
そしてアカリはマリアに近づき、アジャイリア語で耳元でささやいた。
「ちょっと節度を持ってくださいまし」
マリアはバッとハルカの腕を離して顔を真っ赤にした。
追い打ちをかけるようにアカリが続ける。
「ハルカ嬢は私の腹心と申しましたの、お忘れなきよう」
(これじゃ、私が悪役じゃないですの…。
嫌われ役は慣れておりませんのに…)
アカリの頭痛が増幅した。
その数時間後、アジャイリア日日新聞社の輪転機が印刷する朝刊には………
『ストラッツ外相、意中の人と再会』
『アプリシア大、航空学科公開訓練を実施』
『王太子自ら教官を務める』
『航空分野の国際協力さらに強固に』
マリアがハルカに抱きついている写真が一面大見出しだった。
全アジャイリア国民が二人の関係に注目することとなった。
深夜、ポータルサイトで『アジャイリア日日新聞オンライン』のその記事を見つけたハルカが
「一番大きい見出しが一番不要な情報ですわ!」
と絶叫していた。
「でもまあ、民主化して10年ちょっとでこういう記事を書けるというのは、いい傾向ですわね、おほほほほ」




