第六十一話「本当に必要なければそれが望ましいですわ、おほほほほ」
ピー、ピー、ピー…
パトランプが光っている。
監視ツールに無数の警告情報が表示されている。
「ファイアウォールから大量のアラートが…」
「何ですの?
……ってこれ、攻撃されていますわ!」
運用ルームが緊張感に包まれる。
(この状況下でもお嬢様語尾なの、この人…?)
「とりあえず実機ログインできるかしら?
ログ拾ってアクセス元拒否するのですわ!
わたくしはエスカレーションしますわね」
(だからこんな状況で何でその口調なの、この人…)
「…このファイアウォール、WAN側からのアクセス素通しになってますよ?
パスワードも『p@ssw0rd』とかですし!」
「あ、犯人わたくしでしたの。
障害対応で深夜2時テンションでしたわ!
とにかく代替機で復旧優先で攻撃されるリスクを想定し忘れてましたの…とほほほほ」
「笑って…ない!?」
外部にバカ高い金額でフォレンジックを依頼した。
背に腹は変えられないためである。
結果、特に漏洩は認められなかった。
………。
…………。
……………。
「本当は、兵器なんてなければない方がいいに決まっているのですわ。
そのためのリソースを他に裂けますもの。」
フサが真剣に聞き入る。
「ですが、昔、攻撃をされることなんてないと思っていて痛い目を見たことがありますのよ」
「あー、アレはクビになるかと思いましたわ…思い出したら頭が痛いですわ…」
「あの時によくよく思い知らされましたわ。
攻撃してくる人は必ずいるのだということを。
世の中にはいろんな考え方の人がいて、さまざまな利害がありますの。
そして、みんながちゃんとルールを守ればいいのですが、それができない状況になることがあるのですわ。
…故に…何かを守るためにはちゃんと『攻撃する側の考え』も予想して、適切に備える必要がありますのよ、おほほほほ」
「でもその結果、2人SOCを立ち上げて24365監視とか言って、死にかけましたわ…頭が痛い……」
ファイアウォール
「防火壁」の意味で、コンピュータネットワークでは外部からの不正アクセスを遮断する機械を指す。
エスカレーション
いわゆる「報告・連絡・相談」
問題発生時に勝手に処理しないで、ちゃんと報連相することがいろんな意味で重要。
もちろん内容が「やらかしました!」であっても。
p@ssw0rd
よくないパスワード代表例。
passwordのaを@に、oを0に置き換えているが、ほぼそのまんまなので、攻撃者が一番最初に不正ログインを試みる際に試すリストに高確率で挙げられる。
辞書攻撃であればほぼ試行される。
ユーザー名がadminとかのままだとやられたい放題になるので、本番環境では絶対に使ってはいけない。
フォレンジック
不正アクセスやマルウェア感染などのセキュリティインシデントがあった時、「どんな情報を持ち出されたか」などの影響を専門家が調査する。
大抵、とてつもない金額になる。




