第五十八話「パチモンですの、おほほほほ」
アプリシアの隣に、小さな国があった。
セグメンティア公国である。
この国は、クラウディアとはまた別の方向で厄介だった。
ハルカがようかんを作ると、その翌年にセグメンティアから安価なようかんが輸入されるようになった。
試しにハルカはそれを購入して口に入れた。
2秒で吐き出した。
それは、見た目はようかんのようでーーー。
砂糖入りリコリス寒天だった。
ハルカは輸入業者を詐欺で告訴した。
輸入業者は倒産した。
ハルカがFarOSというグラフィカルなオペレーティングシステムを発表して、コンピュータという魔道具をコマンドを知らない素人でも使えるようにした。
すぐに海賊版が出回った。
出所はセグメンティアだった。
因みにヌル・E・ポインター子爵が買ったのはこの海賊版であり、それをオン・ザ・クラウドに密告したのはその息子のマウス・E・ポインターである。
そして今回、「飛行魔道具は我々が先に作っていました」と大々的に発表してきたのである。
しかも、量産して『飛行ショー』をやるのだという。
ご丁寧にハルカ宛にその招待状まで送ってくるという徹底した挑発ぶりであった。
「嫌な予感しかしませんわ…」
『飛行ショー』の会場はすぐ近くに民家が密集している。
「なぜこんな場所で?」
ハルカについてきたフサが困惑している。
フサの戦時中という昔の記憶の中ですら、民家が密集する場所で離陸させるのはおかしなことである。
ハルカの昔の記憶では、用地の確保を巡り過激派と地元民が結託して揉めた挙句、ペンションが空港の誘導路の中に取り残された稀有な例もあったが、それも例外中の例外で、どう考えてもここに滑走路を作るのはおかしい。
「セグメンティア公国は小国で、平地をここしか確保できなかったというのが表向きかと思いますわ」
セグメンティア側の思考回路で読み解くアカリではあったが…。
「まあどうせ、首都のど真ん中で飛ばして見せつけて、虚栄心を満たしたいのでしょうけれどね」
公国の所業にうんざりしていて普通に毒を吐いていた。
『飛行ショー』なるものが始まった。
…が、バードスイーパーという概念がなかったらしい。
滑走開始とともにド派手な花火が打ち上げられた。
その音に驚いた鳥たちが周辺の木々から一斉に飛び立って群れになり滑走路上空を飛び回り始めた。
離陸後すぐにバードストライクしてプロペラが破損した。
失速して住宅地にまっしぐら。
「フラップ出して!
左に旋回、そっちの空き地に!!」
持参した拡声魔道具でハルカが大声で指示…というか怒鳴りつけていた。
「もうやだこの国…」
招待されてアプリシアとクラウディアからやってきた参加者は一様にそう思った。
リコリス
日本語では「甘草」。
古くから薬草として知られて、東洋では今でも薬として使われる。
色は真っ黒。
漢方の「カンゾウ」とはこれ。
独特の甘みがあることから、ヨーロッパの北の方ではいつからか薬から菓子に入れるモノに変わってしまった。
正直、味は微妙。
世界一まずい飴とかタイヤ味のグミと言われる「サルミアッキ」の原料でもある。
摂取しすぎるとミオパチーを起こす危険がある。
GUI グラフィカルユーザインターフェイス
コマンドを打つのではなく、マウスなどで操作できる仕組み。
今のパソコンはほとんどがコレ。
バードスイーパー
空港周辺で航空機の離発着の支障となる鳥を駆除する係。




