第五十二話「クラウディアという国ですの、おほほほほ」
「ここで一度、わたくしがが追放留学に訪れそのまま起業して、永住権を取得したクラウディアという国について、説明しておきますわね、おほほほほ」
クラウディアは、はっきり言って「やり方が汚い国だ」と近隣国から嫌われていた。
ハルカがアプリシアの貴族学院にいた際に、スパイが技術を盗もうとした。
だが、ベニー家王都邸もハルカの住む学生寮も、ハルカが魔改造セキュリティを設置していた。
学生寮に忍び込んだクラウディアのスパイは駆けつけた騎士団機動部隊によって速攻で捕縛された。
スパイが尋問されている傍らで、ハルカは敢えて技術のライセンス供与をすることを提案した。
因みに、この時ハルカは空腹のスパイに対して、ホカホカの豚肉を揚げて卵でとじて米の上に載せた拷問器具を使ったので、スパイは首を縦に振る以外の選択肢はなかった。
この一件を通して、クラウディアはアプリシアとだけは友好的な関係となった。
もっとも、ハルカの技術資料は『やたらと画数の多い文字とぐにゃぐにゃの文字が入り混じった異界言語』で記述されているので、盗んだところで読むことができなかったであろう。
読めるのは直接教え込まれたハルカの父親と、乳母と、ネイティブのアカリだけである。
そもそもクラウディアは寒冷である。
広大な国土は永久凍土もあれば、普通には人が住めないような低湿地帯もある。
首都周辺以外の土地は、他民族の国を支配している状態なので『クラウディア連邦』と名乗っている。
しかしその実態は、他民族の国を植民地状態のまま自国に編入して、搾取する構図だった。
この状況を当然ハルカは良しとはしなかった。
システムやその他諸々の技術ライセンス料をクラウディアから徴収し、起業後にその資金をクラウディアの被支配地を整備することに充て始めた。
道路を作った…というか、何度も魔道馬車(馬はいない)で往復していたら勝手に地面が固まり道になった。
中央程ではないが、ある程度近代的な医療を受けられる病院を作った。
ここまでは慈善事業で済んだ。
学校を作った。
政府に目をつけられた。
被支配地の学校という施設は、搾取したい民族に不都合なことを吹き込み独立を促しかねないので、そうなるのはハルカも想定済みであるが、ハルカの『隣国の王宮関係者』という身分的に政府も簡単には手を出せないので、確信犯でやっていた。
それぞれの民族の国に、それぞれ一つずつ産業を作った。
山岳の国には、谷を埋めてダムにした。
水力発電ができるようになった。
工事のために作った道路が、中央と地方を結ぶ幹線道路になったことで、この民族の中心地は商業都市になった。
川の下流の低湿地帯の国は、灌漑工事をした。
上流のダムと相俟って、短い夏の間だけで育つイモの産地になった。
荒野の民族の国には、DRサイトのデータセンターを作った。
「民族の独立支援と看做されてしまいますよ」
「流石にこれ以上は、政府が黙ってないですよ」
「社長が永久凍土送りにされてしまいますよ」
側近や秘書たちが口々に心配した。
「おほほほほ、わたくし好みにクラウディアを魔改造しているだけで、民族の独立は支援しておりませんわ。
寧ろ独立をされたらわたくしも困りますもの」
社長室の内線が鳴った。
防災センターからだ。
「正面玄関も裏口も、秘密警察が…」
社長室にいた全員が凍りついた。
「逃げます?」
秘書が荷物の準備をし始める。
「おほほほほ、わたくし自ら出向いて差し上げますわ!」
顧問弁護士が言う。
「いざとなったら僕の名前を出して下さい。
党の上層部にコネがあるんで、なんとかできるかと…」
「おほほほほ?
永久凍土送りならそれもまた一興ですわ!
永久凍土でも氷河でも快適に過ごせる都市に魔改造してみせますわよ!」
(((コイツならやるだろうな…)))
秘書と側近たちの心の声がハモった。




