第四十九話「講演一日目ですわ、おほほほほ」
ハルカは壇上で熱弁をふるっていた。
あずきとは如何なる植物か。
「あずきは見た通りマメの仲間の植物でして、非常に多くの不溶性食物繊維を含み、茹でることにより更に5倍にも増えるため、腸に対してはよい働きとなる健康的な作物ですわ、おほほほほ」
あずき基礎知識である。
糖分を摂取することによる脳への影響について。
「わたくし達人間を含む動物が…あ、一旦4本足の動物で考えてくださるかしら?
虫とかまで入れるとややこしくなりますのでね。
動物は何かを考えるときに、糖分を必要としますわ。
そして人間は遠い昔の祖先が糖分不足だった時期があるので、甘いものを食べると勝手に幸福感を感じてしまいますの」
糖分と脳の関係である。
ここからの話の飛躍が酷い。
「つまり、ようかんはあずきの良さを最大限に活かして食物繊維と糖分と同時に効率よく摂取でき、なおかつ保存もきくパーフェクトフードなのですわ。」
まぁ保存食としては優秀ではある。
パーフェクトかというと疑問はある。
「すなわち、ようかんは贈答用の菓子としては必要十分条件を満たす最適解であり、もらって嬉しくない人なんていませんわね。」
あずきが嫌いな人はどうすればいいのやら。
「裏を返せば、ようかんを贈って拒否されたなら、その者とは一生仲良くなれないということですわ」
…初対面のようかん一つでその後の人間関係に永久に影響するとかホラーである。
「ですので、異国の民でも惜しむことなくようかんを与えるべきなのですわ。
それが、巡り巡って、自分のようかんとして返ってくることは多々ありますの、おほほほほ」
いや、どんなリターンだよ。
「『ようかんは人のためならず』ですわ」
もはや意味不明だった。
講演は立ち見が満員魔道馬車(馬はいない)が如く好評であった。
受講特典の新作ようかん目当ての人が殺到したためである。
そして出口で受講特典を受け取った瞬間、全員ぶっ飛んだ内容の講義の意味が理解できてしまった。
受講特典の新作ようかんは、『アジャイリアの南方の島特産の黒糖&シークヮーサーようかん』であった。
まさしくハルカがマリアに初対面で食べさせたようかんが、アジャイリアのご当地ようかんとして、ハルカに返ってきた証拠だった。




