第四十八話「特別講演ですわ、おほほほほ」
ヨシチェックが『飛行魔道具』を作れと言っているのにハルカが渋っていた理由の一つに、『ボーキ魔石』から軽い特殊な金属を取り出すのに、莫大な電力を消費するという理由があった。
飛行魔道具は、軽くて丈夫である必要があるので、この金属なしでは作れない。
そして、大容量の電力を賄えるのが発電所はアプリシア国内にただ一箇所、ベニー公爵領の発電所のみである。
その発電所も、需要の逼迫で供給能力が追いつかなくなりつつある。
当初は民家の電灯や街灯だけであったが、王都まで送電線が引かれてから一気に需要が跳ね上がった。
王宮はたびたび電圧低下に見舞われ、王宮地下牢のサーバーが再起動したりする事象が多発した。
実は、あの騒動は経年劣化が一気に押し寄せただけでなく、再起動が頻繁にかかったのが原因の可能性が高かった。
ハルカによるマッチポンプ資本注入のクラウド化の際、王宮の屋根の一部に『光合成魔道具』を取り付けたりしたが、抜本的対策はまだできていない。
発電所の増設も厳しい。
なぜなら、ベニー公爵領内の山中の『炎の魔石』の採掘が間に合わないためである。
これは、特殊な加工で液化したものが、魔道馬車(馬はいない)を動かすためにも使われる。
当然、船の燃料もこれであった。
アジャイリアでは『炎の魔石』が産出する。
そこで、自国内での需要が今後増えるであろうが、一定割合をアプリシアへ輸出することになった。
空母・やらかし、しくじりだけでは足りない。
また、今後船を作る需要は高まるであろう。
アジャイリア国内に造船所を建設し、造船技術を提供してある程度の船を作れるようにする計画が進んでいた。
「経済的に自立していただかないと、だんだん宗主国と植民地みたいな関係になってしまいますわ、おほほほほ」
そして、第一号の小型船が進水した。
船の名は『コンテナ駆逐艦・しつねん』だった。
本来艤装が載るべき場所にコンテナが積まれていた。
とある行事のため、この船の処女航海でハルカはアプリシアに帰国することにした。
ハルカが発起人となり設立されたアプリシア国立王都大学のオープンキャンパスが行われる。
その際の特別講演に講師として呼ばれていたためである。
講演は数日に渡り別の内容になっているが、そのタイムテーブルを見て、アプリシア王宮内がざわついていた。
1日目「ようかんは世界平和の礎となる〜糖質と栄養学と異文化理解」
2日目「最新の考え方『ゼロ・トラスト』〜たとえ王太子でも入室権限の無い部屋には入れない」
3日目「空を飛ぶのに必要なこと〜飛行魔道具開発の課題とこれから」
「余はそんなに信用がないというのか?」
「件の婚約破棄で、そういうイメージが国民に定着しておりますな…胃が痛い…」
「もう、そういうキャラで行くしかないですわね…。
イジられてイメージが丸くなるなら、それもよいのではありませんこと?」
「…もしかしてハルカ嬢はそこまで計算済みだったというのか…?」
「…でしょうな。
殿下はただハルカ嬢の掌で踊らされているのが、一番お互いのためかもしれませんぞ?…胃が痛い」
「……………」
宿題を早くやれと親にせかされた子供のように、わかっているが素直に従うのには納得がいかないヨシチェックであった。




