第四十七話「壊れない理由ですわ、おほほほほ」
「本日から配属になりました喜多あかりです。
よろしくお願いします。」
前職がブラックすぎて転職しようとした時に目に入った総合商社の求人に応募した。
あっさり内定が出て「ここもブラックか?」と警戒しつつも入社して、研修を受けたらシステム部門に配属となった。
そして朝礼で自己紹介をした。
「じゃ、君のOJT担当はこの人だから。
ひょっと変わった人だけど、男ばっかりの職場だし、女性の方がいいと思って…」
今日からの上司がそう言って紹介した人が隣に歩いてきた。
クリーム色のワンピースに、赤紫色のカーディガンを羽織っている。
そして、どうにもお腹に視線が行ってしまった。
全体的に痩せているがお腹が割と膨らんでいる。
「紅はるかですわ。
あ、これ甘いもの食べすぎなだけで、妊娠とかじゃありませんわ、おほほほほ」
ーー何だこいつ。
喋り方もおかしいし、『おほほほほ』なんて笑い方実際に聞いたのは生涯初だ。
そしてお腹が出ていることを隠そうともしないのは女性として終わってる気がした。
「緊張してますわね?
まずはようかんでも食べてから仕事の概要を教えますわね」
「…いや、入社早々デスクで間食はちょっと…」
「何かしら、わたくしのようかんが食べられないとおっしゃいますの?」
…ダメだこの人、何とかしてくれ。
上司の『変わってる』の範疇が広すぎるのでは?
私の中では『変わってる』を突き抜けて『宇宙人』なのだが?
それから数年、紆余曲折あってお互いを理解し、私たちは阿吽の呼吸になった。
なにしろ、彼女は数段階先を読んで行動していて、その間のプロセスは「どうせ説明しても理解してもらえませんわ、おほほほほ」と言って飛ばしてしまう。
初日に仕事の説明の前に私の口にようかんをねじ込んでくるというパワハラを行ったのは、私の顔色を見て朝食を抜いていたことを察して「仕事の説明の前に脳にブドウ糖が必要ですわ、おほほほほ」という理由だった。
因みにお腹が出ているのは『有事の際の体内備蓄』らしい。
……いや無理があるだろ。
紅はるかという地球外言語でプロジェクトを進める宇宙人がいる。
私はその宇宙人の会話を人類語に翻訳する通訳に徹した。
まぁ流石に全部は理解できなかったが。
「何でサーバールームにダンボールで大量のようかんを保管しているんですか!」
「一定の温度、湿度で合理的ですわ、おほほほほ」




