第四十四話「あなたの○○譲ってくださるかしら、おほほほほ」
「もう少し奇行を増やした方が噂しやすいですわよね?」
…ハルカは既に存在が特異点すぎていじめるネタには申し分ないが、決定的なネタに欠けると考えているらしい。
「次は何をやらかしますの?」
「学院の庭園用の堆肥を作りますわ、おほほほほ」
……嫌な予感しかしない。
…そしてその予感は当たった。
この国の、排泄物を窓からそこら辺に投げ捨てる風習はいかがなものかと思っていた。
キター伯爵領内では、道路に側溝を作り、水で流すことにした。
ベニー公爵領内では、発電所の利益で建物の地下に『水を浄化する魔道具』を設置する補助金を出した。
しかし王都では依然として、何の疑いもなく「水!気をつけて!」という掛け声が響いている。
その衛生観念の意識改革をしようというらしい。
腐葉土とかではダメなのだろうか?
学院の片隅に、木造の無断建築が作られた。
物を燃やすわけでもないが煙突が設けられているのは、悪臭対策らしい。
「ハルカ嬢、流石にこれは『魔道具』とは言いませんわよね?」
「おほほほほ………。」
…『魔道具』で押し通すつもりだったらしい。
「『最新鋭こえだめシステム』ですわ、おほほほほ」
学院の生徒の間には「本当にハルカ嬢が狂った」という噂が流れた。
まぁ、「あなたの糞尿、譲ってくださるかしら、おほほほほ」なんて聞いて回ったら当然の結果としか言いようがない。
しかし、『愚か者連盟』は同時に「また何かやらかそうとしているな」と期待し始めていた。
実際にはトイレから肥溜めには下人たちが運んだのだが、下人たちはしかめ面をしながらもハルカから支給される賃金とようかんで黙って運んだ。
「その堆肥、どうするんですの?」
「学院の一部の土地で実験的に使ってみて、その結果を宣伝しながら農家に売り込みますわ、おほほほほ」
と、ハルカは許可をとったのか怪しい、あずきで埋め尽くされた花壇を指さして高笑いしている。
おそらくこの魂胆は別のところにあるのだろう。
その数ヶ月後、ポインター子爵領の農民が皆自宅内に肥溜めを作り、翌年には子爵領の不作が解消したという。
「百聞は一見に如かずなのですわ、おほほほほ」
「…さすがに100回聞いたら試す価値はあると思うのですが…」
「マウス様、それはそういうハルカ嬢式の慣用句なのですわ。」




