第四十三話「愚か者連盟ですわ、おほほほほ」
じわじわとハルカに関する風説が流布されていった。
「王太子の婚約者になったのは権力目当てらしい」
…半分あってる。
「周りの人間のことを考えず勝手なことばかり言う我儘な令嬢だ」
…これも半分あってる。
「ダンスは苦手で剣術が得意で貴族の令嬢としてはおかしい」
……だいたいあってる。
「発電所の利益で庶民向けの学校を作って民衆から崇拝されるよう仕向けている」
…ある意味あってる
「得体の知れない甘くて黒い菓子を作って食べた者を堕落させている」
………ほとんどあってる?
「王太子殿下を本当は全く信用していなくて口出ししまくる出しゃばりたがり」
……もはや真実でしかなかった…。
ポインター子爵令息を中心に大勢の生徒たちが色々とハルカの陰口(という名の賞賛)を言い、物(主にヨシチェックの散らかした痕跡)を隠したり、鞄に脅迫状(主に「ようかんのせいで太ったから責任取れ」と書いてある)を突っ込んだりした。
「あること」に気づいていない大人たちの目には、いじめに見えたであろう。
その「あること」とはーー
いじめに参加している者たちは、皆体のどこかに同じアクセサリーをつけていた。
ある者は黄鉄鉱の六面体のネックレス。
ある者は黄鉄鉱の六面体の指輪。
ある者は黄鉄鉱の六面体の髪飾り。
ある者は黄鉄鉱の六面体のカフスボタン。
「わたくしたちは、ポインター子爵に騙されている『愚か者』を演じている『愚か者連盟』ですわ、おほほほほ」
金に見えるが、金ではない黄鉄鉱は、人類を金鉱を発見したとぬか喜びをさせ、正体がわかると落胆させてきた歴史から「愚か者の金」の異名がある。
学院の生徒で黄鉄鉱を身につけていないのは、ヨシチェックだけだった。




