第四十二話「将来への布石ですわ、おほほほほ」
その日、ポインター子爵令息は顔色が悪かった。
ハルカと顔を合わせると目を逸らした。
話しかけても反応が薄い。
周囲が体調が悪いのかと気を使うと、「大丈夫」と否定する。
そして私のことを何度もチラチラと見てくる。
何か悩みがありハルカではなく私に相談したいが、踏ん切りがつかないのだろう。
…その状況に追い込まれる原因はなんだろうか?
いくつか予想を立てたが…。
「お父上からハルカ嬢をいじめろとでも命令されましたの?」
軽くカマをかけたつもりが、驚いて椅子から転げ落ちてしまっていた。
「なぜそれを……」
「分析とコミュニケーションは円滑な組織運営に重要ですのよ」
「……」
ポインター子爵令息は一瞬「この人もハルカ嬢と同類だな」と納得した表情だった。
ポインター子爵領は今年も不作らしい。
そしてポインター子爵本人は贅を尽くしているという。
そこに先日の王都大学の件。
ポインター子爵からすれば、領民が知識をつけ反乱分子になるきっかけになりうる教育改革を訴えるハルカは邪魔でしかないだろう。
ついでに、ポインター子爵は異様にヨシチェックを褒め称える発言をする。
ザル審査のヨシチェックを担ぎ上げて不正を働く魂胆は丸見えで国王陛下も頭を抱えている。
そのヨシチェックの目を黒く留めているのもまたハルカである。
「アカリ嬢は、すべてお見通しなのですね…。
……実は、ハルカ嬢と殿下の仲を引き裂くように命令されました…」
「ほほぅ?その話、詳しく聞かせていただけますかしら?おほほほほ」
一番聞かれてはいけない人物が登場してしまい、ポインター子爵令息は動揺する。
「大丈夫、ハルカ嬢には何か考えがありますわ。
悪いようにはなりませんから、ご安心くださいな」
「こういう時は狂言いじめ、ですわよ、おほほほほ」
ヌル・E・ポインター子爵は、息子を使ってヨシチェックとハルカの婚約破棄に向けての破壊工作を目論んだ。
しかし返って、その息子がハルカと共謀して狂言いじめを演じ、数年後にライセンス違反での復讐に向けてアカリと共に暗躍するということを、ポインター子爵は知るはずもなかった。




