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第三十三話「絶対防衛ラインですわ、おほほほほ」

ウォーターフォーリアという国は、いわゆる男尊女卑の国だった。

この国は、地方の小国同士が常に小競り合いをしていて、その中から武力でウォーターフォーリア全土を統一する皇帝が現れ、その皇帝の力が衰えるとまた小国に分裂して争う。

そういう歴史の中で、皇帝が治める束の間の平和では学問や文化が栄えるが、結局は武力こそ全てという価値観が形成されていった。

男尊女卑はその弊害と言える。


ナールハヤの侵攻に最前線で指揮をとるパルス・ディエンフワ将軍は、そんなウォーターフォーリアの中でも一番奥地の小国を本拠地としている、皇帝からの信頼の厚い将軍だった。

そして、彼にはこの国には珍しい価値観を持っていた。

人徳も、交渉力も、人を惹きつける得体の知れない何かも、世渡りのうまさも武力のうちだという価値観である。

隣国で国民が女性を統治者に選んだという噂を聞いて、全ウォーターフォーリア国民が呆れ、嘲笑った。

その中、将軍はマリアに親書を送った。

「お互い協力し合いたい」と。

ナールハヤの卑劣な戦術や伝染病のことを事細かく記してアジャイリアに伝えたのはこの人である。

ウォーターフォーリア皇帝からの援軍要請にアジャイリアが躊躇なく応じたのは、マリアとパルスの信頼関係があったからである。


アジャイリアからの援軍部隊は最前線ではなく、かなり国境の手前の陣に着いた。

アジャイリア兵たちは「ここから先の街は見捨てるのか?」と訝しんだ。

しかし、これはパルス将軍の戦略であった。


将軍はナールハヤの弱点を見抜いていた。

投石器での遠方からの奇襲は、見通しの開けた平地でないと難しい。

夜間に攻撃してくるのは、投石器の組み立てを日中に行うと見つかってしまうため、隠密行動ををしようとした結果に過ぎない。

心理的な効果は副産物なのである、と。

そしてその投石器は解体して、梱包して車輪で運ぶ。

それを護衛するのは騎兵がメインであった。

つまりは、移動も攻撃も、山林に弱い。

そこに気づいたパルス将軍は、山脈の外側の都市を放棄し、全住民を避難させた。

周辺地域の将軍たちからは愚行と罵られた。

皇帝は何も言わなかった。


地図と、その上の部隊の配置を見せながら、アジャイリアの指揮官に告げる。

「奴らは絶対にこの峠の砦を通る。

ここで迎え撃つ!」


放棄された都市を襲撃したナールハヤ軍は、無人の街で殺戮ができない腹いせに、ご丁寧に建物を数週間かけて全部壊してから次の街に進撃するという非効率な侵攻を辿った。


ようやくナールハヤ軍が峠に侵攻してきた時には、パルス将軍は無敵になっていた。


アジャイリアから第二の援軍が到着したのである。

「これは塹壕ですわ、おほほほほ!」

「こっちは鉄条網と言いますの。

絶対に脇道からすり抜けさせませんわ、おほほほほ」

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