第三十二話「世論調査ですわ、おほほほほ」
帆船の船団の出港前、国内の世論は二分していた。
ウォーターフォーリアを支援してナールハヤと戦うべきという姿勢の、マリア率いる三温党と、ナールハヤに隷属して国をナールハヤの一地方として扱ってもらおうという上白党の主張、それぞれどちらを選ぶかという問題である。
日に日にウォーターフォーリアの戦況が悪化する。
それに連動して三温党の支持率も下がっていく。
国民は「それは理想論であり、現実には無理だ」と思い始めた。
外洋に一縷の望みを賭けて調査船団を派遣した際には、「貴重な戦力を、成果が上がる可能性が低く、帰ってこられるかわからない任務に向かわせた」と批判が殺到した。
ナールハヤが侵攻し始めてからは、マリアには悩ましい数年間であった。
しかし、一気に風向きが変わった。
調査団が戻ってきた。
帆船には未知のテクノロジーの推進力が追加されている。
何より、彼らによってもたらされた「ようかん」と「3分麺」が、口にした裕福ではない港町の一部の人に血糖値で殴りかかる。
放出されたドーパミンの前に、ナールハヤに隷属するなどという考えは粉砕されていた。
港町から謎の食料の噂が広まり、同時に三温党の功績と評価された。
数ヶ月後に、コンテナを積んだ平たい船が、大量の「ようかん」と「3分麺」をもたらした。
さらには、異国と繋がるケーブルが敷かれ、港の近くには巨大な風車が作られ、港町は夜でも暗くなくなってしまった。
彼らが味方になってくれるというのであれば、たとえ騙されていたとしても、夜中に死体を街に投げ込むような連中に服従するよりマシだ、むしろようかんが食べられるなら喜んで騙されよう!
そういう民意が大半になった。
この噂はアジャイリア全土に広がり、上白党の支持率はほぼゼロに近かった。
最も、支持層からも「どうせ国を売ってナールハヤ体制で甘い汁を吸うつもりの連中なんでしょ」くらいに思われていたので当然といえば当然の結果である。
冷静に考えれば、三温党から出馬すれば誰でも当選確実の状況なので、ハルカが出馬する必要はなかった。
ハルカが断り続け、最終手段でヨシチェックに「今だけ婚約破棄キャンセルして欲しい」と匂わせたりして、マリアが折れた。
最終的に、ヤム・アイノードという人物が出馬することになった。
今やハルカと親友とも言える仲になっていた、調査船団を率いていた提督である。
ハルカ自身が拙い覚えたてのアジャイリア語で応援演説をしたことと、これが突貫で敷設された都市間の通信網と、都市に設置された風力発電と受信機で再生されたこともあり、更には事前にようかんが地方都市でも配給されていたことも相俟って、ヤム・アイノードが選挙に圧勝だった。
上白党議員たちは選挙が不正だと訴えた。
「ようかんで国民を買収するのは公職選挙法違反だ!
だいたい、こんな支持率、あるわけがない。
おかしいだろ!」
支持率は99.99%だった。




