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第二十九話「本音を聞きたいのですわ、おほほほほ」

アジャイリア最大の港町と首都の間には大きな山脈がある。

ハルカはこの山が一筋縄ではいかないだろうと予測していた。

実は測量船が沖合で海溝を見つけて、ならばこういう山があるだろうと推測していたのである。

つまり、プレートの沈み込み帯の脇には造山帯がセットでできるというセオリー通りであった。

王都までの峠道はとても荷車が通れるものではないらしい。

「うーむ…。

何をするにしてもまずは道路が必要なのですわ…。

峠道はトンネルで貫通させるべきですわね。

アプリシアで『ドリル一体で掘ったらすぐ枠で固める掘削魔道具』作れないかしら…」


山が多すぎて荷車は使い物にならない。

なのでアジャイリアでは車輪で物を運ぶ文化がない。

道が多少ぬかるんでいても気にしないらしい。

この先魔道荷馬車(馬はいない)が走るには厄介なので、取り急ぎ側溝を作り砂利の層を被せる工事をしよう。


ハルカはアジャイリアの道路整備をマリアに進言しつつ、魔道荷馬車の手配をした。

「そういうわけで、結構な数の魔道荷馬車(馬はいない)が必要になりますわ」

「ちょうどよかった、空母・やらかしだけでは足りないと思って、無理やり補正予算にねじ込んでおいたのがもうすぐ完成する。

それに魔道荷馬車(馬はいない)を載せてそちらへ送ろう」

「…補正予算、ですの?」

「ええ、来月『空母・しくじり』が進水予定ですのよ。

相変わらず艦載機はないので甲板にコンテナを積む用途と兼用前提で、海軍の資料には『コンテナ空母』という意味不明な記載がされていますの。

…頭が痛いですわね」

「ハルカ嬢が寝ぼけて誤発注したおかげで、使い勝手が良いと証明できたのですな…胃が痛い」

「…コンテナ空母…ですのね…。

商船を改造した軽空母なら聞いたことありますけど…。

おほほほほ?」

軽口を叩いているようで空気は重苦しかった。


「ハルカ嬢、危険な場所に向かわせてすまない」

「わたくしは、やりたいことをやっているだけでしてよ?

最終的にアプリシアの国民が豊かにすることは全部わたくしの趣味ですの。

かなたの大陸の問題を解決することも、巡り巡ってアプリシアの国益に繋がりますわ、おほほほほ」

いつになくヨシチェックの表情が暗い。

疫病と最前線で戦う宣言をされたら、いつも通り難なくこなせるだろうとは思っていても、流石に申し訳なさが勝ってしまう。

こんなの貴族の令嬢のやるべき仕事ではない。


「婚約破棄していなければ、こんなことにはならなかったのだろうか」

「…それは違いますわね、目の前に問題があったら解決せずにはいられませんもの、おほほほほ。

ですが殿下が気に病まれるなら、この際聞いておきますわ。

今でも本当に婚約破棄が良いと思っていらっしゃいますの?」

「……できれば、キャンセルしたい」

「…それを聞けて、わたくし胸のつかえが取れましたわ、おほほほほ」


オンラインの会話にマリアが割って入る。

「あのー、ちょっと良いでしょうか?」

「はい、どうぞ」

「実は私の任期があと2ヶ月でして…」

「…任期ですの?」

「うちの国は国民が国王を決める仕組みで、国王の任期は4年でして…」


アジャイリアは王国ではなく、共和国だった。

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