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第二十八話「倫理観狂っていますわ、おほほほほ」

ハルカは絶句していた。

『アジャイリア国王・マリア殿に告ぐ

朕はナールハヤ大帝国の皇帝、スグニ・A・S・A・P・ナールハヤ2世、世界で一番優れた皇帝である。

今なら隷属する権利を大陸金貨5000枚で売ってやる。

断るなら滅ぼす。

聡明な判断を期待する。

追伸:ウォーターフォーリアはまもなく陥落する。

無駄な援軍はやめておけ』


「これが、先日使者が持ってきた書状なのです。」

「……………頭大丈夫なのかしら、この皇帝」

どんなに強大な軍事力を持った大国といえど、外交文書としては狂っている。

ツッコミどころ満載というか、ツッコミどころの結晶体である。


ナールハヤの光景を描いた絵画では、動物の骨や金属を使った弓を使っている兵士が描かれていた。

おそらく木材にする樹木に乏しい草原だから、あまり大きな威力のある弓は作れないだろう。

こういう場合大抵、毒矢を使って殺傷力を補う。

逆にアジャイリアやウォーターフォーリアは温暖湿潤で樹木が豊富で、植物繊維特有のしなりを利用した貫通力の高い弓矢を使っている。

遊牧騎馬民族が馬の扱いに慣れているとはいえ、馬がないわけではないし、火薬もある。

どちらが有利かは先述次第といったところだと思うが、こんな挑発的な書状を書ける自信はどこから湧いてくるのだろうか…。


「おっしゃる通り、多くの周辺国は最初戦術で負けたのです。

騎士の戦に対して、集団奇襲されてひとたまりもなかったようです」

「あー…聞いたことありますわね」

遠い昔の記憶では、襲撃された側は火薬を初めて見たのではなかったか。

今回はアジャイリアは大砲もあるくらいなので状況が違う。

「ですが、ナールハヤが遠くの国との交易で手に入れた兵器を使うようになって、どんどん街が滅ぼされていきました」

…交易で手に入れた兵器?

「すごく遠から大きい石を投げて、街や城を壊すためのものだそうです」

…いわゆる投石器というやつか。

カタパルトかトレビュシェットか、飛距離があるならトレビュシェットの方だろう。

「最初は石とかで攻撃してたようです。

結構被害はあったのですが、ナールハヤを退けた国もありました」

「…ですが、そのうち石ではなく、その…口にするのは憚られるのですが……」

「…察しましたわ。

糞尿や動物の死骸を投げ込むようになったのでしょう?」

「…その通りです。

そのせいで街の中で疫病が流行ったりして、ナールハヤは戦わずに街を壊滅させるようになったのです」

「…籠城戦が膠着した際には使われることもあると聞きますが、常套手段にするのはいかれていますわね…」

「それだけではないのです。

さらにエスカレートして、真夜中に疫病で死んだ動物や人間の死体が民家の屋根を突き破って降ってくるようになったようです。

これはウォーターフォーリアが善戦してくれているおかげで、情報として知ることができたのですが、襲われた街から逃げてきた者は全身が水痘だらけになっていて、匿った村の者に伝染してしまい、村中が水痘病になってしまったと……」

「……原始的ではありますが生物兵器ですわね……。

天然痘ウィルスみたいなものかしら……。」


ナールハヤは周辺国を滅ぼして膨張していると聞いていたが、実際は自国以外の民族を全滅させ、文明を破壊しているというのが正しいようだ。

戦争の原因や真の目的がはっきりしなければ、どうすべきか判断できないと思っていたが…。

理由がどうこうではなく、問答無用でナールハヤの暴走を止めなくてはならないと覚悟するハルカであった。


「やっぱり、検体入手して、不活化して、それを量産かしらね、おほほほほ?」

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