第二十六話「やることが多すぎますのよ、おほほほほ」
ヨシチェックから飛行魔道具をせがまれているが、そのためには魔道具が完成して終わりではない。
飛ぶまでに加速するための長く平らな直線的な土地を確保して、滑走路を作る必要がある。
定期便が往来するとなれば、航空管制も必要となる。
そのための法律やルールの整備、人材を確保して教育と訓練をしなくてはならない。
アプリシアの空港は、ポインター子爵からぶんどった工業用地のまだ空いているところを使う。
空港アクセスのため時速160キロの魔道馬車(馬はいない)用の鉄轍も新設する計画である。
そしてヨシチェックが操縦したがっているので、揚力の計算やフラップ、スポイラー、ラダーなどの概念を叩き込むeラーニングコンテンツを作り、プライベートの時間は自由にさせずひたすら繰り返し学習させた。
ログイン履歴を監視して公務が終わったのにログインしてこなかったら翌日説教するというパワハラに近いことをやった。
自分から飛びたがっているのだから、文句を言われる筋合いはないはずだ。
空を舐めてはいけない。
空間識失調症を舐めてはいけない。
これで少し黙ってくれればいいのだけれど。
作るのが難航しているモノの話題にハルカは食いつく。
それを利用して会話しつつ、婚約破棄の件について改めて詫びたい、願わくば婚約破棄のキャンセルができないか打診しようと考えていたヨシチェックだったが、「どうしてこうなった?」と頭を抱えつつ、
「でもまぁ、ハルカ嬢が元気そうだからヨシ!」
と結論づけるのであった。
空母・やらかしが帰港してきた。
海底ケーブルを使った通信では、双方の代表同士での会談の結果、すでに2国間での経済協力が決定していた。
アプリシアからは技術支援、現地でのインフラ整備、現地工場の設置などを行い、アジャイリアからは資源の輸出などが決まった。
ついでに、結構な人数の出稼ぎや留学がアプリシア国内に向かってくると思われる。
「アジャイリアにも航空会社作らないとですわね…」
「いえ、そうではないですわ。
数週間忘れていましたけど、ナールハヤの真の目的も重要ですの」
(現地見ないとわかりませんものね。
じっとしていろ、ですって?
無理なこと承知の上で言ってますわよね?
現調なしの本番構築とか発想自体がインシデントでしてよ)
外務大臣が条約調印のために、再度出航しようとするコンテナ満載の空母・やらかしの甲板の上に、外務大臣とともにハルカが立っていた。
「知ってた…」
「知ってましたが、頭が痛いですわ」
「うーん、胃が痛いですな…」




