第十八話「空は飛びたくないですわ、おほほほほ」
発電所視察を終えて実家に帰った二人は、ベニー家の家族と食卓を囲んでいた。
しかし、見た目は貴族の食卓ではない。
一応食堂は世間体から残してはあるが、身内だけの時はベニー家の者は魔改造されたキッチンで食事をしていた。
「…どう見ても『カウンターキッチン』ですわ…」
「この方が使用人の移動距離が減るし、温めた料理が冷める前にいただけますわ、おほほほほ」
ついでに、キッチンに一番近いところでメイドも一緒に食卓を囲んでいて、食べながらおかわりを用意している。
「…メイドというか、『おかん』ですわね…」
少し離れたテーブルで他の使用人も食事をしていた。
「世間体も重要ですけど、そのために非効率なことをして、せっかくの魔力をロスするのは勿体無いのと思いますのよ、おほほほほ」
「…いや…あなた本当に王太子妃候補だったのですよね…?」
「普段は必要以上の贅沢はしない、普段は質素倹約、外に向けては相応の見栄を張る、これが王族のあるべき姿だと思っておりますわ」
「間違ってはいないけれど…」
「SDGsですのよ、おほほほほ」
もぐもぐ中のメイドが口に手を当てて話す。
「逆に、食堂に1500Wの『魔力波を浴びせて加熱する調理器具』を置きましょうか?」
「…それ、業務用ですわよね?
雰囲気ぶち壊しでしてよ!」
「ところでハルカ様」
メイドが口に手を当ててもぐもぐしながら話しかける。
「飲み込んでからではダメなのかしら?」
こくこく、とうなづいて慌てて口の中の物を飲み込む。
「…ごくん。
ところでハルカ様」
「いや、さっきからちゃんと聞いていますわよ?」
(このメイド天然ですわね)
アカリは確信した。
メイドはハルカに訊く。
「『非効率』で思い出したのですが、『ヒコーキ』は作るのはやめたのですか?」
「…ハルカ嬢、このメイドの『非効率』から『飛行機』に話が飛ぶ思考の飛躍は少々理解し難いのですが、私も気になっていましたのよ」
「…あぁ…アレねぇ………」
この国の周辺にはドラゴンやワイバーンといった生命体が生息している。
決して火を吐いたりはしないが、空は彼らの物だった。
空を飛べる魔道具を飛ばすと、その飛ぶ力を維持するためにかなりの速度で移動する必要が出てくる。
そうすると、彼らにぶつかるリスクが高い。
ドラゴン飛び出し注意になる。
そしてハルカは答えた。
「ドラゴンストライクは嫌でしてよ、おほほほほ」




