第十五話「それは昔のことですわ、おほほほほ」
カッ……カッ……カッ……
時計の秒針が音を立てる。
深夜二時。
静まり返った運用ルーム。
インフラ担当の女性社員二人が障害対応にくたびれて放心していた。
ピロン…
チャットのメッセージ受信の音がする。
『西 三六五郎:
こちらでも正常動作を確認できました。
ログも異常ありません』
椅子の上で口を開けて天井を見ていた二人が体を起こし、チャットを打ち込む。
『喜多 あかり:
ご確認ありがとうございました。
念のため後ほどログのご連携いただけますでしょうか?』
『紅 はるか:
動作に問題なし、ログに異常なしとのことですので、本日は体制解除とさせていただきます。
お疲れ様でした』
そのまま無言で二人は休憩室に向かい、自販機でカップ麺を買いお湯を注いだ。
休憩室に匂いが立ち込める。
朝から何も食べていない空腹の体に3分待てというのはもはや拷問である。
その時に食べたカップ麺の味は覚えている。
なぜか美味しいと感じるのに味がしなかったからである。
体が求めている栄養素は味が薄く感じるからだろうか?
そんなことを考えていた。
『お湯を入れて3分待つ食品』を一口啜って、遠い昔の記憶が蘇る。
「…やはり、悪魔ですわ。
寝ないで働く人間のお供ですもの」
「そうですわね、データセンターの休憩室の必需品ですわ、おほほほほ」
それから間もなくして、オン・ザ・クラウドのデータセンターに『3分麺』の自動販売機が置かれるようになり、夜勤者の胃袋を守り、間接的にシステム運用を支えることとなったのであった。




