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異世界転生したらエロ可愛い狐娘になって最強タンクです  作者: 白黒一
第二章. 迷宮都市ダルカナ編
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第六話. 食堂での騒乱(一)

 わたしとシルフィはしっかりとお風呂を堪能した。

 髪をしっかりと乾かして出ると、すでに日は落ちかけて夕食の時間となっていた。


 エリーシャさんに食堂の場所を教えてもらい、二人して宿舎を出る。

 なんでも、クレルモラン修道院では男性と女性が別々の宿舎で生活しており、もう片方に行き来することは原則としてない。つまり、生活の空間は男女で隔てられているが、唯一食事だけは共同のものを使っているらしい。


 それが修道院の敷地内にある、聖フェリクス食堂だった。

 まるでキリスト系学校のチャペルのように離れ屋として設えられた建物は、入ってみれば広い天井にステンドグラスが掲げられた、聖堂を思わせる荘厳な空間だった。


 テーブル数は多く、かるく百人単位で収容できそうな容積を誇っている。

 食事時であるためか、かなりの人数で賑わっており、まるでひっくり返されたオモチャ箱のような様相だ。

 学生食堂に犇めく高校生の群れのごとく、取り留めのない声の束が、雨後のタケノコのごとく周囲から飛び出しては、喧しくさんざめいていた。


「おやおや、これは可愛らしいお嬢ちゃんだ。見ない顔だねぇ。この食堂を使うのは初めてかい?」

 配膳所らしき場所に行くと、コックと思しき白衣を着こんだ人物に声をかけられた。


 わたしは視線を下方に向ける。

 そのコックらしき人物は、子供程度の背丈しかなかった。

 とはいえ、立派な髭を蓄えており、しっかりと成人男性の顔立ちである。エルフのエリーシャさんと比べれば、耳は人間と同じくらい小さいが、先端が少し尖っていた。


(ドワーフ……ううん、これは……)

 わたしはふと閃いた可能性に、質問を投げかける。

「もしかして……ホビット、ですか?」


「うん? そりゃ見りゃ判るだろ。俺は、この厨房でコックをやっているピーターってもんだ。奥にいるのはトマズとブルーノだ」

 背後の厨房を指すと、向こうには同じく調理服を着て働いている人物が二名いた。


 ――いや、『人物』と言っていいのだろうか。

 二人ともシルエットがホモ・サピエンスのそれじゃない。

 方や、二足歩行している猫のような生き物で、もう片方は、緑色の肌を持つ醜男だった。


(あれは……ケット・シーとホブゴブリン……かな)

 ファンタジー世界の厨房風景に感心しつつ、わたしはホビットの男に向き直った。


「あ……はい、どうも。わたしたち、今日この修道院にやってきた者です」

 すると、ホビットのコック――ピーターさんは快く説明してくれた。


「そうかい。それじゃこの食堂について説明するぜ。この食堂は朝から夜まで開いている。修道院に在籍しているのなら自由に使ってくれていい。ただし、食事を出すのは朝、昼、夕の決まった時間だけだ。食事はこっちで配膳するから、受け取って好きなテーブルで食べてくれればいい」


「はい、わかりました」

 わたしは頷いて、配膳されたトレイを受け取る。


 空いている席をさがして、シルフィと二人、周囲に視線を巡らせた。

 そして、視界の一角に注意を向ける。

 そこには見知った顔があったのだった。

 丁度の彼らの前の席が空いていたので、そちらへ移動する。、


「こんばんは。えーと、ゲルトルートさんとマクシミリアンさん」

「こんばんは……」

 わたしに続いて、シルフィもおずおずと挨拶をする。


 わたしたちが声をかけると、二人は顔を上げてわたしたちに気付く。

 そこにいたのは、サイネリアさんの副官である騎士のゲルトルートさんとマクシミリアンさんの二人だった。


「ああ、テイルとシルフィ……だっけ」

 精悍な神殿騎士こと、ゲルトルートさんが思い出したように応じた。

「お二人とも、こんばんは」

 実直そうな神殿騎士のマクシミリアンさんが恭しく挨拶をする。


「――ここ、座ってもいいですか?」

「ああ、いいぜ」

 わたしが尋ねると、ゲルトルートさんが快く頷いた。


 断りをいれてから、二人の対面に座る。

 サイネリアさんとは違い、ゲルトルートさんは非常に砕けた態度で接してきた。

 まあ、二人の方がわたしたちよりも明らかに年上であるのだし、ある意味でこれが自然な形だ。

 ファクトの村で出会った彼らであるが、村を出発してすぐにわたしたちと別行動になったのだった。

 それがまさか――こんなところですぐに再会できるとは思わなかったが。


「俺たちはついさっきここに到着したところさ。兵士たちを『セフィラの盾』の別支部に帰していたんでね」

 ゲルトルートさんが別行動の理由について説明してくれた。


 それに対して、わたしが質問する。

「別支部って……、『セフィラの盾』はここ以外にも拠点があるのですか?」

「ええ、ありますよ」

 それに答えたのはマクシミリアンさんだった。


「一か所に戦力を集中させていては、有事の際に即座に動けませんからね。それに『セフィラの盾』は国際連合組織――色んな国の思惑が複雑に絡み合って成り立っています。西方大陸の加盟国一国に対して、だいたい一支部が存在するような形ですね」


 マクシミリアンさんの丁寧な説明に、わたしは頷いた。

 二人とも非常に気さくで話しやすい感じだ。

 考えてみれば、こうして彼らとゆっくり話す機会なんてなかった。


 改めてよく見れば――二人とも、年齢はおそらく二十代前半から半ばくらいだろう。

 ゲルトルートさんは彫りの深い顔立ちの男で、まるでスポーツ選手のように鍛え上げられた肉体をしている。その辺は流石にプロの軍人だけあった。

 比較して、マクシミリアンさんはハンサムというほどではないが感じのいい顔つきをしており、品の良さと人柄の良さが滲み出ている。

 多少童顔ではあるが、こちらも騎士だけあって、すらりと引き締まった体つきをしており、体格でいえばゲルトルートさんといい勝負だった。


「そっちはどうだ? ここにはいつ到着したんだ?」

 ゲルトルートさんに水を向けられ、わたしは応えた。

「わたしたちはお昼くらいにここに到着しました。グレイズ総帥に挨拶して、宿舎を紹介してもらったところです」

「そうか、総帥閣下に会われたのか」

 そこで言葉を一度切る。


「どうだ、ここの修道院は。やっていけそうか?」

「まだなんとも――分からないことも多いですし、正直、お客様って感じで恐縮してばかりです」


「そうか……まあ、俺たちでよければ力になるぜ」

「サイネリア隊長だけでなく、我々をも頼って頂ければと思います」

 ゲルトルートさんに続き、マクシミリアンさんにも気を遣われる。


 ――よかった、いい人たちだ。

 考えてみれば、あのサイネリアさんの副官をやっているぐらいだから、二人とも気のよさそうな感じではある。

 それまで腹の底に閊えていた緊張がようやく霧散してくれた。


「ありがとうございます」

 わたしは多謝の気持ちを言葉に乗せた。


 そうして、しばし、食事を交えながら会話が弾む。


 配膳された食事は美味だった。

 修道院の食事だけあって清貧を旨とする採食料理かといえばそうではなく、しっかりとスタミナが付きそうな、食べ応えのある食事だった。その上で、栄養バランスも考えているのか、食べていて気分のよい味だった。

 考えてみれば、ここは修道院であると同時に『セフィラの盾』の本部――いうなれば、軍事施設であるのだから、そこで提供される食事が貧しいはずがない。


 最初はとなりで緊張していたシルフィも、幾分か気が楽な様子になっていた。

 そうしてわたしたちはしばし歓談を楽しんだ。


「そちらは明日からの予定はどうなっていますか?」

 マクシミリアンさんにそう尋ねられるが、わたしは首を横に振った。

 記憶を取り戻すために『セフィラの盾』に協力することになったが、依然としてグレイズ総帥からは何の指示も貰っていないのだ。


「まだ何も……。グレイズ総統から、ゆっくりしていいって言われました。

 ――あ、でもわたしたちに護衛の騎士を紹介してくれるとは言っていました。『クリス』って名前の騎士なんですけど」


 その名前を口に出すと、二人ともものすごく微妙な表情をした。

 まるで砂糖と塩を間違えて作ったケーキを食べたような顔をしている。


 ゲルトルートさんとマクシミリアンさんは互いに顔を見合わせ、

「クリスって……やっぱりあいつだよな……」

「おそらく……この修道院には、他にその名前に該当する人物はいませんし」

「なんでまた総帥はそんな人選を……」

 ヒソヒソとして声を交わす。


「あの……クリスさんって、どんな人なんですか?」

 なんか不安になってきたわたしは尋ねた。


 すると、ゲルトルートさんとマクシミリアンさんの二人は、まったくの異口同音に、


「変人だ」

「変人ですね」


 と、見事なまでに言い切った。


「とにかく、変わり者で有名なんだよ。この修道院でも、アイツに進んで関わろうなんてモノ好きはいないんじゃないか」

「ええ……ただ、能力自体は並外れています。十二歳の時には聖騎士(パラディン)の称号を得ていたと聞いていますし。西方大陸じゃ史上最年少の快挙だそうです」

「へえ……」


 わたしのいた世界でいう処の、十歳で大学とかそんな感じだろうか。

 そう考えると、実はものすごい人なんじゃないだろうか――


 それからも、ゲルトルートさんたちは、そのクリスって人の武勇伝というか、逸話を色々と教えてくれた。

 しかしそれらを聞くごとに、そのクリスという人の人格が意味不明なものとなっていく。それほどまでに、彼らの語る話はぶっ飛んだものばかりだった。


 話はなおも続く。

「西方大陸の北部に、キシュワードって国があるんだが、なんでもそこの王族らしい」

「王族!?」

 わたしは目を丸くする。

「そ、そんな人が、騎士をやっているんですか?」

 シルフィも驚いているようだった。


「変わっているだろ。もっとも、王族と言っても王位継承権のレースからは外れて久しいって聞いてはいるけどな」

「キシュワードの王宮でも完全に腫物扱いで、殆ど追放の形で『セフィラの盾』にやってきたみたいです。グレイズ総帥に拾われてからは、わりと重宝されているみたいですけどね」


 そうして、しばし会話が弾んだ時だった。


「――おいおい、第十七騎士隊のボンクラどもが女連れで飯食ってやがるぜ」

 その嫌味な響きの声は、突如横手からかかった。

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