第28話 8/4 とある特装隊の独白
SIDE:特殊装備戦闘隊 一般兵
俺は特殊装備戦闘隊、通称特装隊の一般兵だ。特装隊に入ってかれこれ5年は経つ。
特捜隊の仕事は対モンスター兵器を使用して、ダンジョン内のモンスターを間引いて氾濫を起こさせないことだ。
対モンスター兵器はここ数年で作成された兵器だ。使用者の好みによって剣や槍などの近接武器、弓や銃などの遠距離武器など様々な形状が作られている。安全性を取って遠距離武器を使用する者が多い。この兵器によって、高レベル探索者以外でもモンスターを倒すことができるようになった。魔石を使用することで高火力で、誰でも使用できる汎用性を実現した。構想自体は昔からあったみたいだが実現するには大きな壁があった。
それは使用する魔石と同程度のモンスターは一度に倒すことができないことだ。
例えばA級の魔石を使用すると、B級・C級のモンスターは倒せるが、A級は傷つける程度で倒しきることはできない。A級モンスターを倒すためにはA級魔石が複数必要、しかも倒してもA級魔石が一つしか手に入らない。つまり対モンスター兵器を使用して相手を倒しても基本的に赤字になるというわけだ。だからこそ対モンスター兵器を使用せずにモンスターを倒せる探索者が必要になってくる。
探索者とそれ以外を区別する方法は、モンスターを倒して成長出来るかどうかだ。研究者の話ではモンスターを倒したときの経験値を吸収する能力のあるなしらしい。ただ数値化されているわけでもないため、『なんとなく』と言うのが正解らしい。このように『らしい』がつきまくるため信憑性はない。
特装隊でも近接武器を使う者には探索者の才能が開花する事が多い。敵を倒したときの距離が近いと経験値とやらが手に入るのではないか?というのは俺の持論だ。怖くて近づきたくも無いから検証はしていない。
今や魔石は電気・ガス・ガソリンといったインフラに必要な物資となっている。魔石式小型発電機や魔石式自動車など次々に開発が進んでいる。
そのため兵器に魔石を使用することは非効率とされてきた。
12年前に発見された『減らずのC倉庫』から魔石を大量に手に入れられることが分かるまでは。
あのアーティファクトのおかげでインフラ維持に必要な魔石は十分手に入る。それ以上に魔石を使っての実験がいくらでもできることで、対モンスター兵器の開発が一気に進んだというわけだ。
現時点ではまだ同レベルモンスターを倒すのに魔石が5つは必要になるが、ゆくゆくは一対一、さらに一個の魔石で同レベルモンスターを複数倒せるように日々開発が進められているという。
そんなある日、特装隊に大増員の指令が出た。
今まで2万人だった隊員を10万にまで増やすという。一気に五倍だそうだ。
燈九総理肝いりの案件らしく、対モンスター装備も大量に生産するとのこと。
今まで大半の隊員を自国のダンジョンの間引きに充て、一部を被害の大きい外国氾濫地域に派遣していたが、今後は大半を外国派遣にするとのことだ。
主に追加される8万人分が外国派遣の人員とのこと。外国はもろ手を挙げて歓迎することだろう。
半年前の阿武前総理は、
『今後は『減らずのC倉庫』と称される『C倉庫』ですが、山本氏は魔石の補充も拒否されました。今ある分で最後になります。国内インフラに必要な分を確保する必要があるため、特殊装備戦闘隊への魔石の提供は減らしていくことになります。』
と言っていたが、この発言の後すぐに政権交代したから魔石が減ることはなかった。
今の燈九総理は『減らずのC倉庫』に鑑定職人を追加派遣して魔石の供給を増やすと言っていた。実際に対モンスター兵器は増産されているし、魔石も潤沢だ。
あとは補充要員次第か。
特装隊に必要な能力として身体機能以外に目があげられる。これは視力という意味ではない。敵モンスターのランクを把握する目だ。探索者の中にはある程度相手モンスターのランクが分かる能力があるというが、特捜隊にそのような能力者はほとんどいない。だから敵のモンスターのランクを自分で判断しなければならない。
なぜなら対モンスター兵器を使用する魔石が消耗品だからだ。B級モンスターに対してC級魔石を使っても全く効果はない。かといってS級魔石を使用するのはオーバーキルだ。A級魔石で確実に倒すか、B級魔石を5個使用して倒すか、リソース管理が必要になってくる。
これを叩き込まれるまで1年はかかったからな。使い物になるまでしばらくは研修三昧になることだろう。
そう考えていたが、まさか既存の隊員が海外派遣されることになるとは思わなかった。
そして外国語を習わなくてはいけなくなるとは思いもしなかった。
外国に行く前に駅前に留学するなんて想像もしなかった。




