第21話 2/15 死んでないからいいじゃない。
ちょっとは実力わかったかな?どうも山本です。
うちの門を壊したバカを血の海に沈めた後、15分くらいで救急車が、30分くらいしてから警察がやってきた。なんで警察署も消防署も同じくらいの場所なのに、やってくるのにこんなに差がでてんだ?
バカは救急車に乗せられて搬送されていった。テレビカメラが映しているけどこれ生中継?とりあえず救急車に手を振っておこう。ばいばーい。
んで、問題は警察の連中だ。警察の一言目が、
「山本将太さんですね。傷害の容疑がかかっているので署までご同行願います。」
ときたもんだ。
「あいつがうちの門を壊して敷地に勝手に入ってきたから排除しただけです。あいつが原因ですよ。」
「どうやらあの搬送された人は危険物を持っていなかったようです。なのにあそこまで痛めつける必要はありましたか?」
「いや、危険物を持っているか判断してから対応なんかできないでしょ。専守防衛ってやつです。正当防衛ですね。」
「明らかに過剰防衛でしょう。とにかく署まで一度来てください。そこでお話は伺います。」
と、話は平行線。
「これはあれですか?よくある任意同行とかいうやつです?断っても構わない奴。ドラマでしか見たことないから詳しくわからないんだけど。」
「まあそうとらえていただいて構いません。その場合令状を取ってから再度お邪魔することになりますが、よろしいですか?」
にやにやしながらそう話してくる。なんか嫌味な奴だな。なんで被害者側がこんな扱い受けなくちゃいけないんだ?
「なんかあんた怪しいな。本当に警察?またヨウツーバーとかじゃないの?」
「本物ですよ。警察手帳もあります。どうぞ確認してください。」
といって手帳を見せてくる。ふーん、〇〇警察署の気通 貫一ねぇ。
「そもそも警察手帳とか見たことないから本物かわかんないわ。」
「善良な市民ならそうでしょうねぇ。」
「善良な市民で被害者ですがね。」
本当に嫌味な奴だな。さっきのバカのせいでまだイライラしているってのに。
警察の応援なのかパトカーがさらに追加でやってきた。なのに現場検証もせず気通の指示で警察官が俺を取り囲む。
「おいおい、だからなんで被害者の俺を取り囲むんだ?俺は門を壊されて不法侵入された被害者なんだぞ。」
「ですから、とりあえず一度署のほうにですね…」
「だーかーらー!あいつが先に手を出してきたんだろうが!あいつが手を出さなければ俺だって何もしなかったんだよ!あいつが原因で俺は被害者!わかんねーかなー!?」
先に手を出してきてなんで対応した俺がつかまりそうなんだか。過剰防衛?生きてるだけましだろ。殺されたくなければ家族に手を出すなって忠告したのにな。
めんどくさい。まあとりあえずいったん警察署に行くか。家の守りはテイムモンスターに任せよう。んで戻ってきたら家の門を修理しよう。俺直せるかな。
で警察署に到着。事情聴取かと思いきやなぜか留置場で一泊することに。ドラマで見るカツ丼は出ないとのこと。がっかり。
「さて、なんで昨日は何も尋ねもされず一泊過ごすことになったんですかね?だったらわざわざ『同行お願いします』とか言わなくてもよかったんじゃないですかね?」
「いや、私もよくわからないのですよ。暴れて興奮しているからとりあえず留置場に入れて一晩おとなしくさせろと上からの指示でして。…改めて、今回事情を聴くことになった織田です。いくつかお話を聞かせてください。」
イライラしながら事情聴取にきた警察の人に疑問をぶつけると、相手もやや戸惑った様子。任意同行で来たんだから昨日の時点で暴れていないことはわかっているだろうに。なんかもやもやする。この人に当たってもしょうがないか。
「とりあえず昨日の警察官の気通って奴にも言ったんだが、俺は被害者であっちが加害者なわけ。わかる?」
「確かに、器物損壊と不法侵入に関してあなたは被害者だが、過剰防衛についてはあなたが加害者になる可能性があることはわかりますか?」
「あっちが手を出さなければ、俺は殴ることはなかった。俺が殴る原因を作ったあいつが悪い。俺は悪くない。もしも俺が悪いとなるなら法がおかしい。」
暴論だが断言してやる。
「法がおかしいといわれても、ここは法治国家ですから。法は守っていただかないと。」
「法を守っていても自分の身を守れないじゃないですか。門を壊されて不法侵入されたのに警察はいなかった。どうやって守ればよかったんですか?」
「その時は我々警察を呼んでいただければ…」
「その警察が来たのは30分くらい経ってからですね。30分間どうすればよかったんですか?今度は家を壊されるのを黙ってみていろと?家族に危害が加えられそうになったのを黙ってみていろと?法を守って死ねというんですか?」
「…到着が遅れたことは誠に申し訳ありません。その点については謝罪いたします。ですがそれは極論です。今回は相手に抵抗の意思がないのにも関わらず、顔面を道路に打ちつけ続けた。ここまでしなくても抑えることはできたはずじゃないですか?」
「そんなの知りませんよ。犯罪者を取り押さえるのに手加減なんかしてられません。」
嘘です。めっちゃ手加減してました。何なら玄関から殴って飛ばしたときも全力で手加減しないと一瞬で頭がつぶれたトマトになっているところでした。一歩踏み込んだ瞬間不味いと思いそこから全力で手加減した自分を褒めたい。死んでないからいいじゃない。
「結局、お互いに話しは平行線なんですよ。俺はあいつが全面的に悪いと思っている。あんたらは俺を悪者にしたがっている。違いますか?」
「それは違います。悪者にしたがっているわけではありません。我々警察は法の番人です。法に則って対応しているだけです。」
硬いな~。でもこの人まじめだな。ごまかしがない。昨日のにやけづらよりは受け答えがしっかりしている。気通は詳しい説明なしに『署に来て』しか言わなかったからな。
「では法に則って、任意同行の俺はもう帰ります。もういいですよね?状況の説明、俺の主張は伝えました。」
「…わかりました。ご協力ありがとうございました。」
ふー何とか終わった。力で解決できれば楽なんだけど、こんな風に理屈で来られるとしんどい。別にだれかれ構わず敵対したいわけではないし。
取調室から出て織田さんと一緒に警察署内を歩いて出ていく。免許更新の時にしか来ないからちょっと新鮮な気持ちだ。
「そういえば織田さんは警官だけど探索者ですよね?」
「ええ、そうですが突然どうしました?」
「俺のこと警戒とかしないのかなーと思って。いくら世間的にC級とはいえB級殴り飛ばした実力はあるじゃないですか。実際ここ(警察署)に来るときは警官に取り囲まれましたし。」
実際探索者じゃない警官が囲んだところでせいぜいB級探索者までしか取り押さえられないだろうが。
「ああ、何となくですが山本さんは不用意に暴れないだろうと思いまして。勘ですね。」
「探索者の勘ですか。」
意外とバカにできないからな。探索者の勘は。モンスターを倒して成長している力の中には第六感だの魔法の力だのが存在すると考えられている。破壊系の魔法や治癒系の能力、錬金や鍛冶、浄化や結界や鑑定など超常の力がそれにあたる。数字でステータス化する研究とかないものかな。
「それに山本さんはなんか祖父に似ているんですよ。祖父はS級探索者なのですが、達観しているというか、とんでもない力を持っているのに日常に溶け込んでいるというか…理性のある化け物みたいな感じです。」
「それも勘ですか?」
「ええ、勘です。でも私の勘はなかなか当たるんですよ。祖父にもそれは褒められましたし。」
笑って話す織田さん。多分俺の力を何となく感じ取っているのだろう。それでも普通に接している。しかも自然体でだ。なかなかできることじゃない。織田さん実はすごい人かもしれないな。
そんなことを考えながら歩いているとテイムモンスターの竜さんから連絡が届く。
「ギャオ、ギャオ(陛下今よろしいでしょうか?)」
「(大丈夫だけどなんかあった?)」
念話で返答する。家で待機しているはずの竜さんからの連絡だ。話し方から大至急ではなさそうだが、何かあったに違いない。
「ギャ、ギャオギャ(昨日の不埒ものと思しき輩が家の前で騒いでおります。すぐに何かをするわけではなさそうですが…)」
昨日の今日でまたやってきたのか、あいつは。念入りに顔打ちつけたのに一日で来るとは…ポーションとか治癒能力とかで治したのか?ちょっと聞いてみるか。
「織田さんちょっと聞きたいことがありまして。」
「なんでしょうか?」
「昨日の器物破損と不法侵入をしてきたやつのことなんですが。あいつ何者なんです?ヨウツーバーみたいですがよく知らなくって。」
「うーん…山本さんは被害者でもあるから教えますが、本名は平和 立直、ヨウツーブでは『リーピン』と名乗っています。まあ一種の迷惑系ってやつでね、元B級探索者なので力もある程度あるから突撃取材と称して相手を挑発し、手を出させて私人逮捕をするような流れを繰り返しているんですよ。」
「控えめに言ってクソじゃないですか。」
「あはは、否定はしません。」
肯定しているじゃないですかー。まあいいやスマホで調べてみよう…ん?配信中?
「これ、配信中って出ているんですが、生放送ってやつですよね?」
「これは…山本さんの家ですか!?なんで!?昨日大けがしていたはずなのに?」
「多分ポーションで治したか治癒能力者が手伝ったかですね。しかしこいつ学ばないな。」
「何落ち着いているんですか!?あなたの家の前ですよ?大丈夫なんですか!?」
俺は空間転移でいつでも家に戻れるからちょっとだけ余裕がある。それを知らないのにこの織田って人は本気で心配してくれているみたいだ。
「大丈夫ですよ。こわ~い番犬を配置しましたから。」
そう言って配信を見ていると、リーピンとやらが画面の方を見て語りだした。
『昨日は不意を突かれて殴られたところに、卑怯にも顔をつぶされそうになったが、俺は復活した!これから俺は再び山本の家に突撃するぜ!俺は暴力には屈しないからな!』
「こいつ何言ってんですかね?こいつの頭の中はお花畑なんですかね?」
あきれて織田さんに話しを振ってしまった。
「私の方からは何とも…」
目をそらすな。逃げるな。
『今日こそは山本の親に直撃取材を敢行するぜ!山本はしばらく警察の厄介になるって話だからな。今がチャンスだ!』
「しばらく厄介になるんですか?」
「いや、そんな話しは聞いていないが…」
織田さんも困惑している。どういうことだ?
『山本の親には土下座謝罪をしてもらうぜ!公金横領だけじゃなく傷害もついた犯罪者の親だ!みんな正義の力を見ていてくれよな!』
ふーん、そっかー。そこまでしようとするかー。
「俺の母は関係ないですよね。警察は今すぐ母を守れますか?母に被害が出る前にあいつを抑えることができますか?」
できないとわかりつつ、織田さんに聞いてみる。
「…申し訳ない。警察はまだ起きていないことに対しては何もすることができない。」
「今あいつは母に害をなすことを宣言しています。それでもですか?」
「それでも…だ…。」
「母に何かあってからじゃないと警察は、法は守らないということですね。」
「本当に…すまない…」
めちゃくちゃ苦しそうに返事をしている。織田さんいい人だね。
「さて、それじゃあ何とかしましょうか。」
明るい声でそう話す。とはいえやることは血なまぐさくなるが、そんなことはおくびにも出さず織田さんに宣言する。
「これからちょっとあいつの四肢飛ばしますんで、救急車呼んどいてください。」
「えっ、ああ、わかっ…四肢?まてまて飛ばすってなにを!?」
「詳しくはこいつの配信見ていればわかりますよ。それじゃ。」
そう言って空間転移で移動する。転移先は自宅玄関の前。関係者以外で初めて空間転移を人前で披露することになるな。
さーて、リーピンよ。獣は痛みで学習する。お前のように痛みで学習できないやつなら、動けなくするしかないよな。
処置は一瞬だ。待ってろよ。
捕まったことがないので取り調べはフィクションです。実際と異なることをご了承下さい。(予防線)




