第19話 2/14 引き金
SIDE:リーピン 本名:平和 立直 職業:ヨウツーバー
とうとう山本の実家突撃配信の決行日がやってきた。
今やテレビもネットも山本叩きと燈九 判図のダンジョンボス撃破であふれている。
俺の『リーピンチャンネル ジャスティス執行!』も早いうちから山本をネタにしたおかげで一気に登録者が増えた。
なんせ証人喚問の次の日には名前を出して配信したし、山本自身が記者会見で派手に自爆したからな。『殺す』とかできもしないことを言っちゃってバカとしかいえねぇ。
先日の暴露配信『山本将太の真実を暴く!』でもB級探索者としての立場・見解を並べているだけでどんどん『良いね』がついていった。『悪いね』が二けたしかつかなかったってすごくね?
ただ二番煎じの配信やまとめサイトが出てきて数字が伸びなくなってきている。俺より上の立場の探索者や人気配信者が出てきたらそちらに流れるからな。こればっかりはしょうがない。
だからこその突撃だ。人気配信者じゃできないようなことをやることで視聴者ゲット間違いなし。
しかも今回はどれだけ叩いても文句言われることもない国民の敵ときたもんだ。事前に情報を教えてくれた編集者経由で野党の議員にも連絡が言っているらしく、警察も出動が遅れるとのこと。よくよく山本は嫌われたもんだねぇ(笑)。
山本の家の前には大量のカメラが並んでいる。テレビ局勢ぞろいだ。スマホで確認したところ昼のニュースで生中継されるようだな。これはチャンスだ。生中継に正義の突撃をしてお茶の間にアピールできるぞ。
「おい、準備はできているか?」
「あ、リーピンさん大丈夫です。配信枠も取ってあります。いつでもいけますよ!」
「報道の連中を出し抜いてやりましょう!」
助手の二人もテンション上がっているな。テレビの連中を差し置いて突撃取材、しかも今までだんまり決め込んでいる母親に直接取材だ。
万が一本人がいたら儲けものだ。C級探索者なんか一瞬で制圧できる。私人逮捕の瞬間が取れれば最高だ。俺もヒーローになっちまうな。
「リーピンさん国営放送が生中継始めたみたいですよ!」
「よっしゃ!行くぞ!」
勢い込んで飛び出していく。
「はい!リーピンです!今緊急で配信しています!ここは〇〇県〇〇市の住宅街!ここに山本将太の家があるということで突撃したいと思います!」
普通の一軒家だな。塀に門扉とチャイムがある。よし、まずはチャイム連打だ。
「山本さーん!いるんでしょー!出てきてくださいよー!ご家族でもいいんですよー!」
まあ出てくるわけないよな。門扉は…鍵かかってんのか?開かないな。
「お話し聞かせてくださいよー!国民の税金盗んだんでしょー!?説明してくださいよー!」
門扉を揺さぶるが開かない。どうやって開けるんだこれ。
「リーピンさん門に取っ手あるじゃないですか。それ回すんじゃないですか?」
小声で助手がアドバイスしてくる。回す?ああ、引くんじゃないのかこれ。
取っ手を回すと『バキッ』と音ともに取っ手が壊れて地面に落ちた。あ、やっちまった。まあ大丈夫だろ。
助手がうまくその瞬間を撮っていないことを祈りつつ玄関に向かう。
「これから山本将太の家に突撃取材を敢行します!ダンジョン詐欺師がいるのか、それとも母親だけなのかわかりませんが皆さんに正義をお届けしたいと… 『ガチャ』 ん?」
カメラに向かって決めポーズをしつつ話しをしていたところ玄関が開いた。
出てきたのは山本だ!やった!これはバズり間違いなし!
「うおーー!いた!山本だ!ちょっと聞き」
ゴッ!ガシャーン!ガラガラ!ドスン!
顔が痛い。背中が痛い。何が起きた!?
思わず顔を抑えると鼻と口から血が出ている。なんだ、これ?なんで?
背中に硬い感触。道路?俺は倒れているのか?
立とうとして力がなかなか入らないことに気が付いた。何とか道路に手をついて四つん這いになって周りを見渡す。
「山本氏が現れました!山本氏がヨウツーバーと思われる男性を殴りつける様子が確認されました!」
「おい!スタジオにつなげ!生で今すぐにだ!撮れ撮れ!」
「くそ!カメラにぶつかってきやがった!無事なのあるか!?」
「警察呼べ!警察に電話だ!カメラは回し続けろよ!」
どうやら殴られたようだ。B級探索者の俺が!?C級に!?しかも殴られた瞬間が見えていないぞ!?
頭が混乱しているところにドスン!ドスン!と二回音がする。そちらを見ると助手二人が転がっている。また殴られたのか?山本の野郎は…え?玄関前?俺たちと5mは離れているよな?5m殴り飛ばされた?
カメラのフラッシュを浴びながらゆっくりと無表情で山本が近づいてくる。
「てめぇ!こんなことして許されると思ってんのか!訴えてやるからな!」
思わず叫んでしまう。が、山本は止まらない。
「いいよ。訴えようが何しようが。俺は忠告はした。お前は忠告を無視した。それだけだ。」
そう言って俺の横にくるとしゃがみ込み、四つん這いになっている俺の髪をつかむ。
「おいまて、なにを゛っ!」 ガン!
目の前が真っ白になる。道路に顔面をたたきつけられた!
「いてぇ!おいやめ゛!」 ガン!
またたたきつけられる。
「も、やめっ!」 ガン!
「おい!」 ガン!
「がっ!」 ガン!
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
意識が遠のく…




