第17話 2/11 四英雄
SIDE:燈九 判図 S級探索者
俺は今A級ダンジョンに来ている。
普段は資源を回収することがほとんどだ。
ダンジョンボスが徘徊しているが手を出さなければ襲ってこないことはわかっている。
だが、今回はこのダンジョンボスがターゲットだ。
この日のためにママから特殊装備戦闘隊(特装隊)の対モンスター兵器とS級魔石を横流ししてもらっている。
今まで確認できたボスモンスターは10種類。フェンリル。白虎。九尾の狐。化け狸。スレイプニル。斉天大聖。不死鳥。ドラゴン。キリングシャーク。天空鯨。30m級の化け物ぞろいだ。
この中ではスレイプニルが一番のねらい目だ。ほかのやつらは炎や冷気、雷をまとっていたり、武器を振り回していて攻撃範囲が広かったり、空を飛ぶためまともに戦えない。スレイプニルだけは何かをまとっていることはない。攻撃は単純に突進のみだ。
ただスレイプニルの厄介な点はその突進力だ。瞬間移動したようにしか思えないほど一瞬で移動する。これさえ封じれば討伐のチャンスはある。
事前にほかの探索者から情報を仕入れており、今このダンジョンにスレイプニルがいることは確認済みだ。
今回ギルド国士無双のメンバーでも二つ名持ちの精鋭を連れてきた。
市丸 究 二つ名は『ホーリーナイト』
湊 未来 二つ名は『聖女』
木本 六 二つ名は『愛の束縛士(自称)、チェーンマイスター(ギルド名鑑より)』
そしてこの俺燈九 判図二つ名は『シャイニングセイバー』の計4人だ。
まず湊がバフを市丸にかけて耐久力を強化する。そして市丸がタンクとして突進を抑える。そこに木本がデバフのチェーンで相手の行動を封じ、防御力を減少させる。最後に俺が一撃必殺のシャイニングセイバーで首を落としておしまいって段取りだ。
このダンジョンボスは手を出さなければ向こうから攻撃をしかけてくることがない。
準備をしっかりとしてから戦えば十分勝てる相手だ。
慎重に第23階層まで潜ったところでダンジョンボスと遭遇した。
ほかのモンスターをひき殺している。突進力は半端ないな。あと純粋に30mはでかい。
だが今回の対モンスター兵器は普段の装備とは異なり特別性だ。特装隊用の最新鋭装備をママに用意してもらったからな。
「準備はいいか。装備の魔石をS級に変更したな?」
「大丈夫だ。しかしこの盾はすごいな。軽いのに頑丈だ。魔石を入れれば防御範囲まで広くなりやがる。」
「私の杖もすごいよ。今まで以上に回復も補助魔法も使えるの。」
「私の愛も満たされています。何発でもイケますよ。」
なんか木本だけ卑猥なんだが。
「作戦の最終確認もしておこう。まず最初に…」
「私が市丸君に防御バフをかけるのよね。そのあと判図に攻撃のバフをかける。」
「そして挑発して相手を呼び込み、俺の盾で突進を受け止める。」
「そのあと私の愛の鎖で束縛します。そして鎖で相手を打ち据えて弱らせるのです。ああ、なんて背徳的!なんてインモラル!馬を相手にプレイするなんて…興奮いたします!」
「(なんでこいつが精鋭なんだろう)最後に俺があのスレイプニルの首を落とす。よし、大丈夫だな。」
作戦も確認したし、後は映像の録画だけだな。
撮影用ドローンを飛ばして巻き込まれないところに配置。あとはAIが自動で録画をしてくれる。
「よしドローンも飛ばしたし、これであとはあいつの首を落とすだけだ。あ、木本は発言に注意しろよ。ふざけたこと言っていると『ピー』音入れるからな。あと顔にモザイク。」
「そうだぞ、歩く変態。しゃべる猥談。」
「木本君女性とカメラの前ではあまりいやらしいこと言わないでね。」
「ああ、皆さんの言葉のムチが痛い!でも痛みも愛に変えて見せましょう!」
「だからくねくねすんな。全身モザイクにするぞこら。」
あーもうむちゃくちゃだよ。でもこんなのでも精鋭部隊だ。戦闘が始まれば真剣にやるさ。命がかかっているからな。
「スレイプニルの周囲にほかのモンスターは見られないよ。」
「今の位置も草原で見晴らしがいい。足元の草も低くて走りやすいな。」
「周囲に障害物がないから鎖も伸ばし放題です。」
戦場のセッティングもできた。
「みんな仕掛けるぞ!」
「おう!」
「はい!」
「お任せあれ!」
スレイプニルの正面に飛び出す。湊が防御バフを市丸にかけるが…突進してこない!?スレイプニルは上を向いているが…何もないぞ!
「おい!判図どうする!?」
「動かないなら都合がいい!挑発はなしだ!市丸はそのまま突進に備えろ!」
スレイプニルに走りながら市丸に命令する。その横では木本が鎖を伸ばし始める。稲妻のような軌道で鎖が伸びていきスレイプニルに巻き付く。が、スレイプニルは動こうとしない。
「判図さん!届きました!拘束と弱体化全力でイキます!」
「よし!未来!俺にバフを!」
「あと3秒!…今!」
バフがかかり全身に力がみなぎる!剣に組み込まれた魔石から力を引き出す。剣から光の刀身が伸びる!これなら届く!
「これで終わりだーー!」
剣を振りかぶり飛び上がりながら、渾身の力を込めて剣を振り下ろす。目標はスレイプニルの首。光の刀身がスレイプニルの首に当たった瞬間一面が光にあふれる!
目の前が真っ白になって何も見えなくなる。次第に剣の魔石に含まれる魔力が切れて徐々に光が落ち着いていく。
目の前には巨大なクレーターができていた。これ俺がやったのか…?スレイプニルは!?
光にやられていた視力が徐々に戻ってきて周囲を見渡すが、スレイプニルはどこにも見当たらない。
「やった…のか…?」
思わずフラグめいた発言をしてしまう。
「倒したん…だよな?」
「えっと…多分。」
「私の愛の鎖に反応はありません。私たちの愛の勝利です!」
木本が声高に勝利宣言をしているのをぼんやりと他人事のように見ている。
俺が…やったのか?とうとうダンジョンボスを倒したのか…?
「いいいよっっしゃああああああああ!」
喜びがあふれて思わずガッツポーズしてしまう。
「やった!倒した!倒したぞ!」
「おう!俺たち勝った!勝ったんだ!!勝ったぞーーー!」
「よかったよ~。ぐすっ。誰も怪我無くてほんとよかった~!」
「愛です!愛の勝利です!ああ!愛ゆえに愛ありです!」
思わずはしゃぐ俺、大声で叫び続ける市丸、喜びのあまり泣き出す未来、愛愛うるさい木本。
俺たちの力があればボスモンスターでも倒せることが証明されたんだ。
世界の平和は俺たちが守る!なんてな。
ちなみに馬さんは攻撃を受け流したり跳ね返すパッシブ能力があります。攻撃を直撃させる能力がないとダメージが当たりません。理不尽。




