第14話 2/11 最初の通告
SIDE:副総理 合津 万代
午後の会見が始まる。
最初に阿武ちゃんが山本君の正当性を伝えている。どうせ聞きはしないだろうがな。
確かめもせず自分の都合のいいように事実を捻じ曲げた連中。
一年後の氾濫の時にモンスター相手にどう対応するのか見ものだ。
事前にどの程度話すか阿武ちゃんと確認したが、隠すことは何一つなかった。
山本君がダンジョン氾濫を制圧したこと、テイムモンスターを使ってダンジョンの間引きをしていたこと、『C倉庫』に魔石を補充していたことすべてが事実だ。
「以上により山本氏に対する報酬は正当性があるものであると改めて宣言します。」
会見場がざわめく。今までの主張を全く変えずにいるからな。誰かしら疑問に思うことはないのかね。
「また、今回の騒動の発端となる情報の漏洩を行ったことで、一色 緑議員が党から除名されたことも改めてお伝えします。」
こっちはそうでもない。露骨な党の裏切りだからな。当然のように思われているようだ。普段からことが済んでから「ああすればよかった」だの「私ならこうした」など結果論でしか話すことのできない男だ。人柄の悪さが共通で認識されているようだ。
「今回の会見ではこのようなことは些末なことです。国民の皆様にはこれから起こると予想されることについてお伝えいたします。これは非常に重要な情報です。最短で一年後に起こると思われます。自身の命を守ると思ってお聞きください。」
一斉にフラッシュが輝き一瞬目の前が真っ白になる。サングラスほしいなぁ。
これから起こるであろうこと。
ダンジョンの氾濫、『C倉庫』の枯渇に伴うインフラ低下と特殊装備戦闘隊の装備の質の低下。
それに伴う大量の死者・行方不明者と遺族が発生。避難民も十万人規模で発生するだろう。
ついでに言えば国際社会の発言力低下とバカな連中が悪政敷いたと歴史の教科書に載るくらいか。
「昨日連絡をしたところ、山本氏から今まで行ってきたS級及びA級ダンジョンの間引きは行わないことを宣言されました。これにより最短で一年後にはダンジョンの氾濫が起こると予想されます。」
「対象範囲はA級ダンジョンを中心に10km程度、S級ダンジョンは20kmを予想しています。なおこれらは発生直後の予想範囲であり、放置することで徐々に範囲は拡大されるものと思われます。特にS級ダンジョンではダンジョンボスの行動によって、氾濫範囲に誤差が発生することが予想されます。ですので対象範囲に在住する皆様におかれましては、安全が確保されている今のうちに転居など移動をお願いいたします。」
記者たちがざわついていやがる。信じてねぇな。保身のためにこんなこと言うと思ってんのか。こちとらこんな状態でもお前らを救おうと努力してるんだよ。
「また、今後は『減らずのC倉庫』と称される『C倉庫』ですが、山本氏は魔石の補充も拒否されました。今ある分で最後になります。国内インフラに必要な分を確保する必要があるため、特殊装備戦闘隊への魔石の提供は減らしていくことになります。」
「以上で私からの報告を終わりにさせていただきます。それではー」
「ちょっといいかい、阿武ちゃん。」
「合津さん会見の場ですよ。ちゃん付けはちょっと…」
「いいじゃねぇか。もうどうしようもないとこまで来てんだぜ。メンツもへったくれもあるかっての。」
そんな暴論に対して、阿武ちゃんは苦笑いを浮かべながら発言の場を譲ってくれる。すまねぇな。
「あーとりあえず阿武ちゃんが言ったことは事実だ。信じる信じないはあんたら次第ってこと。」
乱暴な物言いに対して記者からヤジが飛ぶが気にしない。
「これから早くて一年でこの国は12年前に逆戻りだ。それもこれもあんたらが原因だ。記者だけじゃないぜ。都合のいいことだけで煽った政治家、事実を確認せず広めたマスコミ、そしてそれらに踊らされてたった一人をたたき続けた国民すべてが原因だ。でもな、原因はあんたらだが俺たちにも責任がある。だからわかっていることを今のうちに話して逃げろって言ってんだ。今の俺達には氾濫を抑えることができないからな。」
「自分たちの責任をおしつけるのか!」
「そうまでして自分たちを守りたいのか!」
「公金横領を正当化するな!」
「責任を取るなら辞職すべきでは!?」
都合のいいことばっか吠えてやがる。俺らの言葉は届かないみたいだな。一年後どうなるか、楽しみ…とは思えねぇよなぁ…。国民はどう動くかねぇ…。
人が死ぬ。しかも大勢だ。避難が進まなければ数万人か。遺体なんか残らないだろう。人生ままならねぇもんだなぁ…。




