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人は痛い思いをしないと学ばないのか  作者: 妖精さん


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12/25

第12話  2/11 記者会見

どうも記者会見を行うことになった山本です。


俺一般人なんだけど。なんでこんなんやることになるんだか。


そんな一般人を取り囲むようにマスコミが集まっている。フラッシュがまぶしい。


朝いきなり記者会見やれとか意味わからん事要求されて、なぜか俺が泊まっていたホテルが勝手に記者会見のセッティングしていた。


昨日の総理との話しでは証人喚問でランキングマッチトーナメントの提案をする予定だったが、ここで宣言したほうが話しが早いかな、と思ったのでしぶしぶ記者会見に参加することになった。


よくよく考えると司会とか参加マスコミとか全部相手方の自由にできるから、俺にとっては不利にしかならない。でも最後に確認だけはしておきたかった。


まだ俺の話しを聞いてくれるのか。話し合いの余地があるのか。


できるだけ人は殺さないと総理と約束した。でもそれは『できるだけ』だ。話し合いが通じなければ体に叩き込まなければならない。いつまでも安全な場所にいると勘違いされても困るしな。


さてどうなることやら。


「定刻となりましたので元C級探索者山本将太の会見を始めます。私は司会を務めさせていただきますダンジョン協会支部所属の老頭 清(ろうとう きよし)と申します。よろしくお願いいたします。」


笑顔でそう発言して会見を進める司会者。初対面の俺に敬称なしか。礼儀とかないんか。わざわざ元C級とか悪意のある言い方しやがって。まあ副支部長の仲間だろうな。


「今回の公金横領に関して会見を開きたいという山本将太たっての希望により、今回この場を設定させていただきました。報道関係の方々にはお礼を申し上げます。」


誰が言ったよ。勝手にセッティングして出ろって言ったのはお前らだろうに。しょうもない発言が続くためあきれてものも言えない。


「今回の公金横領に関してまずは私の方から説明をさせていただきます。」


「おい、ちょっと待て。なに勝手に話し進めてんだ。」


立ち上がり大声で止める。さすがに好き勝手に言われっぱなしは頭にくるのでやめさせる。俺のマイクどこー?


「マイクくれ。マイク。自分のことくらい自分で話すわ。そもそもお前誰だよ。勝手に司会とか言ってしゃしゃり出てくんな。お前らが会見をやってほしいっていうから来てやったんだろうが。事実を捻じ曲げるな。」


「なっ」


司会者が絶句している。俺が好き勝手言われ放題だとでも思ったのか。だとしたら甘いな。


すでに昨日の総理との話し合いの時点で覚悟は決めている。誰であろうが一線越えたら戦争だぞ。その一線を伝える会見にするか。おっマイク来た来た。


「えーどうも、山本将太です。今回の一連の出来事を改めて説明したいと思います。」


「まず12年前にA級・S級ダンジョン合計9か所の氾濫を制圧したのは俺のテイムモンスターです。当時のダンジョン防衛大臣であった阿武総理にそのことを伝えています。また、その後9か所のダンジョン内の間引きもテイムモンスターが行っていました。その報酬として1年あたり1億円をもらっていたことがそもそもの発端です。俺のテイムモンスターは優秀なので12年間一度も氾濫を起こさずモンスターの間引きを行ってきました。それに対する正当な報酬というわけです。つまり不当な横領ではないということです。きちんとした仕事に対する報酬だったというわけです。お判りいただけましたか。」


まあ『目立ちたくないから名前は伏せて』なんて言ったのが原因な気がしないでもないが。どうせ納得はしないんだろうな。


「というかこのくらいしか話すことはないんだ。この会見もう終わりにしない?」


軽い感じで司会に話しを振るが顔真っ赤にして睨みつけるのみで反応なし。どうすんのこれ。あ、深呼吸した。多少は落ち着いたかな。


「はい、ありがとうございます。山本はこのように話しておりますが、皆さん何か質問はございませんでしょうか。」


司会者が俺の話流しているんだが。なんで質疑応答までやるんだ。めんどくさい。


「〇〇新聞の川田です。テイムモンスターが氾濫を制圧したとおっしゃいましたが、C級探索者がモンスターをテイムした事例は確認されていません。最低でもA級探索者でなければテイムできないといわれています。山本氏はC級探索者、いえ元C級探索者であり矛盾が生じています。このことはどのようにお考えになりますか。」


なんで元C級を言い直すんだこいつ。まあいいこれは簡単だ。


「そもそもC級だろうが何だろうが探索者の実力がなければモンスターはなつきません。A級探索者なら必ずモンスターをテイムできるんですか?違うでしょう。探索者が力を見せないとダメなんですよ。俺は実力はあった、階級は上げていなかった。ただそれだけです。はい次の人~。」


あっさりと答える。質問したやつがさらに何か話そうとしているが、次の人に回してもらおう。あ、質問は一人一回にしてね。


「〇×放送の山田です。9つのダンジョンでモンスターの間引きをしていたということですが、ドロップアイテムや魔石はどうしていたのですか?それらがあれば討伐の証明になったかと思いますが。」


あー、これはなー。ドロップアイテムは押し入れダンジョンの倉庫に全部しまっているんだよな。押し入れダンジョンは秘密にしたいから濁すとして、魔石は確か指定された倉庫に入れていたはず。


「えーと、ドロップアイテムは個人で消費しています。装備やテイムモンスターの進化素材とかいろいろ要求されますからね。魔石は指定された倉庫に入れてますよ。調べればわかるはずです。たしか『C倉庫』だったかな。」


一瞬記者どもの間からどよめきが起きる。なんかあった?


「××社の村田です。先ほど『C倉庫』とおっしゃいましたが、それはあのアーティファクト『減らずのC倉庫』のことですか。」


「アーティファクトとか『減らずのC倉庫』とかよくわからないんですが、総理から指定されたのは『C倉庫』だったと思いますよ。」


もともとA倉庫がドロップアイテム、B倉庫が魔石用で用意されていたんだ。一般探索者全員が回収してきて、きちんと鑑定したのちに集めていた倉庫だったから、俺のテイムモンスターがとってきた大量の魔石を入れると鑑定済みがどれかわからなくなってしまう。だからC倉庫にとりあえず魔石は全部入れておいて、後で鑑定する人がそこから回収するって形になった。


最近では魔石で倉庫がいっぱいになったから減った分だけ入れていたみたいなんだが、それがなんか都市伝説みたいになってるんだな。


「週刊〇△の南田です。私どもの方に『山本さんが女性に性的暴行を働いている』という情報が寄せられています。被害にあわれた女性が匿名を条件に連絡してきております。これに関して何か弁明はありますか。」


は?なにそれマジで知らないんだが。


「いや知らんよ。誰?そんなこと言ってるの。嘘ついてんだろその女。」


「被害女性が決死の思いで報告してきたことに対してそれはあんまりではないですか!」


あれ?マジで話通じないか?こいつ。


「だから、その女が性的暴行を受けたって嘘ついてるんでしょ。なんでそんなすぐわかる嘘つくんだか。あ、そうか。金持ってるからだまし取ろうとしているわけだ。どうせ証拠もなく被害者ぶってお金たかろうとしているんだろう。」


お金があるとわかると変な奴らがわいて出るな。こちとら45年間彼女もいないDTじゃ。ほっとけ!


「被害女性に対してなんて言い方だ!女性に対するセカンドレイプじゃないか!きちんと説明する責任があるだろう!」


すげーなこいつ。女性の言い分だけで判断して俺を責めているのか。そして俺の言い分は全く聞かないと。ずいぶん都合のいい頭しているな。


「俺が加害者だという証拠があるんですか?見せてくださいよ。しょ、う、こ(はぁと)。」


イラついたのでちょっと煽って返事してみる。おーすごいヒステリックに早口で話している。何言ってるか聞き取れねー。聞く気もないけど。しかし司会は何もしないな。こういうやつは司会が諫めろよ。


「はーい。証拠もなく人のこと追及する人はほおっておいて次の人ー」


「News■■の幸田です。先ほどの性的暴行の話の際に証拠を出せとおっしゃいましたが、あなたこそダンジョンの間引きをしていたという証拠を出すべきではないですか。今までの発言はそれこそ証拠のないあなたが作った話しだけであり、だまして公金を横領しているという事実だけが出ている状況です。きちんとした正確な証拠を出せない以上、あなたの話しは信用ができないものと思いますがいかがでしょうか。」


おっ、ちょうどいい質問きた。トーナメントの話しできるぞ。


「証拠ですが、今までC倉庫に収めた魔石に名前を書いていたわけではないんで物的な証拠はありません。ですが、間引きをしてきたテイムモンスターを呼ぶことはできます。ただし、全長30mはあるのでここで呼ぶわけにはいきません。なので、再来月に予定されているランキングマッチトーナメントに出場した際にお披露目する予定です。」


会場がざわざわし始めた。ここまではっきり断言したんだから少しは信じる人も出そうなもんだがなぁ。


「ワールドワイド△△の依田です。再来月のランキングマッチトーナメントに出場するとのことですが、あなた今探索者の資格ありませんよね?どうやって出場するのですか?」


あああああ!そうだった!忘れてた!あのうさん臭いおっさん(副支部長)に資格取り消されてたんだった。すっかり忘れてたよ。


「あーそういえばそうでしたね。どうしよう…。じゃあどこか空き地とかで呼ぶか?30mが10匹だぞ。どこかの球場とかで収まるか?一匹だけなら…いや、それじゃ納得しないだろうしな。代わり番に10匹出すとか…いけるか?」


どうしよう、街中で呼んでパニック起こさないためにトーナメント会場を選ぼうとしたのに、そもそも出場できないとは。いっそ総理に頼んでデモンストレーション扱いでいいから参加させてもらうか?


「すみません。トーナメント出場が難しいかもしれないので、何か方法はないか後で相談してから決めます。」


とりあえずいったん持ち帰ろう。ほかに質問ある人~?


「ネットニュース★★の三田です。今この会見中にもSNSを中心に批判が集まっています。国民全体があなたの公金横領を非難しています。また、わが社のアンケートでは実に9割の方から『ダンジョンの虚偽の報告で金銭を受け取ったことに対して厳罰を望む』という結果が出ています。国民の9割がこのように考えていることについて、どのように感じておられますでしょうか。」


「だから、俺はダンジョンの間引きをしていたし、きちんとした報酬としてお金をもらったの。なんで公金横領を前提に話すかな。罪を犯していないのに厳罰を望むとか馬鹿じゃないの?冤罪だろ。あんたの社のアンケート結果を国民全体にすり替えるなよ。それとも何か?あんたのアンケートに国民の9割が答えていて、俺のことを信じていなくて厳罰を望んでいるって言いたいのか。」


SNSを中心に俺への風当たりの強さ、暴言や殺害予告まで見られる状況は確認している。この流れは変えられないだろうなぁ…とは客観的に思ってはいる。


「まあいいや、別に誰から何と思われようと、俺はきちんと仕事をしただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。じゃあ次の人。」


「フリーの立田と申します。山本さんは今回阿武総理と共謀して12億円もの公金を横領し、しかもダンジョン氾濫を一人で制圧するなどまさに荒唐無稽なことを言い出しています。ダンジョン氾濫を一人で制圧などありえません。これは虚偽に当たりますし、国会で証人喚問を受けたことでほぼ確定となっています。業務上横領となれば10年以下の懲役になることは間違いありません。これをどのようにお考えですか。また、このような金銭授受にとどまらず自分一人でダンジョンのモンスターを間引きしたなどの発言は、今まさに間引きのために大変苦労をなさっている探索者様や特装隊の方々に対して極めて失礼で常識のない発言だと思います。ほかの探索者様や特装隊の方々に対して一言お詫びの言葉はないのですか。」


なげえし自己主張強すぎ。聞いているだけでイライラするわ。


「まずなんで公金を横領したと断言したのか意味が分かりません。あなたの思い込みをここで話されても困ります。あとなんだっけ。長すぎて覚えてねーや。お詫びがどうとか?意味わからん。そもそも一人につき質問は一回だろ。おい司会者ルールも守れない奴は退場させろよ。」


仕事をしない司会者に話しを振るが無視していやがる。何のためにいるんだこいつ。


「公金の横領の疑惑があり証人喚問を受けているんです。それにあなたは一年間に一億円をもらっていたと話した。それが事実でしょう。」


「だからそれはダンジョンの間引きによる報酬だって言ったよな。俺の話聞いてる?理解できる?」


自分にとって都合のいいことだけ話しているな。こっちの話しを聞こうともしない。


「一人でダンジョンを間引きしたといって報酬をもらうとか、ほかの探索者が必死に間引きしているのをバカにしているんでしょう。申し訳ないとは思わないんですか。大変な思いをして命を懸けて間引きをしている善良な探索者様に対して謝罪をすべきではないですか。」


「ああ、そうか。お前は人の話を聞かない、理解できないバカなんだな。もういいよ、黙ってろ。お前と話すことはもうない。」


自分でもイライラして口調が荒くなるのが分かる。なんでこんな奴らにつるし上げられなくちゃいけないんだ。


俺は氾濫を制圧した。12年に渡ってダンジョンの間引きをして氾濫を未然に防いだ。この国を守り、発展に貢献してきた。なのに責められなくちゃならないのか?


「都合が悪くなると発言させないのですか?私の言ったことが正しいからしゃべらせないのですね。つまり私の言ったことが正しかったわけです。国中があなたのことを非難していますよ。嘘をついて公金を横領し、探索者をバカにして、女性をレイプして。ここまでひどいことをしておいてまだ逃げるんですか?」


ここぞとばかりにフリーのバカが騒ぐ。耳障りな声だ。どんどんやる気が下がっていく。


ああ、もういいや。


「はぁ…もうやめだ、やめ。こんな意味のない会見はもう終わりだ。俺はもう帰らせてもらう。勝手にしろ。」


「説明を放棄したぞ!」

「勝手なことを言ってるのはそっちだろ!」

「いい加減罪を認めろ!」


記者たちが大声で怒鳴りだす。


そんな中フリーのバカが怒鳴った声が耳に残る。


「逃げても罪は変わりませんよ。自宅にお邪魔してでも追及しますからね!」


自宅には母がいる。家族がいる。家族に迷惑をかけるってことだな。俺だけじゃなく家族に手を出そうとしているわけだ。ああ、そうか。最後の一線を越えるということだな。ならばもう俺だけの問題じゃない。徹底的に相手をしてやろう。


「一つ警告をしておく。俺に攻撃するならまだ許すが、家族や身内に迷惑をかけるな。もしも手を出すなら『殺す』。」


明確に殺意を持って発言する。これを言うことでより家族に目が行くだろう。だがこれは警告だ。警告を受けても動くのであれば、もうどうなろうと知らない。阿武さん、すみません。約束は守れそうもありません。


「脅迫だ!」

「とうとう尻尾を出したぞ!」

「警察だ!警察を呼べ!」


『殺す』発言をブラフだと思っているのか記者たちが騒いでいるがもうここに用はない。さっさと舞台袖に移動する。


「はぁ…疲れた。猫ちゃんおいで。」


小声で話すとどこからともなく「にゃ~」と鳴き声とともにテイムモンスターの一匹、通称猫ちゃんが空間転移してくる。


「疲れたよ~猫ちゃ~ん」


抱っこして頬っぺたすりすりしながら愚痴る。


「にゃ~ん(主お疲れ様)」


30cmサイズに縮小しているときは言葉が話せないが、何となく意思疎通はできるのだ。


「よし、癒された。じゃあ猫ちゃん、自宅まで空間転移お願い。」


「にゃにゃ(お任せです)」


ニュンって感じで自宅に戻る。空間転移の瞬間は何とも言えない感じだ。


自宅につくと母親がテレビを見ていた。ちょうど俺の会見を見ていたようだ。


「母さんただいま」


「将ちゃんお帰り。大変だったね。」


涙を浮かべながらそう話す母。もう70過ぎなのに心配をかけてしまったことに罪悪感を感じる。


「大丈夫このくらいは気にしてないから。」


「最後『殺す』って言ったけどあれ本当?悪いのはあっちだけど殺すのはやりすぎよ。」


母は俺の強さを知っているから、ブラフではなく本当に殺るとわかっているようだ。


「まあ脅しの面はある。でもやられたらやり返さないと、いつまでたっても終わらないからね。これは譲れないよ。」


「私は将ちゃんが正しいことを知っている。でも、あなたが正しかったとしても、人を殺してしまうとみんなに認めてもらえないじゃない。」


「認められる前にさ…俺が正しいことを信じてもらえないんだよ…」


自分でも弱弱しい声が出ていることに気が付く。なんだかんだでショックを受けていたんだな俺。


「だったらね、あなたが正しいってことを示せばいいの。」


「いやどうやってさ。」


「ダンジョンの間引きをしていたことを信じてもらえないんだったら、間引きを辞めちゃえばいいの。それで氾濫が起きたら改めて制圧すればいいのよ。」


まさかの自作自演。氾濫起きたら無関係な人たち大勢死ぬよ?あれ?俺の母ってサイコパス?


でも俺にとって大切なのは、1番が自分と家族、2番は知り合い、3番にその他大勢って感じだからまあ気にしなくていいか。(俺も大概だが)


「うーん…それでもいいか。俺のこと信じないなら痛い目見てもらおう。とりあえず部屋で休んでくるわ。」


「うん。ゆっくりお休み。お疲れさま。」


そうと決まれば連絡だ。自室に戻りながらほかのテイムモンスター全員を押し入れダンジョンに呼ぶことにする。


すぐにみんなやってきた。30cmサイズでみんなかわいい。


「みんなお疲れ様。12年間もダンジョンの間引きをしてくれてありがとう。これからは間引きしなくてもよくなったから。みんなで一緒に過ごそうか。」



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