第10話
翌朝、私たちはすぐに行動を開始した。
身支度を済ませると、武器を準備し、そのまま警察署へ向かって追加情報を集めることにした。
門の外へ出ようとした時、スコット支社長が煙草に火をつけているのが見えた。
彼は私たちに気づくと、話しかけてきた。
「おお、おはよう二人とも。どこへ行くんだ?」
「警察のところです。何か使えそうな情報がないかと思って」
彼はため息をつき、 紫煙を大量に吐き出した。
「はぁ……あの兄弟な。兄の方は王立工科大学の学生で、会社からもかなり期待されていた。弟の方も性格が良くて、みんなに好かれてたんだ」
彼は煙草を深く吸い込み、再び煙を吐く。
「……だが、もう無事でいる可能性は低いだろうな。もし私の考えていることが本当に起きているなら……せめてちゃんと埋葬してやれればいいんだが」
その顔には憂いと、誰かに対する罪悪感のようなものが浮かんでいた。
「待ってください、兄弟って……」
その瞬間、妙な不安が胸をよぎる。
「スネグさん、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です。へへ、多分考えすぎですよね!」
どうか、今頭に浮かんでいる嫌な想像が、ただの思い込みでありますように。
デペンドラを見ると、何かを計算しているように黙り込んでいた。
…
しばらく後。
フロンティエール・シュド州警察本部。
そこで得られた情報は、かなり乏しかった。
誘拐犯の正体自体は判明しているらしい。
しかし、連中のアジトが隣国エベレストにあるため、逮捕には至っていない。
しかもその国は近年ずっと不安定な情勢が続いている。
さらに分かったのは、犯人たちはかなり頻繁に人を攫っていること。
だが犯行場所は毎回ランダムで、手口も様々。
目的については依然不明だった。
…
私たちは会社の支部へ戻った。
スコット支社長が用意してくれた部屋で、再び情報整理を始める。
「こんだけしか情報なくて、何ができるんだよ……」
デペンドラは頬杖をつき、うんざりした顔をする。
「かなり厳しいね……。いっそ地元の人に聞き込みでもする?」
でも相手はあれだけ巧妙な手口を使ってるんだ。
地元民が知ってるとは思えない。
それに、この辺の人たちってあんまり友好的じゃないし。
「……」
どうするべきか。
「いっそ警察と連携して、各地に人員とドローンを配置してみる?」
デペンドラは数秒考え込む。
「悪くないかもな……。警察署長に連絡してみろよ」
私はスマホを取り出し、警察へ電話をかけた。
相手が出る。
『もしもし、スネグさん。どうしました?』
私は計画を説明した。
警察署長はため息をついて答える。
『実はその方法、もう何度も試してるんですよ。何人か捕まえたこともあるが、何も吐かない。中には拘束された瞬間に自殺した奴までいた。それに追跡も難しいんです』
「うーん……UAVで監視するとかは?」
『連中は元軍人か、そうでなくても撃ち合い慣れした連中ばかりです。UAVを飛ばせば撃ち落としてすぐ場所を変える』
「じゃあいっそ攻撃型UAVでも使ってみる?」
彼の声色が急に鋭くなる。
『お前正気か!?人質が死んだらどうする』
「死にませんって!直接攻撃じゃなくて!」
『……』
数秒沈黙した後、彼は再び口を開いた。
『……分かりました。検討してみましょう。明日、作戦を実行するということで?』
「はい、よろしくお願いします」
「ピッ――」
電話が切れる。
デペンドラは半信半疑の声を出した。
「本当に大丈夫か?軍用兵器まで使うんだぞ……」
「やってみなきゃ分かんないでしょ!」
彼は数秒ぽかんとした後、肩をすくめる。
「オーケー、オーケー。信じるぞ。もう寝ようぜ、明日に備えないとな」
そう言って彼は電気を消し、眠りについた。
…
私は、捕まえた連中を何人か尋問してみるつもりだった。
そもそも警察には、容疑者を強引に吐かせる権限がないのだから。




