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第二十一話 目覚め

ゆっくりと瞼を開く。


────視界が白い。


まさか、また同じ場所に来たのか?

一瞬不安が頭を過るが、すぐに間違いだと気付いた。


頭にかかるタオルを振り払うと。

そこは見慣れぬ………

いや、ユウトの部屋だった。


窓から日の光が差し込み明るい。

日差しの感じからすると朝だろうか?


目の前にはユウトの顔。

机に突っ伏して眠っている。


俺はどれぐらい気を失っていたんだろう。

部屋には時計(・・)などがなく、確認する術はない。


ユウトが起きたら聞いてみよう。


そう考えながら、改めて気付いた事がある。


俺は”時計”という物を知っている。

以前の知識が、俺にはしっかりと残っているのだ。


しかし自分の事を含め、大切なことはすべて忘れてしまっている。



────思い出す。

いつか必ず。



決意を新たに自分の腕を確認してみる。


発光する小さな鱗に覆われた細い腕。

鱗は乳白色でやや透明感があり、淡く虹色の光を放っている。

控えめな、それでいて吸い込まれるような美しい輝き。


自分の体とは思えぬほどに神秘的だが、手を握ってみると違和感はない。

しっかりと指や掌の感覚があった。

どうやら無事に"進化"を遂げて生き延びたようだ。



ユウトに視線を戻す。

眠るユウトを見ていると、胸にじわじわと安堵感が広がってきた。


スヤスヤと寝息をたてるユウトの鼻を指で突っついてみる。



「………ん?」



寝ぼけた顔で、少しだけ目を開けるユウト。



(おはよう。)


「んー………おはよう。」



返事をしてもまだ寝ぼけているようで、思わず笑ってしまう。

面白がって何度も突ついていると。



「────って、気が付いたんだ!」



はっと我に返り飛び起きた。


ユウトの顔には、うっすらと隈が浮かんでいる。

おそらく遅くまで起きて看病してくれていたのだろう。



(あぁ、心配かけたみたいだな。ゴメン、いや、ありがとう。)



ユウトは首を振り、笑いながら言う。



「昨日、アカリに回復魔法をかけてもらったんだ。 後で一緒にお礼をしに行こう。」


(アカリも助けてくれたのか。)



それはお礼に行かなきゃならないな。


どうやら丸一日、俺は気を失っていたようだ。

それにしてもアカリの竜に襲われて、アカリに救われるとは………


微妙な心境だな。

───いやアカリには恩しかない。

問題はあの黒い竜だけだ。



(あぁ、お礼をしなきゃな。)


「そういえば、ちゃんと進化できたんだね。」


(おかげさまでな。進化があんなに苦しいとは思わなかったが。)



ユウトは昨日の俺を思い出したのか、引き攣った顔で笑っている。

そして何かを思い出したように俺の体をまじまじと見ながら首をかしげた。



「前に、空を飛べるやつになるって言ってなかった?飛べそうには見えないけど…」



そういえば村への帰り道にそんな話をしていたな。



(飛んでみたかったんだが、進化した時はそれどころじゃなくてな。生き残れそうなのはこれしかなかったんだ。)



実際、進化によって期待以上に瞬発力が上がったからこそ竜に食われずに済んだのだ。

あの時空を飛べる能力を身につけても、そのまま食われて終わりだっただろう。



「何があったの?」



聞いてくるユウトに事の顛末を説明する。

みるみる内にユウトの眉間に皺が寄っていく。

少年ながら、なかなかの迫力である。



「………僕、ちょっとベガのところに行ってくる。」



少年。

一体その顔で何をしに行くのかね?


ユウトはすっと立ち上がり、そのままドアを開けて外へ出ていく。


(───って待て待て!)


俺は慌ててユウトの肩に飛び乗った。

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