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火帝火戦隊ディーファイブ9

『火帝火戦隊ディーファイブ』9


・先生、夏休みを過ごす


 試験も終わり、遂に始まった夏休み。清史郎だけでなく、ディーファイブの五人も休みの日々になった。

 ディーファイブの五人と清史郎は海に向かった。

 ディーファイブの五人は久し振りの海だったが、清史郎は初めての体験だった。

「これが……海……!?」

 サイボーグという事と、勉強漬けの日々を送っていた清史郎はこのイベントに非常にワクワクしていた。

 傍らでパラソルを立てるサイホーとタッキー。リョーリはバーベキューの準備をし、ツーとリーは着替え室で水着に着替えていた。

「あ、ごめん!僕も何か手伝うよ!」

「良いって良いって。清史郎は自由に遊んできな」

「でも……」

「また『でも』って言ったな?もう『でも』は禁止な」

「うっ……分かった……じゃ、じゃあ遊んでくる!」

「あ、ちょっと待った」

 サイホーは清史郎を呼び止め、何やら競泳用のようなスーツを着せた。

「これは?」

「防水スーツだ。お前サイボーグだろ?錆びたらマズいじゃないか」

「そうか。ありがとう。サイホー」

「良いって事よ。じゃ、適当に泳いできな」

「分かった!」

 清史郎は砂浜を走って海に飛び込んでいった。

 バーベキューの準備をしているリョーリ先生がふと言った。

「なぁ、サイホー?」

「ん?何?」

「俺らって水泳の授業ってやってたっけ?」

「あぁ、やってねぇな。それが?」

「アイツ、泳げんの?ただでさえサイボーグなのに」

「……あっ!しまった!清史郎ー!」

 清史郎は案の定「ガボガボガボ」と溺れていた。

 清史郎を助けた後、着替えが終わったツー先生とリー先生がやってきてリョーリ先生に「何か手伝おうか?」と聞くと「後は焼くだけだから大丈夫だ」と言われ、ツー先生とリー先生は目の前で日焼け止めクリームを塗り合った。

「よっしゃ!遊ぶぞ~!」

「行こう!ツー!」

「うん!」

 この前の喧嘩が嘘かのように遊ぶ二人。それに追い付けずにいる清史郎とタッキー先生。

「うーん……」

「女って分かんねぇよな……」

「女っていうか……ってかタッキー。君は分かるんじゃないの?幼馴染でしょ?」

「俺、飯を喰う事以外あまり敏感じゃないんだよ」

「あっそう……」

「おーい!何してんのー!?皆も遊ぼうよー!」

「俺は料理中ー!」

「俺はパラソル!」

「じゃあ行くか?」

「うん。タッキー。おーい!ツー!リー!今行くよー!」

 今度は溺れないように浅瀬でビーチボールを膨らませて遊ぶタッキー先生、ツー先生、リー先生と清史郎。しかし清史郎は純粋に楽しめずにいた。

「…………」

「どうしたの?お腹でも痛い?」

「あ、いや、その……」

 前屈みになっている清史郎。そこにタッキーがやって来て、清史郎を抱え上げた。

「よっしゃー!あっちで水泳の授業じゃーい!」

 ダバダバダバ!と波を立てながら岩陰まで清史郎を連れていったタッキー先生。何の事か訳が分からず、リョーリ達の方に向かうツー先生とリー先生。

 一方、岩陰に隠れたタッキー先生と清史郎。

「はぁ……!はぁ……!はぁ……!」

「だ、大丈夫……?タッキー……?」

「俺は大丈夫だ……!それよりお前、大丈夫か?それ」

「あっ!こ、これは、その……!」

「分かる!男の子だもんな!大丈夫!これは男同士の秘密だ!」

「ごめん……」

「良いんだ!俺にだって覚えはある!思春期だもんな!」

「……うん」

「治まったら戻って来い!それまで俺が時間を稼ぐから!」

「ありがとう。タッキー……!」

 タッキーは急いでリョーリ達の所に戻った。

 「清史郎はどうした?」と聞くサイホー先生とリョーリ先生だったがタッキー先生は「男の子だから、な?」と言った。すると二人は「あー……」とツー先生とリー先生を見て納得した。

 暫くして戻ってきた清史郎はフラフラとした足取りだった。

「おっ、清史郎!どうだ?治まったか?」

「治まった?」

「何が?」

「あ、良いの良いの!お前らには関係無いから!」

「何それー?」

「で、どうだ?大丈夫か?」

 コソコソと聞くタッキー先生だったが、清史郎の口からは「仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色」と般若心経を解いており「おーい!戻ってこーい!」とタッキー先生は清史郎の頬をペチペチと叩いた。

 そこへ並木がやって来た。

「あ、委員長じゃーん!」

「あ、並木さん。それに皆も?」

「何で何で~?何で先生と一緒にいんの~?」

「伊達さん、まぁ、それは良いじゃないの」

「でも気になるし」

「なー」

「城ケ崎君、今村君。これはね~」

 タッキー先生から清史郎を引き剥がし、ツー先生とリー先生は清史郎を挟んで「オトナな関係……!」と言った。その瞬間、清史郎は気絶した。

「ありゃ……」

「大丈夫……ってアッツ!?」

「あーあーあー。熱暴走しやがった」

「まぁここは幸いにも海だし、いくらでも冷やせるだろ」

「皆、手伝ってー」

 並木、伊達、城ケ崎、今村は「はーい」と言って清史郎を海辺まで運んだ。

「おんも!?何!?委員長ってそんなにデブだったっけ!?」

「内臓脂肪にしてもヤバすぎるでしょ!」

「えーっとね……ちょっと事情があって……」

「事情ってどんな?」

「おい今村!お前手ぇ抜くなよ!?」

「だって重いんだもん」

「女子だって力入れてんだからお前もやれ!」

「ちぇ~。ふんっ」

 浮き輪を清史郎の胴体に通し、プカプカと浮かばせて熱暴走を何とか止める事に成功した一同はバーベキューの所に向かった。

「先生~、俺達も食べて良い?」

「一人千八百円な」

「金取んの!?」

「この銭ゲバめ~……」

「はっはっは!冗談だ!冗談!誰か来るんじゃないかと思って材料は大目に持ってきといたから好きなだけ喰え!」

「わーい!」

「先生大好きー!結婚してー!」

「後五年したら考えてやるよ!」

「おっ、言ったな~?本気で狙っちゃうぞ~?」

「やれるものならやってみな!」

 一同は和やかな雰囲気でバーベキューをした。再起動した清史郎は海に投げ込まれている自分の現状と浮き輪を見て即座に事態を理解し、犬掻きで泳いで皆の所に戻った。

 その頃、マザーコンピュータはスーパーコンピュータ「無量大数」の中で計算をしていた。

「これハ、無駄……!遊ブのは無駄ダ……!休みナど、必要無い!」

 マザーコンピュータはジャミングプログラムを掻い潜る事は出来ず、そのままディーファイブの六人の所に分身体を送った。

「マザーコンピュータだ!ソこヲ動クな!」

「マザーコンピュータ!」

「母上!」

「母上?」

「あ、いやその……!」

「皆!早く逃げろ!」

 並木達は走って逃げていった。

「マザーコンピュータ!いつもいつもお前は!」

「お前ラだッテそウだろ!いつもイツモ邪魔しヤガって!」

「何かいつもと様子が違うな?」

「何はともあれだ!行くぞ皆!」

 全員で「応っ!」と応え、変身しようとした。その瞬間、山の裏から巨大ロボが現れた。

「今日はこっちもかよ!?」

「あっちは僕に任せて!」

「頼んだぞ!清史郎!」

「うん!皆もね!」

 ディーファイブの五人は「サイホーチェンジャー!サイホーチェンジ!」と叫んで変身し、清史郎はディーハウスに向かって合体しに行った。合体を終えたディーキングは地上に舞い降りた。

「ディーレッド!」

「ディーブルー!」

「ディーグリーン!」

「ディーイエロー!」

「ディーピンク!」

「切り札のD……ディーキング!」

「火帝火戦隊!ディーファイブ!」

 海が爆発した。

「行くぞ!」

 戦闘が始まった。マザーコンピュータは小さい方にあまり注意を向けていないのか、主にディーキングとの対決に力を入れている様子だった。

 「ハッキングをするつもりか?」とも思ったが、どうもそういう様子でもないらしい。

 小さい方は簡単に片が付き、ディーファイブの五人はディーキングに乗り込んだ。

「皆!」

「キング!お前、逆探知出来るか!?」

「ブルー!逆探知!?でも俺のあの回路があるからもう場所は……!」

「違う!アイツの今が知りたいんだ!」

「えっ!?」

「どうも様子がおかしい!もしかしたらだが……!」

「もしかしたら!?何!?」

「『心』を持ち始めているのかもしれない!」

「『心』を!?母上が!?」

「そうだ!ここは俺達が操縦するから、お前は相手の中核部に行ってデータを奪ってきてくれ!」

「わ、分かった!ブルー!皆!」

 清史郎は五人に操縦を任せて、自分は機体を離れて敵の巨大マザーコンピュータの内部へ向かった。特に邪魔される事も無く、中核部に向かい、データを解析した。

「これは……!?」

 驚いたキングはディーファイブの下に戻り、六人で思い切りぶっ飛ばして宙に浮かせ、ビームを体中から放射し、マザーコンピュータを倒した。

 そのまま基地に帰り、ディーキングはディーハウスになり、基地とドッキングした。基地に向かい、清史郎は解析したデータをスクリーンに映した。

「これは……!?」

「『心』を……!?」

「持ち始めている……!?」

 そう。マザーコンピュータは「心」を持ち始めていたのだ。人間に近い発音や言い回しがそれだった。リョーリの考えは当たっていた。しかし……

「でも何で人間を襲うの?」

「さぁ……そこまでは記録されてなかったから……」

「そっか……ありがとね。清史郎」

「うん……でも、正直……」

「正直?何だよ」

「ちょっと、嬉しいんだ……」

「嬉しい?」

「うん……母上が、僕みたいに、人間と一緒に暮らしていける。そんな未来があるんじゃないかって思うと、ね……?」

「……そうだな。そうなるのが一番だよな!」

「タッキー……」

「俺らにとっちゃ今はマザーコンピュータはただの敵だが、今じゃ清史郎のオッカサンなんだ!そこを尊重してやろう!」

「ありがとう!タッキー!」

「これからはAIに頼るんじゃない!AIと共に手を取り合って一緒に生きていくんだ!そうだろう!?皆!」

「……そうだな!」

「あぁ」

「そうね」

「えぇ」

「皆……!」

「でもまずは、お仕置きをしなくちゃな……」

「サイホー!母上を殺すつもり!?」

「違う。一人の人間として、説教と折檻をしなきゃならんっつー事だ」

「そうだ。ここまで人間を苦しめて来たんだ。それくらいこっちもして当然だろう」

「そういう事か……良かった……!」

「さぁ、夏休みは始まったばかりだ。今日から宿題を始めて、きっかり最終日まで計画を持ってやっていこう!」

「えぇ!?宿題!?」

「そうだ。ディーファイブになったからって、まだ中学生だ。勉強はしなきゃいけないぞ」

「あのー……あのー……」

「ん?どしたん?」

「僕、始まる前に全部終わらせた……」

 場は静寂に包まれた。

「お、おう……」

「じゃ、じゃあ今日から家庭科のお勉強をしましょうか!」

「そうだね!お金の事なら何でも聞いてね!」

「炊事なら俺だ」

「裁縫なら俺だな!」

「洗濯は俺だ!」

「掃除とかはアタシかな?」

「じゃあ今日から一ヶ月、一緒に頑張ろ~!」

 一同は「おー!」と拳を挙げて夏休みが始まったのだった。


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