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火帝火戦隊ディーファイブ8

『火帝火戦隊ディーファイブ』8


・先生、衝突する


 その日、ツー先生とリー先生は険悪な空気が漂っていた。

「な、なぁ?何かツーちゃんとリーちゃん、不機嫌じゃね?」

「あー、何か喧嘩したみたいだぞ?」

「えぇ……?何で今更?」

 何があったのか。それは昨日まで遡る。

 ツー先生は普通に部屋を掃除していた。そこにリー先生がやって来て文句を言った。

「ねぇ、ツー?それ、新しい雑巾?」

「そうだけど?」

「いつ買ったの?それ」

「ついさっき」

「ちょっとちょっと!そんなのくたびれたタオルを切って使ってよ!」

「え、嫌だよ。皆の垢が付いた布で拭くなんて」

「洗ってあるんだから別に問題無いでしょ!?」

「嫌だって!気持ち的に!」

「ただでさえ食費だけじゃなくてこの基地を建設する為に背負った借金もあるのに、そんな細かいプライドは捨ててよ!」

「細かいプライド!?だったらそっちこそ細かいプライドは捨てなさいよ!この守銭奴!」

「何よ!この贅沢三段腹!」

 そして今である。

「お前らなぁ、今は喧嘩してる場合じゃないだろ?」

 二人は声を揃えて「喧嘩なんかしてない」と言った。

 そうこうしているうちにもう出勤、登校時間になった。

「行くわよ」

「言わなくても分かってるわよ」

 「バタン!」と扉を思い切り閉め、二人は出勤していった。

「ねぇ。あの二人、大丈夫かな……?」

「喧嘩するほど仲が良いって諺があってだな」

「それは知ってるけど……」

「あそこまで喧嘩してる二人は見た事無いなぁ」

「じゃあ今日は二人の好きな料理でも作って少しでも笑顔にしてやるか。そうしたら多少この緊張が緩むだろ」

「だと良いんだけどな」

 四人も出勤、登校した。その時、サイホー先生はリョーリ先生に耳打ちした。

「作戦実行か?」

 リョーリ先生は小さく頷いた。

 職場では流石に喧嘩はしないだろうと思っていた四人だったが、喧嘩はエスカレートしていく一方だった。

 リー先生は金銭面で苦労している学校に色々提言しては撤回されを繰り返し。ツー先生は不潔な生徒への指導不足に対して校長先生から怒られていた。

 二人が部屋から出てくるなり、ツー先生は「あら。お金の事なら何でも御座れのリー先生。得意分野で失敗ですか?」と煽り、リー先生も「生徒一人指導出来ないのにお金貰えるなんて楽な仕事ね」と煽り返していた。

 それを見てタッキーは「あっひゃっひゃ!もっとやれ!」と煽ったが、サイホーとリョーリから「バーカ」と言われながら肘打ちをされていた。

「あの……ツー先生、リー先生……」

「あら、どうしたの?遠藤君」

「ちょっと屋上まで良いですか?」

「……良いわよ。アンタは?」

「貴方に指示されなくても行くわよ」

 三人は屋上に上がった。遅れてサイホー、リョーリ、タッキーも様子を見に隠れていた。

「すみません!」

 対面するなり、清史郎は二人に頭を下げた。

「な、何が……?」

「どうしたの?遠藤君?」

 慌てて清史郎を宥めようとする二人に、清史郎は頭を下げたまま続けた。

「僕の母が原因なんでしょう……?僕の母が、人類に攻撃してきたから、皆さんは借金して、地球からも追い出された生活をして……」

「……違うわ。遠藤君。あなたのせいじゃない」

「まぁマザーコンピュータのせいである事に変わりは無いけどね」

「とにかく、これは大人の事情。子供は気にしなくて良いの」

「でも……」

「『でも』じゃない女には女なりのプライドってモノがあるのよ」

「な~にがプライドよ。そのペラッペラなプライド、すぐに吹き飛んじゃうわよ」

「アンタみたいに擦っても落ちない垢みたいなモノよりずっとマシだわよ」

 二人は「ふんっ!」と鼻息を鳴らし、隠れていた三人の所に向かった。

「何?」

「あ、いや、え~っと……何というか、さ……?」

「気持ちは分かるけど、このまま俺達がいがみ合ってちゃ駄目だろ?ツー先生、リー先生?」

「面白いからもっとやれ」

 またも肘打ちを突かれ、蹲るタッキー。そこで二人は「ちょっとこっち来て」と言って清史郎から見えない位置に移動した。そこでボソッと呟いた。「清史郎の不安感を煽るなら、もう少し本気で勘違いさせる必要がある」と。二人は「じゃ、そういう事だから」と職員室に戻っていった。

 サイホー先生とリョーリ先生は「あー……」と察しており、タッキー先生だけ分かっていない様子だった。

「ねぇ。何の話?何の話?」

 サイホー先生とリョーリ先生から「お前は黙ってろ」と言われ頬を膨らませて拗ねるタッキー先生。

 後からやってきた清史郎には「まぁ、大人の事情ってやつだ」と言って流した。

 そのまま放課後になり、未だ喧嘩したまま帰宅した。

「清史郎。ちょっと良いか?」

「何?サイホー、リョーリ?」

「スリープモードになれるか?」

「良いけど……何するの?」

「お前のオッカサンの事で一つ気になる事があってな」

「わ、分かった……」

 清史郎はスリープモードになった。

 サイホーとリョーリは清史郎の体を調べた。特にあのアラームが鳴った装置を細かく調べた。何か電波を発生しており、それを解析してみると、マザーコンピュータと連絡を取っているという情報を得る事が出来た。つまり、清史郎はスパイだったのだ。だが普段の清史郎を見ていて、サイボーグだとしてもあの曇りなき眼は意図的に作れるのか?と疑問に思った。

 その後、スリープモードから目覚めた清史郎は、未だに喧嘩している様子のツー先生とリー先生を見て「このままじゃ本当に内部分裂が起きてしまう……」と、そう思った。清史郎のその感情データをマザーコンピュータにキャッチされてしまい、マザーコンピュータはすぐに攻撃の準備を始めた。

「喧嘩は無駄……喧嘩ハ無駄……!無駄を作リ出ス無用ナ人間……火帝火戦隊ディーファイブ……お前らもここで終わりダ!」

 マザーコンピュータは翌日、地球に降り立ったディーファイブの下に分身達を送り込んだ。

「こんな最悪のタイミングで……!」

 と焦る清史郎だったが、五人は平気な顔で「サイホーチェンジャー!サイホーチェンジ!」と言って変身した。

「え?」

 そう思った清史郎は慌ててリモートコントローラーを取り出して「えーっと……そうだ!剛鉄!」と言ってマザーの分身の何体かを強制解体し、装甲を身に纏った。

「ディーイエロー!」

「ディーピンク!」

「ディーレッド!」

「ディーブルー!」

「ディーグリーン!」

 イエローとピンクは声を揃えて「火帝火戦隊!ディーファイブ!」と名乗って後方を爆破させた。清史郎は「切り札のD、ディーキング!」と言って更に爆破させた。

「行くわよ!」

「えぇ!」

 昨日までの喧嘩は嘘かのようにイエローとピンクは息を合わせてリョーリブレード「サントク」と「メンキリ」でコンビネーションアタックを繰り返し、いつもとは違う新たな戦闘スタイル、正に滅茶苦茶という言葉が似合う、暴れるように戦っていた。野生のような戦い方のイエローの攻撃に、機械的な防御を構えるピンクというフォーメーションに、今までに無い動きに対して予測が出来ず、マザーコンピュータは混乱していた。そこに合わせて今度はレッド、ブルー、グリーンの無機質な遠距離攻撃。もう処理が追い付かず、遂に回路はショートした。更にキンリガンで四方八方三百六十度の弾丸にマザーコンピュータは対処し切れず、全弾受けてしまい、膝を折った。

「これで終わりよ!ピンク!」

「オッケー!イエロー!」

 二人はキンリガンとサントク、メンキリを合体させ、サントクキンリガンとメンキリキンリガンを完成させて撃った。マザーコンピュータは爆発し、回路だけが残った。その刹那「データヲ引キ継ギマス」と言って散った。その瞬間の清史郎の動きが一瞬止まったのを見逃さず、ブルーはレッドに合図を送った。

 イエローとピンクは「やったぁ!」と手を叩いて喜び合った。

 どういう事か分からずにいると、変身を解いた清史郎は一瞬の硬直を発生させた。その後、突如背部に激痛が走った。振り返ると、そこにはヤナギバで清史郎の背中を切り裂いているレッドがいた。

「レッ……ド……!?」

「ちょっとだけ我慢してくれ……!」

 清史郎は意識を失った。

 清史郎が目を覚ました時、そこは基地で、ベッドの上に横になっていた。

「ここは……僕の部屋……?」

「目が覚めたか」

「リョーリ……?僕は、一体……?っていうか、何でいきなり僕を刺したりなんか……!?」

「これだ」

 それは前にアラームが鳴って取り出せなかった謎の装置だった。それは清史郎には何かは分からず、聞いた。

「それは……?」

「お前の体の中にあった。お前はスパイにされていたんだよ」

「僕が、スパイ……?」

「そう。無意識だろうが、お前はマザーコンピュータのスパイをさせられていたんだよ」

「どういう事?」

 さっきまでのツー先生とリー先生の喧嘩は演技だった。あのアラームが鳴る機械。それはおそらく、マザーコンピュータにとって何か大事な隠し装備なのだろうとリョーリ先生とツー先生とリー先生は感じた。もしかしたらスパイ用の監視システムかもしれないと踏んだリョーリ先生はデジタルで逆探知出来ないか調べ、ツー先生とリー先生はアナログでその装置が誤作動を起こさないか監視していたという。人間の感情や行動による「無駄」を嫌う性質のあるマザーコンピュータは、もしかしたら表面上の喧嘩だけでも清史郎の不安感という感情の信号をキャッチするのではないかと考えた。実際に過去「データヲ引キ継ギマス」と言っている間、清史郎には謎のラグが発生していた。それはマザーコンピュータと交信する為に無防備になる時間があると踏んだのだった。そこを狙って正確に真っ直ぐ貫く事の出来るリョーリブレード「ヤナギバ」を持つサイホー先生にリョーリ先生が装置の位置を特定し、ヤナギバなら周囲の機構を傷つけずに取り出せると判断した為、リョーリ先生は共に胸を痛めながらも、サイホー先生に装置を取り出してもらった。勿論、予想が外れていた時の為のバックアップ用ファイルは別で取っておいた。データを解析した結果、過去の戦いで清史郎が目撃した自分達の戦いの中で、感情に左右されて送られてきた敵がいた事が分かり、この装置が自分達に向けた攻撃の為の発信源だという確信に変わったという。

「そんな……最初から言ってくれれば……」

「言ったら意味無いだろ」

「あ、そっか……」

「まぁお前を無駄に不安にさせてしまったのは申し訳ない」

「いやいや!作戦だったのなら仕方ないから!でも……」

「でも?何だ?」

「ちょっと、痛すぎたかなって」

「……すまん!」

「冗談だよ、上段!」

「お前の場合マジなのかギャグなのか分かりにくいんだよな」

「サイボーグですから?」

「はは。そうかよ。どうだ?起きれるか?」

「いてて……うん。大丈夫……!」

 部屋を出ると、もう演技をする必要が無いのにツー先生とリー先生がタッキー先生に怒っていた。

「アンタねぇ!アタシ達を喧嘩させようとしたってどういう了見よ!?」

「そうだよ!こんだけ長い時間一緒に居るんだから演技だって事くらい分かりなさいよ!」

「ひぇ~!ごめんなさ~い~!」

 コソコソと物陰から「ソウダソウダー」と呟くサイホー先生に「喝っ!」と怒るツー先生とリー先生。

 フラフラと歩いて出て来た清史郎を見てサイホーは「おっ!起きたか!ごめんよ!辛い思いさせて……」と深々と謝った。

「いやいや!作戦だったんでしょ!?それにあのままだったら母上の掌の上で遊ばれてた可能性だってあった訳だし……」

「それでも。すまん!」

「アタシ達からも謝るわ。ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「いいよいいよ!気にしないで!」

「まぁ何はともあれ、これによって電波の発信源を辿ればマザーコンピュータの居場所が分かるし、誤情報も送れる。これで俺達の戦いは、後少しだ」

 後は時間の問題。そう思われたが、清史郎はどこか胸騒ぎがあった。


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