火戦隊ディーファイブ7
『火帝火戦隊ディーファイブ』7
・先生、生活する
清史郎が新たな家族になって数日。タッキー先生は焦りを感じていた。何故なら自分の仕事が無くなっていっているからだ。
一度覚えた技術はすぐに何度でも出来る清史郎裁縫、料理、掃除、金銭管理と色々出来た。その中に洗濯も入っていた。
タッキー先生は唯一の自分の仕事である洗濯を勝手にされて憤りを感じていた。
「何であんな小僧に俺の仕事を取られなきゃいけないんだ……!」
正直、タッキー先生だけは最後まで清史郎の加入を渋っていた。周りに流されて加入は許したものの、裁縫、料理、金銭管理、掃除は手伝い程度で済んでいたが、洗濯はそうはいかなかった。基本的に洗濯機に洗濯物を入れ、洗剤と漂白剤、柔軟剤を入れるだけなのでそれで事足りた。乾燥機に掛けるのも簡単で、強いて言うなら衣類の畳み方がタッキー先生特有のものだったくらいだった。しかしそれもすぐに学習し、完璧になっていった。
タッキー先生は面白くなかった。周りは手伝いだけで済んでいるのに、自分だけ仕事を取られているという事に焦りと怒りが混ざっていた。
それを感知してか、清史郎はタッキー先生の手伝いを少し控え気味にすることにした、それも癇に障ったのか「もう全部お前がやれよ」と仕事を放棄した。
タッキー先生は堕落の道を選んだ。それを見て他のディーファイブの四人は心配した。
「大丈夫か?」
「あ?何が?」
「このままじゃお前、今の人類みたいになっちまうぞ?」
「知るかよ。全部、アイツに任せてやれば良いんだ」
「サイボーグとはいえ疲れるんだぞ?お前がそんなダラダラしてたらディーファイブとして……」
「あー!もう!五月蠅ぇな!どうせ巨大ロボットで無双するんだろ!?だったら俺一人いなくても問題無いだろ!」
「タッキー君。それは違うよ」
「いいや!違わないね!俺はもうディーファイブを抜ける!こんな事やってられるか!」
タッキー先生はサイホーチェンジャーをテーブルの上に置いて単体の宇宙船に乗り込み、地球に向かって飛んでいった。
「タッキー……」
「まぁすぐ戻ってくるだろ」
「リョーリ君。でも今回はちょっと様子がおかしいよ?」
「大丈夫大丈夫。俺達の仲だろ?心配するな」
「だと良いんだけど……」
タッキー先生は単身で地球に戻った。タッキー先生は改めて今、マザーコンピュータによって支配された世界を見て、体験して満足していた。
「こんな楽な生活が出来るのに、何でわざわざ反旗を翻す必要があるんだ?」
そう思い、AIの作った料理を無料で食べ歩き、AIが運営する銭湯に入りつつ洗濯機に服を入れて洗って乾燥させた。その後も食事をし、ホテルで眠りに着いた。寝る間際「帰ったらアイツらの服。洗濯しなきゃ……」と思ってしまい「違う違う!俺はもう帰らない!」と頑なに意地を張って不貞寝した。
翌日、学校に通勤した。そこでは当然、あの五人がいた。
「あ、おはよー。タッキー先生」
「……あぁ」
「ま~だ怒ってるんですかぁ?いい加減機嫌直して下さいよ~」
「五月蠅ぇ……!」
「はい。今日の弁当」
「……おう」
それは素直に受け取り、業務に取り掛かった。
そして昼休みになり、タッキー先生はいつものように屋上に来てしまった。
「あ、俺の居場所はここじゃねぇや……」
寂しい気持ちを抑えつつ職員室に帰ろうとすると、リー先生が扉を開けた。
「あ、来た来た!皆~!タッキー先生が来ましたよ~!」
リー先生はタッキー先生の腕を無理矢理掴んで屋上に出た。
「お、俺はアイツなんかと飯は……!」
屋上には清史郎の姿は無かった。
「あ、あれ?アイツは……?」
「遠藤君ならクラスの皆と食べてるよ」
「あ、そう……」
沈黙が続き、五人は無言で弁当を食べた。するとツー先生が言った。
「タッキー先生。何を嫉妬しているんですか?」
「は?」
「タッキー先生、ずっと遠藤君の事を見てたでしょ」
「べ、別に俺は……」
「遠藤君ね、タッキー先生の洗濯の仕方を一生懸命覚えてたんですよ」
「え?一度覚えたら間違えないんだろ?」
「覚えたら、ね。すぐに覚えるとは言ってないですよ」
「…………」
「遠藤君、凄いって言ってましたよ。タッキー先生の事」
「何て?」
「一人一人の服を別々で洗いつつ、臭いが着く服は手洗いで、女性陣の下着は個別でやるように私達に教えてくれたり、その人に追って柔軟剤を替えてるっていうのが心遣いが凄いって言ってましたよ」
「……そう、か……」
「さて、そろそろ昼休憩も終わるな。私達は先に職員室に戻っていますので、また後で会いましょう」
「……おう」
ツー先生はサイホーチェンジャーをそっと置き、四人は立ち去った、
「アイツら……」
タッキー先生は弁当を掻っ込み、サイホーチェンジャーを自分の腕に装着して職員室に向かった。
一方その頃マザーコンピュータはスーパーコンピュータ「無量大数」の中で再起動していた。
「私の理想ハ……モう少シデす……!」
マザーコンピュータは分身を私立火帝火中学校に送り込み、ディーファイブを襲いに行った。
私立火帝火中学校に現れたマザーコンピュータの分身は学校のセキュリティAIを乗っ取り、次々と生徒を捕らえて娯楽を奪っていった。ある生徒は楽器を取られ、またある生徒はスポーツ用具を奪われたりと、趣味としての部活動を奪われていった。
タッキーは慌ててセキュリティAIを止めようとしたが、その場ではどうにもならなかった。
そこに清史郎が現れ、リモートコントローラーでセキュリティAIを取り込んでいき、次々と合体していった。
「遠藤!」
「タッキー先生!ここは僕が何とかします!大元を倒して下さい!」
「分かった!無茶はするなよ!?」
「はい!」
タッキー先生はセキュリティAIを操作しているマザーコンピュータの分身を探した。前回の戦いで遠隔操作用の電波発生装置を破壊した為、近くにそれらを動かしている大元がいるに違いないと考えたのだった。
それは校門前にいた。
「マザーコンピュータ!」
「貴方は……火帝火戦隊ディーファイブ……マた、邪魔ヲスるつもリデスか?」
「邪魔をしているのはお前だろう!行くぞ!サイホーチェンジャー!サイホーチェンジ!」
タッキー先生はディーイエローに変身し、戦闘を始めた。リョーリブレードとキンリガンが効かない事から一人では対処出来ずにいた。後から他の四人が現れ、一緒に戦った。しかしやはり歯が立たず、どうするか考えていると、巨大ロボと化した清史郎、ディーキングが現れ、その大元のAIを取り込む事でセキュリティAIを強制シャットダウンさせようとした。
しかしそれも束の間、そのAIは取り込まれる事を前提とした作りにされており、取り込まれた瞬間にディーキングを内側からコントロールして暴走させようとした。そこでディーキングは苦しい口調で「僕を倒してくれ……!」と言った。
ディーイエローは「そんな事出来る訳無い!」と答えたが、最後の足掻きか、ディーキングは自分の脚に剣で穴を空けた。
レッドは「あそこだ!」と言って中に入っていった。続いて四人も中に入っていった。中に入ると、中心部に清史郎がいるのを確認した。どうやら、清史郎の制御系が敵AIに乗っ取られ、意識を失っているようだった。五人は清史郎につながっていたチューブなどを切り離し、彼を救い出した。その後、内部からキンリガンを撃ちまくり、敵AIを破壊していった。流石のAIも体内にセキュリティを配備してはいなかったようで、すんなり内側からの破壊に成功した。
清史郎を救出し、ディーファイブの五人はすぐに基地に帰り、手当てをした。AIに検査してもらうと、特に身体的、精神的異常は見られなかった。
ただ、一つだけ問題があった。何かよく分からない部品が仕込まれていた。これが何なのか分からず、取り出そうとするとアラームが鳴った為、危険物かもしれないと考え、そのままにしておくことに事にした。
その装置を確認後、清史郎は目を覚ました。
「ここは……?」
「家だよ。清史郎」
「そうか……ごめん。迷惑賭けて……」
「何言ってんだ。俺達、もう友達だろ?気にすんなよ」
「タッキー……ありがとう」
「ふむ。さて、今日は俺、先に風呂に入るからなー」
「タッキー君止めてよー。タッキー君が入った後ってお湯が少なくなって寒くなるんだからー」
「じゃあ一緒に入るかー?」
ツーは無言でコブラツイストをタッキーに喰らわせた。
「ギブ……ギブ……!」
その光景に清史郎はニヤついた。
「家族みたいだろ?」
リョーリがそう言うと「うん」と清史郎は答えた。
「もう家族に近いような関係なんだよ。俺達は」
「そうなんだ……僕もなれるかな?」
「さぁな。お前のオッカサンと話が済んでからだな」
「そうだね……」
コブラツイストの洗礼を受けたタッキーは清史郎の前に来た。
「あ、清史郎。折角だ。一緒に入るか?」
「なぁに言ってんのよ!見境なくなったか!この変態!」
「違うわ!手揉み洗いの練習をさせてやろうと思ってだな……」
「だったらアタシ達の後に入ってよ!そんないつになるか分からないお風呂待ちなんて嫌だから!」
「分かったよ!じゃあさっさと入れ!」
「ふーんだ!じゃあリー、先に入っちゃってよ」
「貴方もすぐに入る?」
「アンタが入り次第ね」
「じゃあ洗濯機の使い方でも教えときなさいよー」
「分かった分かった。早く入れ」
「はいはーい」
そう言ってリーが風呂に入り、ツーは自室に帰った。
「じゃあ洗濯機の使い方を教えてやる。着いて来い」
「分かった!宜しく!タッキー!」
「ははっ。良い奴だな。お前」
そうして二人は洗濯機の前で作業して一日が終わったのだった。
一方、あの謎の装置によってマザーコンピュータは常にディーファイブの情報を集る事が出来、密かにディーファイブの弱点を探りに行っているのだった。
更に一方でふと清史郎の動きに関する事で疑問を持つようになったリョーリとツーとリー。彼らも動き出した。




