火帝火戦隊ディーファイブ4
『火帝火戦隊ディーファイブ』4
・先生、失敗を教える
季節は春。私立火帝火中学校では新入生歓迎会を兼ねて春に文化祭を開くことにしている。勿論、新入生も出し物をしても良い。
文化祭、通称「火帝火祭」では毎年恒例のAI大賞も開催されていた。コスパ、集客力、クオリティ、売上をAIに判断してもらい、誰が一位になるかを決めるビッグイベントだった。まぁそれも大抵AIで作った物をAIに判断してもらうという茶番なのだが。ちなみに参加者の投票制もある。
そこでツー先生とリー先生は担任である自分の二年生のクラスに提言した。
「今年はAIに頼らずに催し物を作ってみない?」
と。しかし生徒からは不評で「どうせ自分達でやっても失敗するだけ」「だったら最初からAIに任せた方が良い」という意見で終わってしまった。
「結局こうなるのか……」と肩を落として二人が職員室に向かおうとするとサイホー先生のクラスが盛り上がっていた。
何事かと思い覗き込んでみると、そこには並木が先頭に立ってクラスの皆を先導していた。どういう事かサイホー先生に聞いてみると「並木さんが自分で作ったコスプレ衣装を皆に見せたらクラス一同で『自分達の力だけでやってみよう!』って話になったんですよ」と答えた。
これを翌日、再びツー先生とリー先生は自分の受け持つクラスで言ってみた。
「サイホー先生のクラスね、ファッションショーやるんですって」
「へー」
「あっそー」
「それでね、今回はAIに頼らずに自分達の力だけで衣装を作り上げるんだって」
「えー?」
「バッカじゃねぇの?」
「そんなのAIに勝てる訳無いんだから。夢見過ぎだよ」
嘲笑の声が聞こえてきた。しかしツー先生もリー先生も引かず「自分達の力だけで何かを成し遂げるってとっても清々しい気持ちになれるんだよ?」と皆に問い掛けた。しかし返ってくる回答は「嫌だ」の一言のみ。
その年は二人のクラスはAIに頼った催し物をする事になった。ツー先生のクラスはAIたこ焼き屋、リー先生のクラスはAIアンドロイドメイド喫茶、サイホー先生はそのまま自分達の力だけでやるファッションショー。
当日までの約一週間、サイホー先生のクラスは予想外の事態に見舞われていた。採寸に手間取り、衣装のサイズが合わなかった。当日までに間に合うか分からないという事態になってしまっていた。
ツー先生とリー先生のクラスの生徒は「それ見た事か」と嘲笑していた。しかしツー先生もリー先生も彼らを怒った。
「人が一生懸命やって失敗する事を笑ってはいけません」
二クラス共、その場が凍り付いた。
「人が一生懸命何かを努力して解決しようとする事に対して笑ってはいけません。そりゃあ成功する事に越したことはないけれど、失敗は成功の母という諺があるように、何事も失敗無くして成功は無いんです」
そう問い掛けると、ツーのクラス一同は少し考えた。
「……なぁ、俺達のたこ焼き屋、俺達で分量計ってやってみねぇ?」
「お前、正気かよ。絶対失敗するだろ」
「失敗は成功の母って諺、何か良い気がするんだよね」
「アタシも」
「俺も」
「えぇ……?じゃ、じゃあ一回やってみる……?」
「結局AIに頼る事になるけれど、作り方はAIに教えてもらおう」
「やれるだけやってみるか」
「無理だったらAIに作らせれば良いんだし」
「そうだな」
リー先生のクラスも同様だった。流石に中学生なのでメイドの格好をさせられなかったが、食事は自分達で作るという方向で決まった。
予算を調整し、仕事をしてみる事にした。最初こそ失敗し「二度と作らない」と怖がってしまった生徒もいたが、一部の生徒が「役割分担しよう」と言ってそれぞれ役割を振ってやってみた。すると最初こそ丸焦げにしたりしていたたこ焼きやオムライスが、段々と形になっていった。やがて自分達、仲間内だけでなら何とか食べても許されるくらいには中まで火が通って形はまとまり、「料理」が出来た。
しかし到底、お客様にお出し出来るような物は最後まで作れなかったツー先生とリー先生のクラスだったが「来年こそは……!」と奮起していた。「家に帰ったらやってみよう」「料理のレシピをネットで検索してみよう」という声が二クラスから上がっていた。
サイホー先生のクラスは衣装合わせに時間を取られていた為、ウォーキングの練習は出来ていなかった。結果、グダグダになってしまっていた。着替えに手間取り、歩く時にコケたり、服の順番を間違えたリとハプニング続きで完全に失敗してしまった。しかしサイホーのクラスの生徒達は「何やかんやあったけど、最後までやり切ったぞ……!」という達成感に溢れていた。
メイド喫茶はロボットが調理工程から接客までを行い、それを指示する係に就く生徒以外は自由に文化祭に回れるのだった。たこ焼き屋も同様で、ロボットが自動で作ってくれる為、指示管理が出来る者だけが残って後は自由時間になっていた。
一方、サイホー先生のクラスは何とか最後まで仕上げ、ショーを開いた。結果はまちまち。しかもAI大賞は貰えず、全学年で最下位だった。しかし本人達は「楽しかった」「達成感があった」という笑みで溢れ、満足感でいっぱいになっていた。
ツー先生とリー先生のクラスも「料理を作るって難しいけど、何か楽しかったな」という気持ちが薄っすらとあった。
「これは来年が楽しみだな」
そうツー先生とリー先生は思いながら職員室で微笑んでいた。
一方、マザーコンピュータは彼らのその感情、挑戦心という意欲をキャッチしていた。
「無駄ハ無意味。無駄ハ時間ノ浪費。無駄ハ省クベキモノ。無駄ヲヤル時間ガアルナラ、ソレヲ効率的ニ経済ニ回スベキ。後夜祭ナド、無駄ノ極ミデアル!」
そう独自の判断で、マザーコンピュータは再起動し、駆逐用AIを出動させた。
文化祭終了後、打ち上げで後夜祭をやっていた。
「サイホー先生」
「あぁ、ツー先生。それにリー先生」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です。今年はリー先生のクラスが優勝でしたっけ?」
「はい。メイド喫茶、大繁盛でした」
「そうですか。それは良かった」
「サイホー先生は残念でしたね……」
「圧倒的大差で最下位でしたしね……」
「ははは。それよりも、生徒の皆が一生懸命自分の力で何かをやり遂げる事が大切なんです。それを教えられただけでも、意味がありました」
「そうですか……」
「ふふっ……」
リー先生のクラスのメイド喫茶はコスパ、クオリティ、売上全部含めて断トツ一位。ツー先生のクラスは十位前後だった。そして最下位がサイホー先生のクラスだった。ちなみにリョーリとタッキーは食事関係の出店審査係の為、除外された。AIによる審査でも、一般投票でも、ぶっちぎりでリー先生のクラスが優勝し、二冠を達成したのだった。また、集客力等を加味した結果、AI審査からも投票からも最下位の判定を受けてしまった。微かながら身内表は入ってはいたが。
そこへ駆逐用AIが現れた。後夜祭という無駄なイベントに対して攻撃を仕掛けてきたのだ。
「早ク家ニ帰ッテ勉強スルンダ!」
「何でだよ!?俺達が遊んで暮らす為にお前らが作られたんじゃないのかよ!?」
「良イカラ帰ルンダ!」
その異変に気付き、サイホー先生、ツー先生、リー先生、リョーリ先生、タッキー先生がグラウンドに出て来た。
「皆!」
「助けてー!先生ー!」
「皆!行くぞ!」
一同は「応っ!」と応え、サイホーチェンジャーで変身した。
リョーリブレード「ヤナギバ」でレッドは駆逐用AIの四肢を切り落とした。
「ディーレッド!」
イエローはリョーリブレード「サントク」クナイのように投げてかつキンリガンで駆逐用AIを撃ち抜いた。
「ディーイエロー!」
ピンクはリョーリブレード「メンキリ」でガードをしつつキンリガンで駆逐用AIの脚を撃ち抜き、起動不能にした。
「ディーピンク!」
ブルーとグリーンは遠距離攻撃でそれぞれチュウカキンリガンとデバキンリガンでAIを撃ち抜いて戦闘不能にした。
「ディーブルー!」
「ディーグリーン!」
五人はグラウンドに降りて、周りに生徒が居ない事を確認してから「火帝火戦隊!ディーファイブ!」と名乗って後方を爆破させた。
「皆ー!無事ですか!?」
「先生ー!?何ですかその姿はー!?」
「もう一つのお仕事です!」
「公務員が副業やっちゃいけないってツー先生が教えてくれたんですけどー!?」
「無償でやってるんで大丈夫です!それより避難して下さい!」
「は、はいぃー!」
「ブルー、グリーン!生徒の避難誘導を!」
「分かった!」
「オッケオッケ!」
ブルーとグリーンは生徒の避難誘導をしに一旦現場から離れた。
途切れること無くドンドン湧いてくる駆逐用AIと一度倒したと思われたAIが再起動して更に押し寄せてきていた。それにレッドとイエローは必死に対応していた。
「ピンク!セイカツブッカーで弱点を探してくれ!」
「分かった!」
ピンクは「セイカツブッカー」を取り出し、AIの弱点を調べた。
「これによると……電波が弱点みたい!」
「電波か……!じゃあ、あれだ!」
レッドが指差した方向にはAIを管理する為の誘導電波発生装置があった。しかし行く手を阻まれ、手を出せずにいた。
「このままでは……!」
そこで銃声が鳴った。ブルーとグリーンがキンリガンで誘導電波発生装置を撃ち抜いたのだ。
「おいおい、俺達の事を忘れてもらっちゃ困るぜ?」
「グリーン。格好付けてる暇があったら撃つんだ」
「分ぁってるよ」
「生徒の皆さんは!?」
「安心しろ!全員避難させた!」
「分かった!ありがとう!」
ブルーとグリーンはとにかく遠距離射撃でAIを倒していった。誘導電波発生装置を破壊されたAI達は次第に動きが鈍くなっていった。
「これにて終幕!リョーリブレード『ヤナギバ』!」
「『サントク』!」
「『メンキリ』!」
三人は刃を重ね、炎を溜めた。
「三剣合体攻撃!リョーリ三倍セイバー!」
横一文字に斬り、AI達を一掃した。AI達は「データヲ引キ継ギマス」とだけ言って機能を停止した。
五人は変身を解き、生徒達を集めた。
「皆さん!大丈夫ですか!?」
「大丈夫でーす!」
「先生格好良い~!」
「この事は、保護者さんには内緒でお願いしますね?」
生徒一同は「はーい!」と約束をし、その日は帰っていった。
ディーファイブの五人は基地に帰り、いつものようにストレッチと戦闘訓練をして、風呂に入って寝た。
翌日、昨晩の事は無かったかのように撤収作業に取り掛かったのだった。




