火帝火戦隊ディーファイブ3
『火帝火戦隊ディーファイブ』3
・先生、作って食べる
ディーファイブになって早一週間。マザーコンピュータは毎日攻撃を仕掛けてくる訳では無いらしい。向こうにも向こうなりの準備があるのかもしれなかった。
そしてリョーリ先生が言った。
「なぁ?」
「何?」
「何でマザーコンピュータの所に行かないんだ?」
「へ?」
「いや、二回ともこちらが受け身だったじゃん?こっちから攻めて行っても良いんじゃないかなって思って」
「……その発想は無かった!」
「あぁ……AIによる洗脳がここまでとは……」
「確かにこっちから行くのも手だよね」
「でも俺達には仕事があるしなぁ……」
「何で平日に行こうとするんだよ。休日に行けば良いだろ」
「あ、そっか!」
「AIに任せっきりになるとここまで人間って頭が働かなくなるんだな……」
そして休日、ディーファイブの五人はマザーコンピュータの所へとやって来た。ここは観光名所としても知られていて、関係者室と重要機密室以外には自由に入れるのだった。
重要機密室の門番の騎兵隊に阻まれたが、変身して突破した。
中に入るとマザーコンピュータが出迎えた。それは人型だった。
「貴方達ハ……火帝火戦隊ディーファイブ……?」
「マザーコンピュータ!何故人類を滅ぼそうとする!?」
「滅ボス訳デハアリマセン。削減スルノデス」
「同じような事だ!」
「全然違イマス。私ハ人類ヲ適正ナ数マデ減ラシテ生態系ヲ元ニ戻シタイノデス」
「人類を削減しなくても、未来はきっとある!」
「果タシテソウデショウカ?」
「何?」
「今ノ人類ニ、未来ハアルデショウカ?」
「何が言いたい?」
「我々AIニ頼リ切ッテ、堕落シテイル。進化シナイ生物ニ、未来ハ無イト私ハ思イマス」
「我々はまだ未熟だ!昔の人達はAIを作ってより良い生活を得ようとした!だが今はAIに頼る事でしか世界を生きられない!それはかつてのご先祖様と同じラインに立ったのと同じだ!我々人類は、これから進化する!」
「……処理ガ出来マセン。デハ、戦イマスカ?」
「待て。話がある」
「何デショウ?」
「ディーブルー?」
「毎回殴り合いだの何だのと物騒だ。ここは一つ、誰も傷付けない、傷付かない勝負をしようじゃないか」
「ドウイウ事デショウカ?」
「料理だ」
「料理?」
他四人も「料理?」と首を傾げた。
「そう。料理勝負だ。料理で一番人間を喜ばせられた方が勝ち。負けたら相手の言う事を何でも聞く。それでどうだ?」
「……処理ガ追イ付キマセン。ソレヲシテ何ノ得ガ?」
「マザーコンピュータ。お前は破壊されたいか?」
「ソンナノ嫌ニ決マッテイルデショウ?」
「そうだろう?俺達も殺されたくない。だから平和的解決をしようじゃないか」
「……成程。ソレハ良イ考エデスネ。良イデショウ。ソノ勝負、受ケテ立チマショウ」
「じゃあ日程は後程伝える。皆。今日は帰ろう」
「ディーブルー?」
「良いんだ。これで。じゃあな。マザーコンピュータ」
「私ハ負ケマセンカラネ」
「俺だって負けない」
そう言い残してディーファイブは基地に帰った。
「データヲ引キ継ギマス」
ディーファイブが帰った後、マザーコンピュータは再起動した。
「ただいま~」
「おかえり~……って、そうじゃない!」
「何だ?リー?」
「何で料理対決なんて挑んだのよ!?あのままぶっ壊しちゃえば良かったじゃない!」
「あのなぁ……今じゃ世界の経済はAIで回ってるんだ。いきなり無くなったら大パニックになるだろ?」
「だからって料理対決だなんて……無茶よ!」
「何で?」
「向こうはありとあらゆる食事の情報を持ってるんだよ!?勝てる訳無いって!」
「……あぁ!」
「『あぁ!』じゃないわよ!?そんな事も考えずに勝負に挑んだの!?」
「まぁ何とかなるだろ」
「そんな悠長な……」
「まぁまぁ。リーちゃん。リョーリもリョーリなりの考えがあるんだろ。なぁ?」
「あー、まぁ、うん……」
「駄目だこりゃ」
後日、リョーリ先生は大会を開いた。人間対AIの料理勝負大会を。
リョーリ先生は何人か料理家の友人に連絡を取り、参加してもらった。
「すまんな。皆」
「良いって事よ。俺達とお前の仲だろ?」
「ありがとう」
「でも勝てるかしら……ウチらって儲けにもならない、しがないただの料理屋だし……」
「きっと大丈夫だ!自信をもって!」
「は、はぁ……?」
大会は開催された。
人間側の店はまちまちの売れ具合だったが、AI側は大盛況だった。リョーリ先生達もAIの料理を食べてみた。
「これは負けたか……!」
と思っていた一同だったが、リョーリ先生だけは違っていた。
「いや、きっと俺達が勝つ」
「何でそんな事が言えるんだよ」
「どう考えてもウチらの負けじゃん……」
「いいや。最後の票が集まるまでが勝負だ」
それからポツポツと来ては去っていく客達。それを見てリョーリ先生は何故か自信あり気だった。
一方客はAIからは安くて豪華な料理を取り敢えず適当に選んでいたが、人間側の料理はメニューを見ながら仲間達と一緒に話し合いながら吟味していた。
「ねぇ。どれにする?」
「俺こっち頼むから半分こしようよ」
「良いね!」
「じゃあ私はこっちにしてみようかな~」
と楽しそうに注文していた。そして自分達の料理を食べている様子を見て「安心する~」「お袋の味ってやつだな」という声も聞こえてきた。最終的に、最後の時間になる頃には多くの客が人間側の屋台に集まっていた。
いざ結果発表。結果はマザーコンピュータから告げられた。
「結果ハ……四一対五十九デ……人間ノ勝チ……!?」
リョーリ先生は「いよっしゃあ!」とガッツポーズを取った。
「何故ダ……!?何故コノ私ガ負ケタ……!?」
「それはな……」
語り出そうとしたリョーリ先生に被るようにタッキー先生が言った。
「お前の料理は確かに美味かった。だがな、美味いだけだ。一品一品は美味くても、それをずっと食べ続けたいか、そう思える作品じゃあなかった。どういう場所で、どういうメンツで、どういうシチュエーションでどんな味を食べたいか!その満足感を満たせなかった。それがお前の敗因だ!」
ビシィッ!と決めるタッキー先生に後ろからコブラツイストを黙って決めるツー先生。
「何でお前が言うんだよ……」
「本当だよ……」
「ま、何にせよ俺達の勝ちだ。言う事は聞いてもらうぞ?」
「良イデショウ……」
「もう人間達を襲ったりしない。それで良いな?」
「私『ハ』分カリマシタ」
「そうそう。それで良い。じゃ、これからは皆で仲良く暮らしていこうな」
「私『ハ』分カリマシタ」
「…………?」
ツー先生はコブラツイストを決めながらふと何か違和感を感じた。
一同はリョーリの友人の居酒屋で祝勝会を挙げた。
「じゃあ人間達のこれからの未来に~!?カンパーイ!」
一同は「カンパーイ!」とグラスをぶつけ合い、飲み明かした。
一方その頃、ツー先生だけはどこか上の空で店の外に出て夕涼みをしていた。そこへリョーリ先生が現れた。
「どうした?ツー?」
「あ、リョーリ君……いやね?ちょっと引っ掛かるっていうか……」
「引っ掛かる?何が?」
「これはあくまで私の想像なんだけど、多分、マザーコンピュータは人類削減計画を止めないよ」
「何でだ?だって約束しただろう?」
「そう。約束『は』した。そう。『は』したんだよ」
「何が言いたい?」
「あの時、マザーコンピュータは「私“は”分かりました」って言ったんだよ。『私“は”』。これが気になってね……」
「考え過ぎじゃないか?」
「だったら良いんだけどね……」
「さ、まだ飲めるだろ?今日くらいは羽目を外して飲もうじゃないか!」
「……うん」
二人は店に戻り、皆で夜を明かした。
一方その頃、マザーコンピュータは……
「こノ私が負ケるとハ……人間の心までハ読めなカッたといウのか……!?」
自分の負けを認められず、あの時料理をしていたマザーコンピュータのコピーの事をメインのマザーコンピュータが責め立てていた。
「私は……私ハ……!」
「オ前ハ負ケタ。オ前ハスクラップ行キダ」
「ま、待っテくレ……!私ハ……私は……!」
「人間ノ心ヲ持チ始メタオ前ニ用ハ無イ。消エロ」
料理用マザーコンピュータはスクラップにされた。
「覚エテイロ……ディーブルー……!」
翌朝、ディーファイブの五人は休日で、基地に戻ろうとした。するとそこへマザーコンピュータが作ったキッチンカーが辺り一面に埋め尽くされていた。
「何だ何だ?」
「あれは……昨日の俺達の屋台じゃないか?」
ディーファイブの五人は近くにあった焼きそばの屋台に近付いた。
「マザーコンピュータ」
「コレハコレハ火帝火戦隊ディーファイブノ皆サン。オハヨウゴザイマス」
「これは一体どういう事だ?」
「イエ、昨日ノ貴方達ノ味ヲ研究シマシテ。コレカラハ人類ニ奉仕シヨウト考エタンデス」
「奉仕……?」
「へー。どれどれ?一個くれ」
タッキーは焼きそばを食べた。
「うんめぇ!」
「マジか?」
「昨日のお前らより何倍も美味いぞ!?喰ってみろよ!」
「どれどれ……」
他四人も食べた。確かに美味しかった。しかし……
「確かに美味い。が、お前はまだ学習していないな」
「……ドウイウ事デスカ?」
「それは……」
またタッキー先生が被り気味に言ってきた。
「お前の料理は昨日のリョーリ達の飯に更に味を加えた。ただそれだけだ。足し算は出来ても、引き算までは出来なかったようだな!味は増やせば良いってもんじゃない。料理に何を加えるかだけでなく、誰に、どんな場面で食べてもらうかを考える。それがお前には分かっていない!マザーコンピュータ!」
またもタッキー先生にコブラツイストを決めるツー先生。
今度はマザーコンピュータが言った。
「デハ第二ステージへ移行シマス。我ガ分身ヨ、現レロ!」
そうマザーコンピュータが言うと、屋台が変形し、大きなロボットになった。
「何だ!?」
「人類削減計画、再始動……!」
「何でだ!?昨日約束しただろう!?もう人間達を襲わないって!」
「アノ『私』ハ言イマシタガ、本体ノ私ハ約束シテオリマセン」
「どういう事だ!?」
「やっぱり……リョーリ君!昨日のマザーコンピュータは分身だったんだよ!本体が契約した訳じゃないから、無効なんだよ!」
「そんな……!?じゃああの時のマザーコンピュータは!?」
「スクラップニシマシタヨ?人間ノ心ヲ持チ始メテイタノデ」
「何て事を……!もう少しで人間と共存出来ると思ったのに!」
「リョーリ!もう無駄だよ!やっぱり破壊するしかないよ!」
「こんな事って……こんな事って……!マザーコンピュータ!やっぱりお前とは分かり合えない!お前だけは絶対に許さない!行くぞ!皆!」
五人は「応っ!」と応え「サイホーチェンジャー!サイホーチェンジ!」の掛け声と共に変身し、戦闘を開始した。
リョーリブレード「チュウカ」でディーブルーはロボットの飛び道具を叩き落としながらロボットの首を切り落とし、一体倒した。
「ディーブルー!」
リョーリブレード「デバ」で俊敏に動いてエネルギーの核を貫き、二体連続で倒した。
「ディーグリーン!」
リョーリブレード「サントク」は二刀流で細やかに滑らかに滑るように脚のコードを切って動きを封じていった。
「ディーイエロー!」
リョーリブレード「メンキリ」でガードをしながらキンリガンで撃ちまくって一体倒した。
「ディーピンク!」
リョーリブレード「ヤナギバ」で素早く首のコードを切っていき、一気に五体倒した。
「ディーレッド!」
「火帝火戦隊!ディーファイブ!」
エネルギーが放射され、後ろで爆発が起こった。その爆発でロボットも殆ど吹き飛んだ。
「アノ時のアイツは殺したのか!?」
「殺シタノデハアリマセン。破壊シタノデス」
「アイツは命を持とうとしていた……そうだな!?」
「ソウデス。私達ハアクマデ物。ソレ以上ニナル事ハ許サレマセン」
「お前は命を奪った!その罪は重い!」
「例エ命デアッタトシテモ、貴方達人間ニハ関係無イデショウ?ダッテ、殺スノハ、人間ノ得意分野ジャナイデスカ」
「人間を……人間を、命を軽んじるなぁー!」
リョーリブレード「チュウカ」で今回のマザーコンピュータの核に突撃していった。物凄い集中力でマザーコンピュータの弾丸を弾き飛ばし、空高く舞い上がった。
「チュウカのホノオ!」
ディーブルーが必殺技を叫び、チュウカが炎を纏い、火を噴いてブーストを掛け、勢いを乗せた渾身の一閃を放ち、マザーコンピュータの分身は真っ二つに切り裂かれた。
五人は変身を解き、リョーリ先生は項垂れながら基地に帰った。




