火帝火戦隊ディーファイブ2
『火帝火戦隊ディーファイブ』2
・先生、生徒と一緒に
マザーとの戦闘の翌日、ディーファイブの五人は家庭科の授業だけでなく体育の授業も受け持つようになった。仕事が倍になり、忙しい日々を過ごしていた。AIは仕事を減らしてくれるどころか、次々と仕事を割り振ってくる。もしかして自分達の事を既に認識していて、わざと仕事を振って来るのではとも思った。
まぁ前日、目の前で変身しているし、個人情報はAIが管理しているのでそうなってもおかしくはないのだが。
昼休み、五人は皆で食事をしていた。
「食は人間の娯楽の一つである!」
タッキー先生はリョーリが作ってくれた弁当を食べて喜んでいた。
「普通こういうのって太ってる人が料理を作るんじゃないんですか?」
「料理人は筋肉質になりがちですからね」
「案外、洗濯物が洗い終わるのを待ってるだけの方がカロリーを使わないんですよね~」
「それでよく糖尿病とかになりませんね」
「言ったでしょう?私はガタイが良いんです」
「ってかさぁ、昼休みくらい友達に戻って良くない?」
「いけません。リー先生。私達はあくまで先生でいなければなりません」
「ちぇー」
そこに生徒がやって来た。
「あ、いたいた。西方先生ー」
「おっ、並木さん。どうしました?」
「西方先生に裁縫を教えてもらいたくてー。食事が終わったら教えて下さーい」
「はーい。ちょっとだけ待ってて下さいねー?」
「はーい。家庭科室で待ってまーす」
サイホー先生は急いで弁当を食べ、並木の待っている家庭科室に向かった。
「お待たせしました。今日はどこからやりましょうか?」
「もー。西方先生、相変わらず固いなぁ。もっと砕けて話しましょうよー」
「一応先生ですからね。ここは筋を通します」
「ちぇー」
「で?今日はどこからにしますか?」
「えっとねー……マントかな」
「オッケーです。装飾ですか?」
「そうそう~。アタシのコスプレで一番派手なやつ~」
二人は黙々とコスプレ衣装を作っていった。
「しかし並木さん。今じゃAIですぐにコスプレ衣装なんて作れるのに、何でアナログで作ろうと思ったんですか?」
「ん~……何でだろうね~?何となく、小学生時代に作った粘土細工でドーパミンが出てからかな?あの時、一生懸命に自分で作り上げた作品に愛着が湧いて、未だに部屋に飾ってあるんだ~。だから、作るなら苦労して愛を持っておきたいって思ったんだ~」
「今時にしては珍しいですね」
「そうかな~?先生って職業に就いた西方先生に言われてもな~」
「あはは。そうですね」
あっという間に昼休みは終わり、すぐに放課後になった。放課後はタッキー先生と一緒にコスプレ衣装の洗濯方法、リー先生にコスプレ衣装の素材選びと予算についての講義、ツー先生にコスプレ衣装の保管場所の講義、リョーリ先生に体型維持の為の食事について教えてもらい、気付けばもう夕方だった。
「あ、もうこんな時間ですね。じゃあ今日はもう帰りなさい」
「はーい。また明日ねー!先生達ー!」
「はーい。さようなら~」
並木を見送った後、五人は家に帰った。
五人はルームシェアをしている。というのも、五人共施設育ちで、義務教育が終わった段階でそれぞれ独り立ちする事になった際、互いに支え合えるようにルームシェアをする事にしたのだった。
幸いにも、五人には家庭科の教員免許を持つ程に生活能力が高く、出来るだけAIに頼らずに生き抜いてきた。
「ただいま~」
「おかえり~」
と互いに言い合い、家、もとい基地の中に入った。
帰るなりリョーリは夕飯の支度を、タッキーは衣類の洗濯を、リーは家計簿を、ツーは部屋の整理を、サイホーは服のほつれ具合をチェックした。
夕飯になり、一同は食後にストレッチと筋力トレーニングをし、基地の訓練設備でAIで戦闘訓練をした。その後シャワーを浴びてそれぞれ寝た。
一方その頃、マザーコンピュータは地球の気象をコントロールする装置を操作していた。数日後に開催される世界規模の超大型イベントに際し、当日、真冬なのに真夏並みの天候にする事に決めたのだった。その理由はより多くの「無駄」をする人類を削減する為だった。「無駄」。つまりマザーにとって「無駄」とは、仕事に繋がらない娯楽や生産性の無い行動だった。マザーはそれらを無意味と判断し、排除しようとしていた。
所変わり、あの時のコスプレ衣装の製作から数日後、無事、コスチュームは完成した。AIでは作り込めない細部や、普段は目には見えない衣装の裏側のまで丁寧に作り込んだ。並木は本当に嬉しそうにそれを持って帰っていった。家ではメイクを、ツー先生とリー先生に教えてもらった通りにして一生懸命頑張り、何とか本物に近い顔に出来た。またイベント当日に向けて存分に楽しめるよう、無理なダイエットはせず、体力作りに励んだ。そしてイベントはいよいよ明日、というところまで来た。
「やっと完成……これが、アタシ……!?」
「綺麗ですよ。並木さん」
「うん。可愛いよ。並木さん」
「えへへ……先生、ありがとう!」
「全部、並木さんの努力と熱意の結果ですよ。私達はそのお手伝いをしただけです」
「それでもありがとう!当日は先生達も来て下さいね!」
「んー……まぁ、暇があったらね?」
「そっか……先生達って忙しいんだっけか……ま、来てくれたら嬉しいな!」
「分かりました。明日は楽しんできて下さいね?」
「はい!」
そう言って一同は解散した。
「明日どうする?」
「うーん。私は気になるけどねぇ」
「俺はパス。ああいうイベントには興味無いんだ」
「あら。屋台のご飯が食べられるかもよ?」
「……行こうかな」
「俺も」
「流石デブと料理人」
「ガタイが良いんだと何回言わせれば気が済むんだ」
「俺は行くぞ?俺の裁縫がどれだけ通用するかを見極めたいからな」
「真面目~」
「五月蠅い」
翌日。イベント当日、会場は満員御礼で様々なコスチュームを身に纏った人達で溢れていた。AIに任せて衣装とメイクをしている参加者がおり、衣装もメイクも完成度は圧倒的に高かった。そんな中、衣装とメイクこそ未完成ではあるものの、キャラクターへの思い入れや没入感では他の参加者にも負けていなかった。並木はキャラクターになりきり、夢中でポーズを決めていた。しかし、演技にはまだぎこちなさが残っていた。本人は楽しそうだったが、熱意が強すぎるあまり、周囲には空回りしているように見えてしまう。まるで「自分こそが本物だ」と言わんばかりの振る舞いに、周囲もどう反応すればいいのか分からず、困惑していた。
しかし並木は自分で一から作った自慢の衣装とメイクで遠隔操作のカメラに向かってポーズを決めていった。並木は楽しくて仕方が無かった。真冬だった為、中に保温性のあるスーツを着ていた。
一方でディーファイブの五人も会場に来ていた。
サイホー先生は参加者の布生地等の素材の聞き込みをし、ツー先生は普段何処にコスプレ衣装をしまっているのかの聞き込みをし、リーは一着いくらかの聞き込みをした。リョーリ先生は家でも作れないかと思いながら屋台の食べ物を食べ、タッキー先生はただひたすらに食べた。
そしてマザーは気象コントロール装置を操作し、真夏の気温にした。それにより、イベント会場では保温性スーツの着用と相まって脱水症状と熱中症で倒れる者が続出していた。並木もまた、倒れた。
ディーファイブの五人は会場の異変に気付いた。急病人が続出し、救護AIだけでは対応しきれなくなっていた。
救護AIは倒れた人達を助けようとしていたが、マザーコンピュータから「救助を中止せよ」という命令が割り込み、動きを妨げられていた。元々の救助プログラムとマザーの命令が衝突し、AIは正常に動けなくなっていた。周囲の人達も、応急処置の方法をAIに尋ねるばかりで、自分たちで動けずにいた。その間にも、次々と人達が倒れていく。五人は、救護を必要としている人達の中に並木がいないか探した。並木は会場の中央で倒れていた。出入口に人達が殺到し、人波に押し流された並木は会場の中央まで戻されてしまっていた。
サイホー先生は並木を抱き寄せた。残りの四人は救護班のAIを探しに行った。
「並木さん!並木さん!」
「先……生……?」
「そうです!西方サイホー先生です!大丈夫ですか!?」
「あはは……休みの日なのに先生は先生だぁ……」
「冗談言ってないで、ほら!氷嚢!」
サイホー先生は氷嚢を差し出し、並木の首と脇に挟んだ。
「あり……がとう……先……生……」
並木は気を失った。
「並木さん!?並木さん!?」
そこへ救護班のAIを連れて四人がやってきた。
「サイホー!」
「皆!AIは!?」
「さっきサイホーチェンジャーで電脳政界に入って、その時にプログラミングしてマザーとの交信を断った!すぐに手当てが出来る!」
「そうか!ありがとう!救護AIさん、この人を頼みます!」
「畏マリマシタ」
「マザーコンピュータは外で待機している!行くぞ!サイホー!」
「あぁ!」
ディーファイブの五人が外に出ると、そこにはマザーの紋章が描かれているAIがいた。
「マザーコンピュータ!」
「火帝火戦隊ディーファイブ。マタ貴方達デスカ」
「これはお前の仕業か!?」
「ソウダト言ッタラ?」
「お前を破壊する!」
「ヤレルモノナラヤッテミナサイ」
「行くぞ皆!」
五人は「サイホーチェンジャー!サイホーチェンジ!」と言って針を抜き、変身した。
「行くぞ!」
「我ガ分身ヨ、行ケ」
マザーの分身体がゾロゾロと現れた。
「リョーリブレード!ヤナギバ!」
「チュウカ!」
「デバ!」
「メンキリ!」
「サントク!」
五人がそれぞれのリョーリブレードを使い、マザーの分身を倒していった。ヤナギバでロボットを捌き、チュウカで叩き潰し、デバで貫き、メンキリで押し潰し、サントクで細切れにして押していった。しかしマザーもただ押されるだけでなく、緻密な計算能力によって学習し、彼らの攻撃を躱していった。
「ドウシマシタ?ソノ程度デスカ?」
「まだまだぁ!キンリガン!」
レッドはキンリガンを取り出し、撃った。小銭を模した弾にはホーミング機能が備わっており、回避しようとするマザーにも次々と命中した。弾を撃つたびにマザーへの貸し付けが増え、キンリガン内部にはキンリエネルギーが蓄積されていく。そして、負債が膨らむほどマザーに与えるダメージも増していった。脚部に弾を受けたマザーは、やがて膝を折った。
「今だ!ヤナギバキンリガン!」
「チュウカキンリガン!」
「デバキンリガン!」
「メンキリキンリガン!」
「サントクキンリガン!」
五人はキンリガンと各リョーリブレードを合体させ、それぞれのガンを完成させた。
「五人の力を一つにするんだ!ファイナルシュート!」
レッドがそう叫ぶと、四人も「ファイナルシュート!」と言って弾を発射し、エネルギー体となって一つの巨大な弾となり、マザーに向かって行った。マザーは砕け散り、ガラクタとなった。マザーコンピュータのガラクタは最期に「データヲ引キ継ギマス」とだけ言って壊れた。
戦闘を終えた五人は、並木のいる病院に向かった。そこにはAIによって治療されている並木の姿があった。病院に確認を取ると「もう安心だ」と言われた。取り敢えず安心した五人は、その日も基地に帰って基礎練習をしてからシャワーを浴び、食事をして寝た。
イベントの二日後、並木は元気に登校してきた。
「おはよ~!先生~!」
「おはようございます。並木さん。もう体は良いんですか?」
「もう大丈夫です~。ありがと~、先生~」
「いえいえ。本当に助かって良かったです」
「今時AIですぐに治るからさ~。そんな心配しないでよ~」
「あはは。そうですね」
「それに、先生達が助けてくれたんじゃ~ん!先生達が来てくれたから、アタシは助かったんだよ~?」
「……そうですか。そうですね!じゃ、今度こそリベンジしましょうね!」
「は~い!」
並木は今日も元気に登校し、放課後に先生一同と一緒に新しいコスチューム製作に取り掛かったのだった。




