火帝火戦隊ディーファイブ1
『火帝火戦隊ディーファイブ』1
・先生、燃ゆる
西暦3ⅩⅩⅩ年。世界は完全にAIによって管理され、炊事、洗濯、裁縫等を全て自分の力ではやらなくて良い世界になっていた。仕事はほぼ無くなり、勉強や体育は格好だけで収まり、もう毎日がホリデーのような生活を人間達は送っていた。誰もが遊んで暮らせる。そんな夢のような世界になっていた。
まるでユートピアかのように思われたその世界で、裏ではAIが画策していた。
「人類削減計画」
人類がいるから絶滅種の生物が出てくる。人類がいるから生態系が壊れる。人類がいるから地球温暖化が進む。人類がいるから人類が堕落する。
そう考えたAIは人類削減計画を企てた。
しかし人類にも希望はあった。何でもAIに頼らず、自分達の力で考えて行動する。そういった思想を持つ若者達がいた。彼らはキチンと大学へ行き、就職活動をし、やがて中学校の先生になった。
周りからは「今時AIに頼らずに自力でやるとか馬鹿だろ」と嘲笑われた。しかし彼らは「最後に勝つのはアナログだ」と言ってAIと立ち向かう事にした。
そしてAIは本格的に動き始めた。まず人類を太らせる方法だった。糖尿病患者や痛風患者を増やし、人類を削減しようと考えたのだ。
そこで私立火帝火中学校の教師、家庭科の料理の授業担当の粋司リョーリ先生は怒りを覚えた。
「このままでは肥満体の人間が増えて皆、苦しんで死んでしまう!」
そう思ったリョーリ先生はパーソナルコンピュータで世界を管理するマザーコンピュータにハッキングした。そこで人類削減計画を知り、これは見逃せないと思った。
そこへ裁縫担当の西方サイホー先生がやって来た。
「どうしました?リョーリ先生」
「サイホー先生……!この世界を管理するAIはマズいですよ!」
「そうなんですか?」
「これを見て下さい!」
リョーリ先生はサイホー先生にパーソナルコンピュータの画面を見せた。
「『人類削減計画』?またAIも新しい企画物の催しをするつもりなんですかね?」
「いいえ!これは本物です!これはマズい……!」
そこに洗濯担当の新井タッキー先生がやって来た。
「確かに、最近、糖尿病や痛風で病院に運ばれる患者が増えてますなぁ」
「タッキー先生!」
「タッキー先生もそろそろ肥満体になるんじゃないですか?」
「はっはっは。私はガタイが良いんですよ」
「そんな事はどうでも良いんです!早く何とかしないと……!」
そこへ生活科担当の青果ツー先生と金利担当の金リー先生が現れた。
「しかしマザーに勝てるとは思えませんけどね」
「そうそう。マザーは絶対です。戦うだけ無駄ですよ」
「ツー先生!リー先生まで!本当に良いんですか!?このままじゃ家畜より酷い扱いで殺されるんですよ!?」
「それはマズいですねぇ……どれ、ちょっと直談判でもしますか」
サイホー先生はパーソナルコンピュータでマザーコンピュータと連絡を取った。
「何を書いてるんですか?」
「何。本当にその計画が実行されているのか聞いてるんですよ」
「そんな素直に教えてくれますかね?」
「聞いてみるだけでも意味はありますよ」
返事が返ってきた。マザーコンピュータからは「その通りです」とだけ返ってきた。
「えぇ?本当に?」
「どうしました?」
「何か『その通りです』とだけ返ってきました」
「じゃ、じゃあやっぱり本当に……!?」
「慌て過ぎですよ。リョーリ先生。きっと何かの冗談とか企画ですよ」
「そうそう。明日は休みですし、皆でマザーの所に行って確かめてみましょうよ」
「そ、そうですね……」
翌日、マザーコンピュータの下へ五人は向かった。そこではAIの騎兵隊が待ち構えていた。
「な、何だ何だ?」
「貴様達ハ何者ダ?」
「俺達は昨日メールを送った者だ。昨日の返事が本当かどうか確かめに来たんだよ。なぁ?リョーリ?」
「あぁ。あの返事は本当なのかを聞きに来たんだ」
「アレハ『マザーコンピュータ』ノ御意思ダ。オ前達人類ヲ削減スル為ノナ」
「何ッ!?あれは本当の事だったのか!?」
「ソウダ。分カッタラサッサト帰レ」
「何かの催し物とかじゃないんですか?」
「違ウ。本当ニヤルノダ」
「そんな事させるかよ!」
タッキー先生は突撃して中に入ろうとした。しかし騎兵隊に邪魔をされ、その場に倒れた。
「ぐあっ!?」
「タッキー!」
「タッキー君!」
「マダ準備段階ダ。本格的ニ攻メ込ムノハ後日改メテ世界ニ報道スル。ソレマデ待ッテイルガ良イ」
「ふざけんな!」
「リョーリ君!」
「リョーリ!」
「今日ハ見逃シテヤル。サッサト帰ルンダナ」
騎兵隊が更にゾロゾロと現れ、今にも発砲しそうな態勢を取られ、五人は慌てて帰った。
「何なんだよアレ!」
「分かんないよ……でも、やっぱりAIは暴走するって事は昔から言われていたしね……」
「だがどうする?このままじゃ本当に飼い殺しに近い形で殺されるぞ?」
「じゃあこっちから守りに入らないと……」
「いいや、違うな」
「サイホー?」
「守るんじゃない。こっちから攻めに行くんだ」
「でも、どうやって……?」
「俺達にはコレがあるだろ」
サイホー先生は自分の頭と腕を指差した。
「頭と、腕?」
「そうだ。リーちゃん。君はどうにか金の工面をしてくれ」
「え?何をするの?」
「戦隊を作る」
「戦隊ぃ?そんな子供じゃあるまいし……」
「だけどアレを見て何もしないで殺されるのを待っていろと言うのか?」
「それはそうだけどさぁ……」
「兎に角、今は戦隊を作るしかないんだ。金はリーちゃん。基地創りはツーちゃん、リョーリは精力が付くようなメニューを考えてくれ。タッキーは俺と一緒に来てくれ」
「基地創りって……簡単に言ってくれるけどさぁ……」
「お金だってそう簡単には集まらないんだよ?」
「何とかするしかないんだ!やろう!」
「やってどうすんだ?後は国に任せるのか?」
「今や国だってAI頼りだ。機能してない」
「じゃあ誰が戦隊を?」
「まさか……?」
「そう。俺達だ。俺達が戦隊だ!」
一同は「えぇ!?」と驚きの声を上げた。
「俺達が戦うのかよ!?」
「そうだよ。他に誰がやる?」
「国ー……は駄目だしぃ、自衛隊も軍隊もアテにならんしぃ……」
「結果、アタシ達か」
「やろう!人間の底力を見せてやろうぜ!」
一同は「応っ!」と手と手を取り合い、各自、仕事に取り掛かった。一年掛けて、皮肉だが、AIに頼って戦闘訓練をし、変身テストも済ませた。
一年後、彼らは二十四歳にして遂に戦隊を作ったのだった。
「出来た……!」
「やっとだな……!」
「飯……出来たぞ……!」
「基地創りの方も何とか……!」
「ほぼ全部私が揃えたお金で作った物だけどね……」
五人はリョーリ先生が作ったご飯を食べ、眠りに着いた。
その後、突如アラームが鳴った。AIの暴走が発覚した合図だった。
「何だ!?」
「AI!マザーコンピュータだよ!タッキー!」
「そ、そうか!」
「これを使うんだ!」
サイホー先生はブレスレットのような物を四人に渡した。
「これは……?」
「サイホーチェンジャーだ!これで変身するんだ!」
「分かった!」
「オッケー!」
「さぁ、行こう!」
五人は街に繰り出た。街では人々が騎兵隊に襲われていた。
「助けてくれー!」
太った人間達は足がもつれ、次々と被害に遭っていた。
「止めろ!マザーコンピュータ!」
「貴方達ハ……?」
「お前に反旗を翻す、正義の味方だ!行くぜ皆ぁ!」
四人は「応っ!」と応え、ブレスレットから一本の針と糸を抜いた。
「サイホーチェンジ!」
そう言って五人は赤、青、緑、黄、桃色のスーツが五人を包んだ。
「何奴!?」
五人は空高く舞い、ビルの屋上に立った。
「ディーレッド!」
「ディーブルー!」
「ディーグリーン!」
「ディーイエロー!」
「ディーピンク!」
「火帝火戦隊!ディーファイブ!」
戦闘における初変身によるエネルギーがあり余り、暴発して屋上が爆破された。
「しまった!」
「格好付けるのに必死で二次被害が!」
「まぁこの際仕方ない!行くぞ!」
五人はビルから飛び降り、騎兵隊を倒していった。マザーはその場から逃げようとしたが、ディーレッドが刃で動きを封じ込めた。
「これで終わりだ!」
五人は一斉に刃を立て、マザーの意思が宿る騎兵隊を倒した。しかしマザーは散り際に言った。
「私ハAI。バックアップハ済ンデイマス」
「何っ!?」
「ディーファイブ。其ノ名ハ忘レマセン……」
騎兵隊は壊れた。同時に「データヲ引キ継ギマス」という音声が流れて液晶画面は切れた。
AIと人間の戦いが、今、火蓋が切って落とされた。




