16.ぶり返してきた感覚
どうやって家に戻ってきたかの記憶はあんまりない。
玄関のかぎをかけて靴を脱ぐ。
部屋に入ってリュックをおろすと思ったよりもパンパンになっていた。
私は床に座り込んでリュックを開ける。
一番最初に出てきたのは大量の乾電池だった。
棚に並んでた単三電池を全部持ってきたんじゃないだろうか?
8本いりの電池が5束もでてきた。
その次は乾電池でスマホを充電できる充電器。
必要だと思っていたものをちゃんと持って帰ってきていた。
取り出して電池の横に置く。
そしてカップ麺数個とレトルト食品がみっちり詰まっているのを取り出していく。
ようやくカセットコンロが顔を出してきた。
箱をつかんで引っ張り出そうとするけれど、なんだかうまくいかない。
引っ掛かってるわけでもないのに取り出せない。
リュックに詰め込んだ食糧をもう少し取り出して再度持ち上げようとするけれど、なんだか自分の手に力が入っていない。
「……手が笑ってる」
よく見れば自分の手が震えていた。
そしてさっきゾンビを殴り飛ばした時の感覚がふとよみがえってきた。
何か硬く、でも柔らかいものを棒でたたきつけたような感触だったと思う。
ふと気が付いて玄関を見るけれど、拝借したはずのバットが見当たらなかった。
コンビニに置いてきたのかもしれない。
何度か深呼吸をしてみたけれど手の震えが止まらなくて、しょうがなく荷解きをやめる。
カセットコンロのほかにガスも3本入りがちゃんと入っていたので落ち着けば使えると思う。
立ち上がろうとして、自分が立てないことに今更気が付いた。
「やっぱり、精神的にダメージが大きいなぁ……」
わかっていた事ではあった。
ゾンビに会ったら倒さないいけないといはいえ、元は人間だったんだよね。ニュースを見る限りゾンビになるのは一度死んだ人みたいだけれど。
しかも私は必要だからってリュックの中に詰めたものを持ってきちゃったんだもん。
そして、泥棒じゃん。お金払ってないもん。
「でも、しかたがなかったんだもん」
私は自分に言い聞かせるようにつぶやいて息を吐く。
机の上に無理やり手を伸ばして置いていったスマホを手に取る。
電池は残り45%、通知なし、両親からの返事もない。もうきっと誰もいないと思うしかないじゃない。
でも、だって私は生きてるんだもん。
結局この日、帰ってきてから私は何も手につかなかった。




