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第6話 消えたアカウント、止まった秒針

 その絵がめちゃくちゃうまい中2の子のハンドルネームは「カリン」だった。


 カリンちゃんは絵のうまさもずば抜けていたけど、何より凄いと思うのはほぼ毎日イラストをあげていたことだった。


 中2だったら学校や勉強、部活もあるのにすごい。


 カリンちゃんはイラストだけじゃなく毎日の日常も発信していて、


「友達とマック行った」

「飼ってる犬と公園で遊んだ」

「かわいい服が買えてラッキー」


みたいな明るい投稿もしていた。


 毎晩SNSにあげるイラストは、投稿されると瞬く間にいいねがつき、コメントもつく。


 そのコメントにもすぐに「ありがとうございます!」って返していて、そのやり取りまで楽しそうだった。


 毎晩投稿されるイラストが楽しみではあるけど見るたびに落ち込む、そんな日が続いた。


 でもある日、カリンちゃんのある投稿からなぜ毎日こんなに絵が描けるのかが分かった。


 カリンちゃんは学校に行っていなかった。




─────────────────────




「今日も起きたら10時だった。これから絵、描く」


 平日にもそんな投稿をしている。


 私が不登校になりかけたときは焦りと不安でしんどかったけど、カリンちゃんからはそういうのが一切感じられなかった。


 やっぱり凄い人って学校に行ってないくらいどうってことないのかな。


 私は漫画を描くことで精神的に安定したし、カリンちゃんも絵があんなに上手いんだから毎日が楽しいんだろうな。


 そう思っていたある日、カリンちゃんのイラストにこんなコメントがついた。




「しょうもない絵。よくこんなのあげられるね」



 そのコメントのあと、カリンちゃんはぱったり投稿しなくなってしまった。



─────────────────────




 カリンちゃんが投稿しなくなって3日がたった。


 あんなに毎日イラストを、そして日常を発信していたのにそれが完全に止まってしまい、私は気になってしょうがなかった。


 やっぱりあの意地悪なコメントがショックだったんだろうか。


 あんなにきれいな絵を描けて毎日楽しそうにしていたのに、あんな一言でそれは簡単に崩れてしまうんだ。


 カリンちゃんはDMを開けていたのでそこからメッセージを送ってみようかと思ったけど、もともとコミュ障でこっちから話しかけるなんて無理だしそもそも何を書いていいか分からない。


 それでも何度も文章を打ってみては消して、結局送れなかった。


 自分と比較して落ち込むこともあったけど、私はカリンちゃんの絵が好きだ。


 だからまた描いて欲しいと思ってたんだけど、投稿が止まってから一週間後、カリンちゃんのアカウントは消えていた。


 あんなにたくさんの絵をあげていろんな人と楽しそうに交流していたカリンちゃんは、SNSから姿を消してしまった。


 塩見さんが亡くなったときのような喪失感を、私はこのときも感じた。


 人はこんなに簡単にいなくなってしまう。


 それも今回は些細なコメントがきっかけだ。


 それだけが理由じゃないかもしれない。


 けれど人が積み上げたものが崩れるのは一瞬だ。


 これがSNSの世界。


 それを思い知った私はすっかり怖くなって、自分の漫画を公開するのはとても無理だと思うようになった。


 スマホを開くだけで、胸がざわつくようになっていた。


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