第5話 青い光とせめぎ合う焦燥
塩見さんの告別式から一週間は何も手がつかなかった。
勉強も、漫画を描くこともピタッと止まった。
夏休みで学校も部活も休みでよかった。
塾もちょうどお盆休みで夏期講習もなかったから、私は毎日ぼんやりと過ごしていた。
人って死ぬんだ。
今まで当たり前のように、自分の周りの人はずっと同じようにいるものだと思っていたけど、そんなことあるわけなかった。
人が亡くなったらイエス様のもとに行くというのもあるけど、私はそんなに死を深く考えていなかった。
でも、死は誰にでも平等に訪れる。
それがいつになるかは誰にも分からない。
今日あるものが、明日もあるとは限らない。
そう思うと、自分がやりたいことを今やらないととんでもなく後悔するんじゃないか。
私はそう思い始めていた。
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9月になり、行友教会は一気にいろんなことが動き始めた。
その中心にいるのは高辻さんだ。
高辻さんはIT関係の仕事をしているのもあり、その強みを活かしてオンライン礼拝、インスタ、そして牧師夫人の夕香さんのブログも始まっていた
インスタはもともと読み専でアカウントを持ってたので、教会アカウントもフォローした。
高辻さんが運営しているそれは正直添えられた言葉も少なく、教会の日常を淡々と写真であげているだけだったけど、それを見てふと思った。
私の漫画をSNSで公開したらどうなるだろう。
高辻さんが読んでくれたように、他の人にも読んでもらったらどんな反応が来るのか、想像もつかなかった。
そもそも誰にも読まれなかったらどうしよう。
でも、読まれたらそれはそれで怖い。
Xやインスタで自作の漫画やイラストを公開してる人も多かったけど、そこに厳しいコメントがついてるのも何度か見かけ、それですっかり怖じ気づいていたのもある。
でも、ここで私は立ち止まっていていいんだろうか。
そうしてるうちに10月になり、秋が一気に深まっていった。
まだまだ暑い日もあるけど、塩見さんが亡くなった頃の暑さよりかなり落ち着いてきていた。
こうやって時間は過ぎていってしまうんだ。
焦りと不安、それらがせめぎあってどうしたらいいのか分からないまま、時間だけが過ぎていった。
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「この青い色、杏奈ちゃんは色白だからすごく似合うと思うよ」
10月になり教会でバザーが行われ、高辻さんは服やアクセサリーを出品していた。
その中で釘付けになった青い石のついたブレスレットを買わせてもらった。
早速腕につけると、それはキラキラと青く光った。
ずっといろいろ焦りは感じていたけど漫画を描く手は止まらなくて、試行錯誤した漫画を高辻さんに今は5ページ目まで見てもらっていた。
全部描きあげてから見てもらおうかと思ったけど、1ページを描き終わったら早く見てもらいたいという気持ちになっていた。
高辻さんからもらったフィードバックを次に生かしたり、描き直したりして、私の漫画は見違えるように読みやすくなっていった。
これならSNSにあげても大丈夫かもしれない。
そう思い始めた10月後半、ある一人のアカウントが気になった。
その子はプロフィール欄に中2女子と書いていて私と同い年だったんだけど、ほぼ毎日イラストをあげていた。
そしてそれが抜群にうまい。
フォロワーも3000を越え、いいねも100近くあった。
こんな子がいるんだ……。
同い年なのに、まるで別の世界の人みたいだった。
本当に世の中にはうまい人がたくさんいる。
そう考えると私の漫画なんて大したことないのかもしれない。
私なんかがSNSにあげていいんだろうか。
投稿する画面を開いては閉じて、私はまたぐるぐると悩み始めた。




