第38話 サナエさんから、この星の理と現状を聞きました。
魔女は絶大な力を持っています。
しかし、この星の創造主とこの星を管理する魔女は、過度な干渉はしないし、覇権行為はしません。
すなわち、各王国の自治にまかせると言うことです。
但し、文明レベルは3に止めることは、大前提とのことです。文明が暴走する様は、この宇宙の至る所で見られると、パラレルワールド管理局が言っており、せめてこの星は、そうならないよう創造主との契約がなされました。
パラレルワールド管理局とは、全宇宙を見ており、人類の進化を手助けして高度な文明、文化を育んでゆけるよう支援しているレベル10の生命体です。そのように星の発展を手助けするも、場合によっては消滅を見届けることもあります。
文明レベル3に維持するために、魔女の家は何をしているのでしょう?
まず、エネルギーの蓄積をさせないよう、研究や行動を事前に察知して、取り除いています。加担した人は開拓村送りにします。研究文献やサンプルなど、ヒントになるものは抹消します。
花火や火薬は鉄砲につながるので禁止対象です。
但し、パラレルワールド管理局との契約では、文化レベルが5以上になって、アルファ因子が既定値以下になれば、文明レベル4への道が開かれるとのことです。
(アルファ因子って何?)
さて、この星の状況について、サナエさんに聞いてみました。
社会
人口およそ600万人(全人識別台帳あり。但し、魔の国は除外)、
失業率は3%、スラム率は1%、貧困率3%
平均寿命は160歳、最高齢群は195歳、赤子の死亡率は0・5%
農業86%、商人1%、生産業5%、治政3%、その他5%
農業税率70%、その他20%
教育
識字率は95%
意識
悲観度下限 マイナス15%、幸福度上限 プラス25%
意識異常者発生率0・0001%
うーん。これが正常なのかどうか、わかりませんが、いいんじゃない?。
3%の貧困層は、食事が2食以下らしい。これは、改善しなくては思います。
年齢別人口推移を見ると、ここ500年ぐらい人口減少に陥っているように見えますね。調査が必要です。
「サナエさん、この意識異常者発生率0・0001%って、100万人に一人ですね。これは何でしょう?」
「稀に、著しく悲しみや喜びを感じる人が発生します。これをアルファ因子によるものと伺っております。時に社会不安を増長させることがあるので、この星では要監視対象となります。子孫は残せません」
「わかりました。わたしが、どうこうできることではありませんね」
単純に考えて、この世界は一次産業が9割です。物々交換が主流ですが、貨幣も流通しています。王政の維持に必要な人員が全体の1%と考え、王城や道路などのインフラの維持が人換算で10%、戦争は無いにしても自衛騎士や警備に10%などを加味すると30%は最低必要なのかな?
いや、あくまで結果を見て、必要ならば手を出すというところで、止めておきます。王国の施政まで首を突っ込むことはしません。でも、衣食住に苦しむ人があれば助けたいですね。
哲学的な話は得意ではありませんので、結果を拾うことにしました。
この星の創造主と初代魔女ハナは、この星を幸せだと思えるものにしたいと願い、その仕組みを織り込みました。
(うーーん。私の依り代だったサヤカ・ミズホは幸せだったのでしょうか? 動くこともままならず、5歳であの世に旅立った、あの少女は??)
その仕組みは、住民の意識を写し取って、解析することです。多くの人は、神殿参りを欠かせません。その時にデータどりをします。
データは善にも悪にも、覇権にも利用できます。
彼らの手記にも、そのことで苦悩があったようです。
お二人の結論は、データどりはできるようにしておこう、それをどう使うは、後で考えよう、と言うことになったそうです。そして、結局、データは使われないまま、魔王サクヤは封印の間に、ハナはガーディアンになりました。と、ハナの手記からです。
解析と言うことでは、魔女ハナの娘であるアイリスの右に出るものはいませんでした。でも、彼女も使わないまま、地球に帰ってしまいました。
と言うことで、誰も手を付けいない膨大なデータがあります。
無謀な私は挑戦したのです。魔女の家にあるコンピュータの端末に対峙しています。
統計解析については、前世で少し齧ったことがあります。
何を得たいのか?、指標はどれにするのか?、結果の検証は?
急ぐ必要はありません。のんびりゆきましょう。まず、データの分類からですね。
魔女の家での朝は早いです。小鳥のさえずりは、結構目覚ましになるのです。そう、目覚まし時計のアラームに匹敵します。それに、ジジがやってきます。なぜか、猫なのに早起きなのです。
家の東に水場があります。山肌から流れ出る水が、竹の水路を辿ってちょろちょろと流れています。それを手ですくって、顔を洗います。
(さっぱりした!)
ジジを伴って、水場の横から東へ進み、家をぐるっと一周、ゆっくりと30分ほど歩きます。ほんと不思議、外から見ると小さな茅葺の家なのです。
魔女の村から女性が3人、やってきました。
「おはようございます!」
「おはようございます」
元気な、朝の挨拶が交わされました。彼女たちは、私たちの朝食を持ってきてくれたのです。サナエさんたちも料理はするのですが、彼女たちが魔女の家、すなわち魔女の星の管理が主です。そういうわけで、家政婦は魔女の村からやってきます。
さて、今日は、ちょっと遠出をしてみようと思います。
家政婦のロゼッタにお弁当をこさえてもらいました。それを大事に持って、飛空艇に乗り込みます。
行く先は、開拓村です。飛空艇は、魔法で動いています。だから駆動部はありません。
ミズホ王国の白金の都のから、北に約200キロメートル先に開拓村があります。ゲートを超えてきた人を迎えるための新地です。開拓者は主に犯罪者などが送られてきます。奴隷ではありません。給金が支払われ、真っ当な生活が保証されています。
この世界での幸せとは、どのようなものなのか、開拓村の彼らに聞いてみようと思ったのです。犯罪や社会になじめなかった人たちがどのように暮らしているのか?。幸と不幸の極限を味わった人たちに聞いてみましょう。
魔女の家に戻って、端末の前に座っています。今日、話を聞いた人々のデータを解析してみました。
確かに、平均的な値からは外れています。まあ、3シグマの外という表現が適切とは思いませんが、どうも、この管理方法がとられているようです。ちょっと乱暴な気もしますが・・・・。
幸せとは、悲しみの裏返しです。悲しみが深いほど、それが解消された反動は大きな喜びとなり、幸せを感じるでしょう。この世界では、このマイナス2からプラス3の中に入るよう制御されています。例えばスラム街の子供が2日食べられない日が続いたしても、そのあと3日は食事にありつける。10日も食べられない日が続くことはありません。ほどほどの悲しみと、ほどほどの満足。それが、この星の理なのです。
底なしの欲望を覚えず、我を忘れるような喜びもない。死の苦しみ、生きる苦しさも、病の苦しみも、老いの苦しみもマイナス2にとどまるように、コントロールされています。魔女の家はその任務を遂行しているとのことです。そして、その仕組みの一つが開拓村だそうです。
この星の魂を進化させてゆく絶対的な意図があると、魔女の家の一番奥に座っておられる神様がおっしゃられていました。
(恵さんへ。今日は重い話に至ってしまいました。当分悩みそうです。自由とは何か、この星の在り方、理などが、すんなりとは呑み込めません。しかし、この世界は神様の意思が反映されています。当然だと思っていいのでしょうか)




