第31話 お椀の中心で愛を叫んでみた
「お椀てなんだ?」
「ほら、スープ等を入れるポウルのことだよ」
「うーん。愛を叫ぶと言っても??」
「僕なら、”アランさーん愛してるー”って叫べますよ」
マキ君が、アランを見上げながら熱く、のたまわっています。
「真面目に。お椀ってどこにあるの? 中心と言うからには、大きいのでは。まず、お椀が何なのか、どこにあるのかを調査しましょう」
「その前に、この不思議の出所はどこなの?」
いつになく真面目な様子の私に、皆が注目しました。
「確かに、まずこの話がどこまで真実に近いのかを探る必要がありますね。そもそも、7不思議そのものから、真実度をチェックする必要があると思います」ドラコちゃんも言いますね。
「すみません。私が安易に情報提供したばかりに・・・・」
カトリーヌちゃんが、しょぼんとしています。
「あっ、いやそれはみんなも悪い。100%解決できるものと思い込んでいるのじゃないか!」
と、アランがもっともらしいことを言いました。
「そうじゃないよ。信じなきゃ、面白くないよ。真実度が分かったら、もうそれは不思議とは言わない!」
おぉぉ!。マキ君が覚醒したよ。
揺り戻しがありました。
まあ、難しいことはさておき、楽しもうと結論に至ったのです。
おとぎ話や、学園の図書館、町の年寄り、行商人など、幅広く情報を集めました。
おとぎ話にはドラコちゃん、図書館にはカトリーヌちゃん、年寄りにはマキ君、行商人にはアランを充てました。私とアンズちゃんは、王城の書庫や、他の王国の王女や王子へ、調査を広げました。
しかし、手がかりが一向にありません。
愛を叫んだ人が居るはずなのですが。
「ジジ、心当たりはない?」
「私に聞かれてもねー。そうだ、魔王に聞いてみたら?」
「でも、魔王ラムジが居るアクアの町は遠くて、ちょっと簡単にいけないよね」
「うーんとね。神殿から魔王を呼び出せるよ」
「もうしもうし・・・。マオウさーん」
「あぁ・・。ラムジだが」
おぉぉ!、繋がりました。これこれしかじかと、お話を進めると。
「そうだな。それは魔獣になったものが俺を呼ぶ状況に似ているよ。周囲からみると、ほんのりと淡い光の中で魔獣が叫んでいるように見えるのかな?」
ここは、学園の私の部屋。
アンズちゃん、アラン、カトリーヌちゃん、ドラコちゃん、とマキくん、私とジジで、6人と一匹。なぜかミヨ先生が同席している。
「”お椀の中心で愛を叫んでみた”がわかりました。魔獣が魔王を呼んでいる状況だそうです。魔王に聞きました」
「えぇっ。魔王って居るの? 魔獣って居るの? 怖いの?」
とマキ君が震えています。
「魔女と聖獣、魔王と魔獣はセットです。どちらも怖いものではありません。身近ではアランが魔獣に近づいています。ときどき、興奮すると耳や尻尾が出ていますよね」
「えぇっ!。アランさんが??。でも・・・・僕の愛は変わらないんだもん!」
マキ君、震えながら言っても、ダメですよ。
「魔獣や魔王のことは内緒にしてくださいね。これは秘密事項です」
「「「わかりました。魔女様!」」」
そうなんです。私が第4代目魔女になったことが、学園にも知れて渡っております。
再び、神殿電話でラムジのおじさんを呼び出しました。
「マオウさーん、ここに白狐の魔獣候補がいるのですが、お試しでマオウさんを呼んでもいいですか?」
「いいよ。でも広い場所で人が少ないところが良いね。そこは白金の都だね。ならば、北へ馬車で2時間ほど行ったところに草原がある。夜、そこにきてくれるかな?」
「じゃあ、お願いします」
10歳の子供たちは、夜の外出は認めてもらえなかったです。マオウさんには、丁寧に謝罪しました。
”お椀の中心で愛を叫んでみた”は解決しました。
まあ、滅多に巡り会うことが無いので、7不思議に残しました。
(恵さんへ。魔王も居ました。怖くないです。とっても優しそうなひとです)




