シーン13
――???年前――
四季が家を出たのは約束の時間よりずっと早い時間だった。 婚約者との初デートにワクワクしてしている気分というのもあったが、後から来た彼氏が「待った?」と言い彼女が「おそーい!」と返すというシチュエーションに憧れていたというのもあった。
「四季ちゃん……?」
そこで自分の家から出てきた春香と鉢合わせになり、「おはよう春香ちゃん」と上機嫌な声であいさつをする。
「おはよう……どこかに行くの四季ちゃん?」
「うん、今日は晴夜くんと初デートなんだ~」
デートという言葉を聞いた瞬間に春香の表情が曇るが、四季はそれには気が付かずに更に、「それで、晴夜くんとの待ち合わせの場所に向かうとこなんだよ~」と上機嫌で続ける。
「……るいよ……ずるいよっ!」
次の瞬間に普段の春香からは想像出来ない程に怖い声を上げたのに、四季はゾッとなり春香を見返した。
「ずるいって……」
「だってそうでしょう? 四季ちゃんは一番最後にやって来たのに晴夜君の”婚約者”になって……わたしや立夏ちゃんだって晴夜君の事は大好きなんだよ!!」
晴夜と一番に仲良しになったのは間違いなく春香だった、続いて立夏。 冬子に関してはあるいは晴夜が赤ちゃんの時にも会っているのかも知れないが、互いに交流を始めたのは立夏の後である。
千秋は従妹だけに彼女が生まれた後は年に数回は必ず会う機会もあり、交流を始めた明確な時期は曖昧だが、それでも四季よりは早かったと言っていいだろう。
「……春香ちゃん、僕は……」
「四季ちゃんは晴夜君を独り占めにする気なんでしょう!!」
恋心というものではない、大好きな男の子の友達が自分達と遊んでくれなくなるという不安……すでに立夏という友達が遠くへ行ってしまい、更には晴夜までどこかへ連れていかれるかのような恐怖だった。
「違う……違うよっ!!」
この時の春香には四季の声は聞こえていなかった、ただ一方的に自分の中の感情を吐き出していただけだった。
「そんな四季ちゃん何かどっかへ行っちゃえ~~いなくなっちゃえ~~~!!」
大声で叫んだ春香は、四季の静止の言葉も聞かずにどこかへと走り去った……。
この時、どうしてわたしは四季ちゃんの言葉を聞こうとしなかったんだろう……。
四季ちゃんがどうして晴夜君の婚約者になろうとしたのかは今でも分からないけど、彼女には彼女の理由があったはず。
あるいは、最後に、それも他所からやって来た存在という不安があったのかも知れない。 この時のわたしは自分の事しか考えていなかった身勝手な子供だった、でも……四季ちゃんは違った。 だって、彼女は晴夜君の事を守ってくれたんだもの……文字通りの命がけで……。




