ヴァンパイアを追いかけろ(4)棹音視点
棹音は、もと人間だ。しかし妹に血を吸われてヴァンパイアになってしまった。
かわいがっていた妹に突然血を吸われたときはショックだった。
でも今は受け入れている。立ち直りもしている。
俺はヴァンパイアになることを望んでいない。というよりも人間でありたいし、健全な人間生活を送りたい。
俺はコンツェルンの御曹司なのだ。未来があるのだ。だが、周期が襲ってくると、血を吸いたくなる。付き合ったことがない女性の血を。血を吸わないと、苦しくなる。死ぬほどの苦しみが襲ってくる。
今回もそうだった。
血を吸えば時とともに、その者もヴァンパイアにさせてしまう。
それがわかっているから、尚更苦しい。だからできれば我慢したい。
でもそうすれば、死が待っている。
生き延びる方法は三つ。
血を吸わずに死ぬか。
血を吸うか。
もしくは、ネオ・ヴァンパイアを倒すか。・・・最後の方法は未だ果たせずにいる。
そして。・・・先日、遂に俺は彼女の血を吸ってしまった。
大好きなクラスメートの血を。そう好きな人ができてしまった。ヴァンパイアとは酷な生き物だ。より良い血を求める。感情には抗えない。
ある日、妹の返事がないので、おかしいと思い、部屋に入ったら妹が倒れていた。
「『紗綾』!しっかりしろ紗綾。おい。紗綾」
「あ、お兄ちゃん、ごめんね。心配かけて。私、実はヴァンパイアなの」
「そ、そんな。なんで。いったいなんで?」
「黙っててごめんなさい。信じてもらえないと思ったし。大好きなお兄ちゃんにこんな話したくなかったの」
「そんなこと、そんなこと・・・」
「でももう限界。人様に迷惑かけたくないの。誰かの血を吸って生き延びるなんて選択 私したくないの」
そう言って意識を失いかけた紗綾に俺は言った。
「だったら俺の血を吸え。俺の血で生き延びろ。お前がいない世界なんて俺は耐えられない」
抱き締めた紗綾に血を吸われた。
「クッ、ガ、アッ」
「お兄ちゃん。ありがとう。お兄ちゃんの血、とってもおいしい。フフフ。フフハッ。フフハハハハー」
そうして俺は、ヴァンパイアになった。紗綾も生きている。
「お兄ちゃん難しそうな顔して大丈夫?」
「ああ。お前はなにも心配しなくていいんだよ」
いい子いい子してあげた。
「お兄ちゃん。今日ビーフシチューだよ。いっぱい食べてね」
「ああ。愉しみにしてる」
ドアが、バタンとしまった。天使の笑顔が消えた。
今の俺は、妹の血を吸っても行き長らえられない。
それは逆に言えば、妹の血を吸っても極上とは思えない。
妹に対する感情はLoveではない。Likeなのだ。
何がビーフシチューだ。そんなもの気休めでしかない。
チキショー。紗綾はとても料理の上手な女の子だった。彼女の作る料理で食卓はいつも華やかに彩られていたのに。
いったいどうしてこんなことに。
全てが奪われてしまった。
「許せない。紗綾の血を吸ったヴァンパイア。俺たちの生活をメチャクチャにしやがって」
許せない。絶対に許せない!
棹音は、そう、強く念じる。




